「いつもふたりで」


 
 「いいんちょうって可愛いよね、下着も。」
 「なっ・いきなりなに言い出すのよっ!?」

 「だってフワフワでふりふりだったりお花みたいだなって思って。」
 「そ・そそそうかしら?ふ、普通。普通よ、うん。多分。」
 「可愛くってすぐ取っちゃうのがもったいないなって時もあるんだよね〜!」
 「!!?ちょ・そんな爽やかな笑顔で・・あっなにめくって!こらあっ!!」
 「ホラ、今日のも可愛い!ねえ、この紐引っ張っていいんだよね?」
 「だっ・ダメダメ!だめだったら、さんがく!いやああああっ!?」
 「なんでダメなの?俺たちふーふでしょ?」
 「夫婦でもなんでも恥ずかしいんだからしょうがないでしょっ!?」
 「ふふっそうだね!恥ずかしがるいいんちょうも大好きだよっ!」


 〜今日も生きてるって感じする〜!とか言われて押し倒される奥さんの姿は定石〜



 
 「あれ〜・・いいんちょう〜!俺の下着どこー!出てないよ。」
 「きゃああっ!ちょっと!裸でこっちこないでって言ってるでしょ!?」
 「だって・・なかったんだもん。ちょうだい。俺のぱんつ。」
 「今持ってくとこだったの!早過ぎるのよ、お風呂上がるのがっ!って!?」
 「は〜さっぱりした!いいんちょうも一緒に入ればいいのに。」
 「さんがくーっ!ちゃんと拭かないから床がびしょびしょじゃないのーっ!」
 「え〜?・あ、ほんとだね。ごめーん!」


 〜自由人な夫は家の中を裸でウロウロなんて普通。慣れない奥さんの悲鳴も通常〜
 



 「・・・・いいかげん機嫌直しなさいよ。」
 「・・・・・・・(ジトッ)」
 「しょうがないわね・・ほら、いらっしゃい。」
 「うんっ!いいんちょう、オネガイしまーす!」
 「ったく・・爪くらい自分で切ればいいのに。」
 「やだ。おくさんがする方がキレイになるもん。」
 「このあと昨日しなかった耳掃除もすればいいのね?」」
 「もちろん!膝枕でね。それからその後で一緒にアイス食べよ!」
 「気のせいかしら・・夫というより子供みたいなんだけど・・?」
 「子供ができたって俺が一番だからね!じゃないとダメだよ!?」
 「はいはい・・(いつまでたっても子供みたい;)」


 〜何年経とうが子供がいようが新婚当時と同じように甘えてくる夫。真波家の常識〜



 「ねえ、手を繋ごうよ。」
 「え、嫌よ。・・人がいるじゃない。」
 「誰も気にしないって。大丈夫だよ。」
 「わ・私が気にするのよ!」
 「せっかくのデートなんだからさあ〜!」
 「で・デートって単なる買物じゃない。」
 「二人一緒ならどこだってデートだよ。」
 「そ・・・そう・・かしら、ね。」
 「いいんちょうだって昔といっこも変わらないじゃない。真っ赤だよ?」
 「ううるさいわね。赤くなんかないわよ、夕日のせいじゃないかしら。」
 「素直じゃないとこも変わってないよ。」
 「それ以上言ったら手を振り解くわよ。」
 「ぜーったい離さないもんね。べー!っ」
 「あんたこそ子供の頃のままじゃない。」


 〜いちゃいちゃの自覚がないのでどこでだっていちゃいちゃエンドレスな真波夫妻〜





 
 「泣かないで・・俺はここにいるよ?ね、夢だから。」
 「うん・・このまま抱いてて・・ぎゅってしてて・・」
 「俺もね、委員長においてかれる夢、見たことあるよ。」
 「!・・そう・なの?」
 「何度も。委員長に追いつけなくて悔しくて泣いたこともある。」
 「私ばっかりじゃなかったの・・」
 「そうだよ。それにさ、今が幸せだからコワイ夢見るんだって。」
 「・・ふぅん・・」
 「って誰かが言ってた。だからだよ、俺はもう見なくなったけど。」
 「それだとあなたは幸せじゃないみたいじゃない。」
 「こうやって委員長を抱いて眠るようになったら見なくなった。」
 「そう・・じゃあこれからもこうして眠ってくれる?」 
 「もちろん!一緒に眠って夢でも会おうね。」
 「私のこと邪魔じゃないならいいわよ、おやすみなさい。さんがく・・ありがとう。」
 「邪魔なんて思ったことないのに・・あ、おやすみの前に忘れてるよ。」
 「あ・・///(チュ・・)すき・よ。」
 「俺も!大好き。(ちゅうう)」
 「っ・・いたいわよ!もうっ!」
 「へへ・・おやすみ・・じゃ夢の中でね。」
 「言っておいて来なかったら怒るかもよ。」
 「わあ〜夢の中でも怒られるのかあ〜!でも遅刻はカンベンしてね?」 
 「それもいつもどおりってことね。わかったわよ。」
「ほんとのこというと俺、委員長に怒られるのって好きっぽい。」
 「もしかして昔から?」
 「へへ〜・・(^^)」
 「・・・(^^)」
 「いひゃい!」
 「つねられるのもすきなんじゃないかと思って。」
 「さすがは俺の奥さんだね!?」


