永遠の約束T


    その日、りんはいつになく無口で真剣な表情をしていた。

     「殺生丸さま、お願いきいてくれるかなあ・・・」

        いつもと違うといえばりんの手で束ねられる花の色が

            なぜか白い花ばかりで品はあるが大人しいもので、りんが

    好む色とりどりで可愛らしいものとは違っていた。

    「こりゃ、りん。鼻歌も歌わんし、何を考え込んでおるんじゃ」

    りんと主の留守番をしている小妖怪の邪見は普段ならやかましいと

         怒鳴りつけるのを棚にあげ、心配そうに尋ねた。

    「え?邪見さま、何か言った?」うわのそらでりんは聞き返した。

    「・・・りん、熱でもでるんじゃないか。具合は悪くないか?」

    「ううん、大丈夫だよ、邪見さま。」 

りんになにかあっては主にただでは済まされないというより

    すっかり保護者となってしまった邪見は様子の違うりんを

    気使い落ち着かないようであった。

    そうこうしていると静かに主が降りたってきた。

         嬉しそうに駆け寄るりんのお出迎えがないことを

    さきほどから様子のおかしいことを嗅ぎ取っていたのか

       驚くようでなくめずらしくりんの元へ声をかけた。

    「りん」

    「あっ殺生丸さま。おかえりなさい!」

    「・・・どうした?」

    「え?なあに?なにかあったの?」

    心配して帰ってきたせいなのかわからないが、りんの答えに

    少し怒気を含んだ声で「なにを考えている」と問うた

    真剣な表情でふたりはしばし向かい合っていたが

  決心したようにりんは口を開いた

    「殺生丸さま、りん お願いがあるんです」

       とても真剣な面持ちで主を見上げ手に白い花束を捧げるように握り直した

    はらはらしながら見守っていた邪見は次のりんの言葉にひっくり返った

    「・・・殺生丸さま、りんのお嫁さんになって下さい!」

    さすがにほんの少し眼を見開き驚いた主だが、りんの表情からふざけているのでは

    無いと察して「どういうことだ?」とりんの真意を聞き出そうとした 

「りん、殺生丸さまの傍にずっといたいんです。」

   「もしりんを置いてどこかへ行こうと思ったらりんの命も持って行ってください」

       「りんの命は殺生丸さまのものだから」

      「死ぬまで一緒だって約束することなんでしょう?」

   「夫婦になるって。」

   今にも泣き出さんばかりの真剣な願いだった。

       衝撃から立ち直った邪見は主に向かって取り成すように

      「りんには後で言って聞かせます!ど、どうか・・・!」

   涼やかな草原の風が吹く午後のことだった

   答えを探しているのかりんの慕う銀の妖怪は黙ったまま真剣な少女を

   見つめていたがふいにその細い首に手をのばし締め付けようとした

  「!殺生丸さまっお待ち下さいっ!!」邪見は必死に叫んだ

   Uに続く