時の轍 



 
擦りきれそうな身体は傷と痣に塗れ
襤褸を纏い声すらも失していた
その憐れさと痛々しさを
時を経るほどに思い出される
想い募れば募るほど鮮明に
痕となりて私に刻まれる
いまおまえの癒えた傷跡のうえに
その痕は音なく浮かび上がる

この痕はあの時のおまえの痛み
この苦しみはあの時が始まり
私の無事を祈ったおまえ
私の言葉に笑ったおまえ
邪険にされてもついて来たおまえ
見えない道をひたすらどこまでも

おまえの辿る見えない道のうえに
時が残す轍のように
私に刻まれたこの苦しみは
時の流れにかき消されることなく
いつまでも続くのだろう
尽きぬほど苛むのだろう
甘く苛むだろう 



酷く傷ついても感じる命の力強さと痛み
赤く染まった目と漂う殺気
その気高さと圧倒的な存在感
時を経るほどに思い出される
想い募れば募るほど鮮明に
切なさとなって私を浸してゆく
いま穏やかに私を包む眼差しと腕に
あのときの鮮烈な出会いを懐かしむ

この腕はあの時の温もりのまま
この幸せはあの時が始まり
私の傷を気遣ったあなた
私を胸に蘇らせたあなた
私の願いのまま旅の共として
道すがらひたすら護ってくれた

あなたの辿る見えない道のあとに
時が残す轍のように
私を覚えていてください
時の流れにかき消されることなく
あげられる私のあなたへの想いを
尽きない想いの全てを
共にどこまでも