「愛が足りない」
「ちょっと、夏さん。そこに座りなさい!」
「正座すんのか?ここに!?椅子があるのにか?」
「いいから座るの!ちょっと言っておきたいんだけど・・」
「なんなんだよ、改まって・・」
「こほん・・あのね、なっちはこのところお父さんと遊びすぎじゃない?」
「すっかり気に入られたみたいだな。」
「なっちの顔見れば「むすこよ!」って射撃場へ誘ったりするし・・」
「はぁ・・そうだな。」
「お母さんとまで仲いいでしょ!?どういうことなのさ!」
「・・そんなこと言われても・・オマエのこと話すくらいだぞ?」
「そうでなくてもお仕事が忙しくて中々会えないっていうのに!」
「すまん・・だからこうして時間作ってるだろ!?」
「・・ちっとも足りないよ。」
「旅行の話か?これ以上はキツイな・・」
「ちがーう!その話じゃないの!!」
「あ、違うのか。じゃあ日程はあれでいいんだな?」
「ほのかねぇ、・・欲求不満なんだけど。」
「・・日じゃないとすると・・目的地か?」
「その話じゃないです。旅行から離れてよ。」
「じゃあ何が不満だって?」
「・・愛が足りてません!」
「・・え・・?!」
いきなり何を言い出すのかと思った。オレも忙しくてつい・・
しかしほのかが急に「結婚止める!」とか言い出すのかと焦った。
オレは仕事が結構忙しくて、確かにこのところあまり構ってやってない。
それでもかなり無理をして顔だけは見たりと努力はしてる・・つもりだ。
「心当たりあるでしょお!?」
「心当たりって・・オレはやましいことはしてないぞ!」
「ほのかにもしてくれないじゃないか!」
「ぶっ・・!!?」
「むー・・」
「す、すまん。そ・・それはだな、えーと・・;」
「忙しいからって・・可愛い婚約者をほっぽっていいと思うの!?」
「まさか・・オマエ・・浮気とか・・してないよな?」
「してないっ!っていうか、できないよ!」
「脅かすなよ、心臓に悪りぃ・・」
「・・くすん・・ほのかのことすきなんでしょ?!なのに・・」
「んなこと・・けどオマエだって・・そういうこと嫌なんだろ?」
「ほのかが悪いの?!子供だから?ちっともそんな気起きないってこと!?」
「じゃなくて、いっつもイヤがるから・・オレもどうしていいか・・」
「ほのかイヤがってなんかないもん!」
「・・じゃあそんなに・・怖いのかよ?」
「・・怖くなんかない・・もん・・」
「びくつかれるとオレも・・怖くて手が出せないんだよ。」
「うぅ・・だってだって・・」
「そのことを怒ってんのか・・困ったな;」
「なんで困るのさ!いいって言ってるのに。」
「そ、そうなんだが・・オレも無理強いしたくねぇし。」
「なっちはそういうこと”キライ”なのかなって思ってた。」
「・・嫌いという・・わけでは・・;」
「だけどこの頃不安なの。触りもしなくなったでしょ、最近・・」
「それは単純に仕事で・・」
「ほのかは足りない。キスだって・・おやすみとかお別れにばっかり!」
「あー・・うー・・そ、そんでどうしろって・・?」
「遠慮してるんならやめてって言いたかったの。」
「そうか・・わかった。」
「ほんとのほんとは・・なっちは・・したくないんじゃないの?」
「そ・・うかな?そうとも言えるかもしれん・・」
「!?・・・ひっ・・ひっく・・」
「あっそのっ!誤解するなよ!?オマエのこと嫌いになったとかじゃないぞ!?」
「うっうっ・・けど・・したくない・・って!」
「なっ泣くな!言い方がまずかった。き、嫌われたく・・ないって・・いうか・・」
「・・なんで嫌うなんて思うのさぁ!?ほのかそこまで子供じゃないよ!」
「うん・・あんまり長いこと大事にしてたから・・もったいないってのもある。」
「もったい・・?」
「結婚しちまったら後の方が長いだろ?だから・・できるだけ延ばしたかった。」
「・・・すぐにほのかに飽きちゃいそうってこと?それはイヤだけど・・」
「まさか!オマエでもそんな暗いこと考えるのか!?」
「・・そんなようなこと言われたことある・・から。」
「誰だよ、ソイツ!!ぶっ殺してやる!」
「っ!?いいよ、そんなに親しい人じゃないし、誰だか忘れたよ。」
「ホントか!?庇ったりするなよ!そんな奴っ・・」
「ホントだよ。なっちはそんなことないって思ったもん。」
「当然だ。にしても誰がオマエのこと悪く言っても腹立つな!むかつく・・!」
「・・・ほのかは・・そんなに大事にするほど価値あるかな・・?」
「どうしたんだ!?・・そんなに自信なくすほど・・傷つけたのか?オレが・・」
「ウウン、そうじゃないよ。なっちは悪くない。だいすき。だから・・・」
「ほの・・」
「こんなに幸せなのにごめんね?足りないなんて言って・・」
浮かんでいた涙を拭ってほのかが笑顔を作ってみせた。
罪悪感でオレは・・体が引き裂かれそうになった。
「悪い・・悪かった・・ほのか・・」
「いいよ・・もう・・ちょっと苦しい・・よ、なっち・・」
抱きしめる腕にどうしても力が入って弱った・・苦しがらせたくないってのに。
どんなに泣いても止めるななんて、それ以上言わなくていいのに・・バカなヤツ・・
あんまりバカだから涙が出た。声が掠れるくらい名を呼んだ。オマエの名を。
やっぱり泣かせちまった。だけど・・そうしていいのはオレだけなんだから。
「・・まだ足りないか?」
「・・ウウン・・」
「オレは足りないけどな。」
「え・・えぇ〜!?」
「後悔すんなよ!?」
「・・ウン・・わかった・・」
「全然足りない。一生かかったって。」
「それなら・・あげる。一生かけて。」
数年経って、ほのかがオレに言ったことがある。
「ねぇねぇ、なっちぃ!ほのかちゃんに飽きた!?」
「は!?オマエ、まさかオレに飽きたって言うのか?」
「ウウン、でも愛が足りませーん!補給してくださーい!」
「オレも足りないぞ、よろしく頼む。」
「ふふっ・・よーし、ならどんどんもってけーっ!」
「負けず嫌いめ!いっくらでも欲しがってろ、ばぁか!」
「負けないもーん!意地悪言うとあげないよっ!?」
「泣いたってわめいたって、奪ってやる!」
「きゃあー!?たすけてーっ!こわーい!」
「ウソ泣きすんのやめろっ!コイツっ!」
不思議だな、本当に飽きたりしない。いくらでも欲しい。
オマエもそうだと言ってくれる。いつまで経っても可愛い。
こんなバカでいいのかと思う、オレもオマエも二人とも。
今日も足りないと言ってくれ。欲しいと言ってオレも抱き寄せるから。
・・・おいおい・・ってなものを書いてしまった・・感がひしひしと!
ちょっと砂糖の砂漠に沈んできます・・ああああっ恥ずかしいーっ!!