Turn Over!? 


「ホラ、脱がないとダメだよ!」
「ヤメろ!自分でするからっ!」
「だってほのかのせいだもん。」
「いいから、手を離せって!!」

ほのかは器用にオレのシャツのボタンを外してしまい、
焦ったオレは阻止するにはどこをどうすればいいか迷う。
とにかく触ることに関しては躊躇もするし、難儀もするのだ。
力加減がわからずに、以前かなり痛がらせたこともある。
おまけに暑いといってろくに服を着ないヤツだからまた厄介だ。
むき出しの肩や腕、脚はいつものことで今日は背中まで全開ときている。
どこに触れてもマズイ気がする。そして警報が身体を駆け巡るのだ。

「すぐに洗わないとシミになっちゃうよね!?」
「いいから、こんなもの洗濯籠に放り込んでおけ。」
「よくないよ!早いうちに処理しないといけないんだよ!?」
「ああ、わかった。すぐに行ってくるからオマエは待ってろ。」
「ジュース零したのほのかだもん。させてよ、それくらい。」
「ええと・・じゃあオマエはテーブル片付けとけ。なっ!?」
「・・・なんで?ほのかできるよ、これくらい。」
「できるとかできないとかじゃなくて・・脱がすな。」
「!?なーんだ、恥ずかしいの!?ほのかだいじょぶだよ?」
「何が大丈夫だよ・・・」
「っていうか、いつも見ると思うんだけどさ・・」
「なっなんのことだ!?」
「なんでこんなんなるの?お兄ちゃんよりスゴイかも・・」
「コラッ!人の腹とか触るなっ!!」
「ごめん。だって初めて見たときは病気かと!」
「なんでだよ?!もう見るな、あっち行け!しっしっ!」
「ヒドイ。訓練とかしてるのを何度も見てるじゃないか。」

オレがシャツを引っ張り寄せて肌蹴られた前を隠すとほのかは

「なっつんって女の子みたいだねえ!?恥ずかしがりやさんで。」

追い討ちのような台詞にオレは盛大に肩を落として項垂れた。

なんとかほのかを振り切って、風呂場へ向かった。
べたべたするシャツを洗濯籠に放り込むと、ほのかがひょいと顔を出した。

「うわっ!なんでついてくんだよ!?」
「あ、シャワー浴びるの?そうしなよ、その間にシャツ洗っとくからさ。」
「もう好きにしろ。・・・覗くなよ?!」
「ぷぷ・・ホントは女の子じゃないの?なっつんてば。」
「うっせえ!」
「のぞかないから安心してどうぞ〜!」

タオルと着替えを目の前に差し出されて、仕方なく受け取った。
長い付き合いのせいか、ほのかはウチをオレ以上に知ってる気がする。
気がつくと知らないものが増えてたりするので油断がならない。
洗面道具類は言うまでもなく、鏡の前には花なんか生けてあったりする。
ウチのこんな場所にまで出入りしているのはコイツだけだからコイツが犯人だ。
本人も来るとき思いついたら持ってくるだけだと悪気どころか何の遠慮もない。
しかもちょっと快適になったかもと思ったりすることもあるのでむかむかする。
何故こんな女房気取りを許してるんだと時折やめろと言うが効果は皆無だ。
オレが溜息交じりにシャワーを浴びて居間に戻ると飲み物が待っていた。

「今度は零さないからね。どうぞ!」
「・・・・どうも。」
「へへ・・ほのかも入りたかったな。」
「阿呆。風呂じゃないぞ、シャワーだけだ。」
「またお風呂入ろうよ。この頃どうしてダメなの?」
「普通一緒に入らんだろう・・いい加減にしろよ。」
「つまんないの。じゃあ結婚したら一緒に入ろ?!」
「ぶっ・・」
「あれま、今度はなっつんが零した!?」
「・・・・」
「なんでかな、今日はなっつんてば水難の日?」
「寄るな。そんなに零しちゃいない。」
「さっきのとあわせて洗えばいいよ。ハイ脱いで?」
「脱いで?じゃねえっ!!」

今度はほのかの肩と腰を捉えて、阻止した・・はずだった。
しかし一旦触れた肌に感電でもしたように、オレは手を浮かせてしまった。
ほのかがその触れた瞬間にびくりとしたからだ。ほんの少し頬が赤らんだ。

