My precious



堪えきれずに閉じた目蓋の睫が震えた。
水滴に濡れた睫は影を色濃くしている。
舐め取ってみようかと思うが叶わなかった。
ゆっくりと目蓋が持ち上がったからだ。
表面の涙で潤んでいる瞳が零れ落ちそうに見える。
同時に吐き出された吐息が耳の傍をくすぐった。

「・・どうした?」
「・・なんで・・」
「ちょっと見てたんだよ。」
「何を?」
「オマエの顔。」
「なんで?!」
「不満そうだな。」

不機嫌さを指摘され、ほのかの頬が染まる。
二度目の問いかけはあからさま過ぎたからだ。
おかしくて少し口元を緩めたから余計悔しそうだ。
焦らすのが楽しい。困らせるのも、怒らせるのも。
素直過ぎる反応は生来のものとして、発見もある。
人のことを”負けず嫌い”とよく言っているが・・
こういうときのほのかはオレの上をいくかもしれない。
身体は正直に反応するのだが、素直に強請れないのだ。
初めの頃と違って辛さもほとんど感じなくなっている。
寧ろ感度が上がるにつれて別の辛さを覚えてしまったのだ。
思うままに素直な行動をするほのかにしては意外なほど、
快感を求めることに羞恥が抑えきれないらしい。
もどかしくてしてしまう仕草が自分をも追い詰める。
生理的に溢れる涙とは別に悔しさと恥ずかしさで込み上げる。
この泣き顔が好きだと言えば、きっと怒るんだろう。
しかしたまらないのはオレだって同じで。
許すもなにもない。どうせ二人して我を忘れるのはもうすぐだ。

「泣くなよ。」裏腹なことを言ってみる。泣いてる顔を見ながら。
「泣いてなんかないよ。」意地っ張りが更にオレを喜ばせる。
「そうか?」と目尻をひと舐めするとぶるると身体全体が跳ねた。

「泣いたら・・いやになる?」とおそるおそる問いかけてきた。
「いや?泣いたってやめねぇよ。」と言ってやる。
ほっとして微笑む顔も大好物だ。日頃の素直さが前面に出る。
素直な反応も、意地を張るとことも、追い詰められていく様も
どれをとっても不満を感じる余地はない。どれも手離せないものばかりで。
ほのかが感じる不安なら、オレの方が強く身に染みている。
呆れられやしないか、飽きてしまわないか、嫌いにならないかとか
そんなツマラナイことを考えてるんだろうと予想がつく。
だから結局何度も同じことを繰り返す結果になるんだ。
何もかもどうでもよくなるほど二人して夢中になるという都合の良い結末。
ホントウはそれこそが望みなんじゃないのか、オマエだって・・



くたくたになってオレに身を預けたままほのかが吐息を落とした。
もう眠くなってるらしく、定位置を求めて擦り寄ってくる。
いつもの収まりの良い場所へ導いてやるとそこに頭を乗せる。
ストンと簡単に眠りに落ちる。思わず笑ってしまうほど。
オレも幸せなだるさのなかで目を閉じる。弛んでいる頬もそのままに。
いいだろう?誰も、オマエさえ見てはいないんだから。
だらしなく微笑んでいても。少しも隠さず愛してると心で叫んでも。

「ん・・」
聞えていないはずなのにほのかが返事してやがる。
寝言だとわかっているのに嬉しくて啄ばむ唇。
眠りにつくのはオレの場合オマエほど簡単じゃない。
このときがあまりに大切でいつだってなかなか眠れない。
腕のなかのほのかを今なら好きなだけ見ていられるしな。
時折漏れる寝言も結構笑わせてくれたりする。
眠れないのはオマエのせいだぞ、と一方的な文句を心で唱えながら
つんと頬を突付いてみてもほのかはなんの反応も示さない。
やっぱり起きてるときの方がいいななんて思ってしまう。
・・・どうしようもないな、オレってヤツは。

けど少しだけ眠ろう。起きたらまたやかましいし。
寝てるときはこんなに静なのがおかしなくらいだ。
目を閉じる前にもう一度ほのかの寝顔をよく見る。
涙が乾いていることとに満足して、目蓋にもキスをして。

 おやすみ ほのか

”おやすみ なっつん”

夢の中でほのかがオレに返事した。夢でさえ愛しい。
どうしてくれるんだ、特別な時間ばかりが増えていく。
そして限りなく溢れてくる想いをまた確かめる。








裏で更新したのものすごく久しぶりですv
あまり訪問者がないからいいかとか思ってる訳ではなく、
書きたい時に都合が悪い場合が多いのです。
ほら、その・・・見られたら困る内容だし(^^;