 〜結婚したら妻を抱いてないと眠れなくなって遠征先では代わりの枕など必須アイテムが不可避の夫〜




 「俺と父さんとどっちが大事なの!?」
 「言ってて情けなくない?父の日だったんだからいいじゃないの。」
 「だって俺まだされたことないもん。」
 「困った人ねえ!わかったわよ、あなたにも同じことすればいいの!?」
 「うん、してして。」
 「はあ・・プレゼントは間に合わないから明日にしてね?」
 「それはなくてもいいよ。はいっ横になったよ。おねがいしまーす。」
 「・・・お義父さまにしたのは肩叩きよ?どうして横になるの・・?」
 「俺はダンナさまだから全身オネガイします。」
 「ええ〜・・それは試合後とかにはしてあげてるじゃない!」
 「そうだけど、そうじゃなくてさ、父さんみたく優し〜く。」
 「本格的じゃなくていいってこと?」
 「そうそう、”お疲れ様ですv”ってちゃんと声掛けてね。」
 「・・・・なんか・・おかしい気がするけどまあいいわ。」
 
 「ふんわあ・・・シアワセだった!次委員長の番だから横になって。」
 「え、私はいいわよ。父の日からどんどん遠ざかってないかしら?」
 「いいからいいから。俺がキモチよーくしたげる!」
 「う、うん・・なんだかちょっとイヤな予感がするけど気のせいよね?」
 「気のせいだよ。俺を信じて!」


 〜父の日などは単なるダシ。セクハラへ発展してフルコースなんてこともよくある話〜





 「俺、委員長には言ってなかったんだ。ごめんなさい・・」
 「隠してるつもりだったなんて驚きだわ。」
 「えっ・・まさか委員長、知ってたの!?」
 「もちろんよ。何年一緒にいると思ってるのかしら。」
 「それじゃあこれ・・やっぱり残すなってことだよね。」
 「一度食べてみて?工夫してみたから。」
 「・・・うう・・わかった。(ぱく)・・・・あれ?お・おいしい!」
 「良かったわね。好き嫌いが減って。」
 「うん、これなら大丈夫。委員長ってスゴイ!天才だねっ!?」
 「別にそれほどのことじゃないわよ。」
 「そっか、俺が好き嫌いしてたら将来困るもんね?」
 「お義母さまに言われてちょっと私も思い直したのよ。」
 「でもさ、委員長は母さんより料理上手だし、子供はきっと好き嫌いないよ。」
 「わ・わからないわよ・・そんなよ。それにお義母さまだって上手じゃない。」 
 「俺は小さい頃から委員長のおにぎりの方が好きだったよ?」
 「・・・ほんとう?」
 「うん。母さんも知ってる。”それじゃあ将来お嫁さんになってもらう?”って」
 「言われてさ、いつも”そうする”って返事してた。ちっちゃい頃だけど。」
 「そうだったの・・」
 「夢が叶って良かった。」
 「・・・・私もよ。」
 

 〜おにぎり好きは幼馴染との思い出のスパイスもあって好きになったと夫は認識している〜




 「・・・・・・・・」

 「委員長、感動してる?」 

 「ええ・・・綺麗だわ・・山の上から見る朝日ってこんなにも美しいのね。」

 「でしょう!?俺いつか一緒に見るんだって思ってた。だからうれしいよ!」

 「ありがとう、さんがく。ここに連れてきてくれて。」

 「俺は駆け上がって山頂に届いたら生きてて良かったっていつも思うんだ。」

 「勝ち負けが目的じゃなかったのね。私も生きているって気持ち、わかったわ。」

 「約束してくれる?また二人で登るって。」

 「約束する。私もね、ほんとうはずっとあなたと同じ景色が見たかったの。」
 

  自然と手を繋いで並んでもう一度空を見る。吸い込まれるような光と澄んだ大気。
  山頂で二人は初めて約束をした。これからも共に生きること。日が昇り日が沈むのは
  当たり前じゃない。生きていることを歓べるのは一人じゃないということだから。