美しい朝



殺生丸さまは朝があまりお得意でないの。
遅くまで起きてるからじゃないかなって思う。
りんはどちらかというと朝は得意だよ。
寝起きも悪くないし、朝がとても好き。
そのかわり夜はすぐに眠たくなっちゃうんだけどね。

殺生丸さまを朝起こし行くのがとても楽しいの。
眠そうなお顔や、ぼーっとしたお顔が見られるし。
小さな子供みたいだなって思うんだよ、内緒だけど。
以前は邪見さまの役目だったんだけど、
手が離せないからおまえ行ってくれと頼まれて、
それ以来ずっとりんのお役目にしてもらったんだ。
毎朝どきどきしながらお部屋のドアを叩くの。
いつも返事はないけど、鍵なんてかかってない。
そーっと入ると殺生丸さまの匂いがする。
窓へ行ってブラインドを上げる。
眩しそうに目を眇める殺生丸さま。
ちょっと困るのはね、パジャマ着てないとき。
バスローブが傍の椅子にかかったままだと要注意なの。
お風呂からお部屋に戻ってすぐベッドに入っちゃった証拠だから。
今朝は大丈夫だね・・・よかったー。
だってね、どうしたって見えちゃうでしょう?
ベッドから出るまでに急いでお部屋から出ないと大変だもの。
なんでって・・・恥ずかしいんだもの。
小っちゃなときは一緒にお風呂入ってたのになぁ・・・
そんなことより起こさなきゃ!
でも少しだけ寝顔を見てから。それも楽しみの一つだから。
大抵は枕にお顔を押し付けてるから覗き込むようにベッドに屈んで
「殺生丸さま、朝ですよ・・・」
「・・・・」
絶対に一度で起きないから少しゆすってもう一度。
「せっ・・っ!!」
手を掴まれて驚いてしまう。
「殺生丸さま起きてたの?」
「今起きた」
「朝ですよ。あの、手、離して?」
「今朝はいつもより遅くでいい。」
「え、そうだったの?ごめんなさい、知らなかった。」
「いい、おまえも寝ろ。」
「え!?だめ、だめよ、殺生丸さまっ・ひゃあっ!!」
ベッドに引っ張られちゃってあせっちゃった。でも・・・
「・・・寝てるし。(寝惚けてるんだ)」
「殺生丸さま、起きて!りん、いたずらしちゃうよ?」
殺生丸さまは起きそうにない。
「もー、困ったさんですね。よーし!」
殺生丸さまの枕で半分沈んだおでこにかかった髪をかきあげる。
賢そうな額が見えたらそこへちゅっといたずらしてみる。
「あれ?!今朝は起きない。昨日は起きたのに・・」
「殺生丸さまぁ、起きてー!」
「足らん」
「え、何が?」
「いたずら」
「むー、じゃあどうしよう・・?」
考えてると殺生丸さまが突然起き上がった。
びっくりしたけど手を掴まれたままで動けなかった。
頬に殺生丸さまが触れたせいで余計に驚いたんだけど。
「考えておけ。」
「う、うん。明日ね?」
「着替える。」
「わ、出ますから待って!」
もう脱いでるし〜!あわわ・・
「じゃ、後でね!殺生丸さま。」
「ああ」
大急ぎでお部屋を出る。ふう〜、慌てちゃった。
思うんだけど、殺生丸さまってりんをからかってるよね。
悔しいから明日こそ殺生丸さまをびっくり返ししたいな。
負けないぞと気合を入れる。
やっぱり朝が好き。元気が出るから。
勢いよくドアが開いてもたれていたからよろけてしまった。
「何をしている。」
「殺生丸さま、着替え早い!」
「赤いな。」
つんとりんの頬を突付いてさっさと行ってしまう。
押さえた頬が熱い。だってそれは・・・
さっき殺生丸さまが触れたからだよ、唇で。
いつものように颯爽と歩く殺生丸さまの背中。
「遅い、なにしとるんじゃっ!」って邪見さまが怒ってるね、きっと。
殺生丸さまの背中について行く。
明日もびっくりさせられたいな。
だってこんなに朝は眩しい。
雨でも晴れでも曇りでも。
殺生丸さまと呼んで、触れて、触れられて。
毎朝がこんなに美しいのはきっと
殺生丸さまと一緒に居られるからだよ。






いきなりの現代版。ひっさしぶりで変な感じ・・
一応「銀の羽」シリーズなんですが、単体でもいけますよね。