「なっつん、そこはほのかくすぐったいの・・」
「!?・・・そ、そうか・・スマン。」
「びっくりさせちゃった?ごめんね?」

少し照れ笑いするほのかの笑顔を間近で見て、オレの動揺は大きくなった。
ぼうっと笑顔に釘付けになっている間に、またもやオレは脱がされていた。

「脱がすなと・・言っただろう!」
「えっ!?何怒ってんの!?」

オレの声に驚いて、ほのかは触れていた手を反射的に引っ込めた。
そのことにほっとしたにも関わらず、オレは・・・がっかりもしていた。

「お、オマエだって脱がされたら嫌だろ!?」
「・・なっつんに脱がされたことないけど?」
「なんでオレがオマエを脱がしたり・・」
「したい?」
「んなわけないだろ!?」
「そんなに否定されてもちょっと・・」
「なんだと!?」
「ちょっとがっかりというか。へへ・・」
「・・脱がせて欲しいってのかよ?」
「えっ今!?一緒にお風呂入ってくれるの?」
「ちっ・・違う。ってかオマエなぁ・・はあ〜・・・」

オレは掴んでいた細い腕を離すと、ずきずきと痛む頭と顔をその手で覆った。
このオレとほのかの不毛でズレまくった会話を終わらせたい、切実に。

「もうアホなことばかり言うな。シャワーはもういい。」
「そおなの?なんだあ!」

反省どころかちっともわかってない様子のほのかを少しだけ睨み付けた。

「・・・あのさぁ、さっきのってちっともほのかなんて見たくないってこと?」
「は?」
「いやその・・ほのかもなっつんが見たいってわけじゃないけどもさ・・」
「・・・見たいと言えばオマエ脱ぐか?オレは脱がないぞ。」
「おおっ・・それはそうか。」
「なんなんだよ、一体・・」
「そだね。ほのかもなんかよくわかんないからもういいや!」

ぷしゅっと気の抜ける音が聞こえるようだった。オレの中のどこかで。
しかしこれでもうむずかゆい会話は終わりだと思ったら・・大間違いだった。

「はぁ、女心って複雑だよ。」
「・・なんだそれは・・?」
「見られたいような違うような・・ややこしい感じなの。」
「・・・・はい?」
「やっぱりお嫁になってからかな?お風呂は。」
「オマエ・・さっきから・・気になってるんだが。」
「なぁに?」
「嫁とか・・なんかそれも当然のごとくにだな・・」
「お嫁に来るもの。」
「何勝手に決めてるんだよ。」
「あれっ!?決まってるんだよ?前にも言ったじゃないか。」
「オレは承知した覚えない・・」
「忘れっぽいなぁ!!ダメじゃないか、覚えててよ!」
「ダメって・・」
「今度は忘れないで?!なっつん。」
「・・・・・」

ほのかは再びほんのりと頬を色染めながら、にこりと笑顔を見せた。
さて、困ったことに咄嗟に返事ができなかった。否定することも。
信じきったような目を向けるほのかを前にオレは頭から冷たいシャワーを浴びた。
・・かのような気分だった。否定したらきっと怒ったり泣いたりするだろう。
けれど肯定してしまったら、オレはもう逃げる術がない。そして一番困ったことに
”ほのかを一生面倒見る”という怖ろしい選択肢にオレは・・・喜んでいるのだ。

”それってあれだろ、もう触れるのにも遠慮しなくていいってことだよな!?”
”いやいやいきなりは・・しかしあれだな、いいかな少しくらいは・・”
とかなんとか、言い訳のしようもないことばかりがオレの脳裏を駆け巡る。

「・・・もう一度風呂入って来ようかな・・?」
「えっ?!いいな、ほのかも入りたいな。脱がしてくれる?!なーんちゃって!」

ほのかは冗談っぽくそんなことを言った。とんでもないことを言い出すヤツだ。
ここで一気に狼になるかどうかという瀬戸際に立ったオレにそれはないだろう!?
冷たいシャワーで正気を取り戻すか、それとも二人でシャワーを浴びるか、
それはあまりに重い判断過ぎて、決断がなかなか下せない。

「どうしたの?やっぱり脱がして欲しいの?」

正しいかどうかは別にして、答えは2つのみ。

”欲しい””欲しくない”

運命を握っている当の本人は穏やかに微笑んでいるだけ。

「・・オマエは・・どうしたい?」

「ん?ほのかはねぇ・・・」






待った無しで逃げ場無し!







ブラックななっつんとホワイトななっつんはリバーシブルなんです。
・・・結果ですか?それはまぁご自由にご想像くださいませ〜v(笑)