鬼の床入り
〜裏ばーじょん〜その四



りんがはっきりと怖さではない反応を見せ始めていました。
思考が追いつかず分けがわからなくなっているとも言えました。
りんの声も途惑う様も、細身であるのに意外なほど柔らかな肌も
何も分からぬうちにも誘うような艶まで見せ始めると
殺生丸も冷静ではいられなくなってきていました。
”こう何もかもが愛しいとは・・・”
滲む涙も先ほどの怖れからではなく初めての感覚に翻弄されて
喘ぎと同じく自ずと漏れてしまうものでした。
汗で張り付く額の髪の一本すら、男を煽ってしまいました。
幼さに呆れるほどでありながらりんは己の手でゆっくりと女になりつつあるのです。
抑えはとうに効かなくなっていましたがまだ迷いもありました。
りんを愛しいと想うあまりこのままであって欲しいと、
その一方ですぐにでも想いの丈を込めて一つになり、果てたいとも。
そしてそのときはもう猶予もなく迫ってきているのでした。
ひくつくりんのそこはもう既に濡れそぼっていてひくついていました。
指の刺激に痛がりはしたものの舌のそれには必死に耐えるほど感じていたことを
その浮き上がる細腰を抑えながら確かめてもいました。
「もう・・・」とうとう抑えきれなくなり、殺生丸はりんの足を幾分広げると
腰を抑えて己の身体を推し進めようとしました。
本能からか逃げようと腰を引くりんでしたが捉えられたままどうすることもできず、
「あっあっ・・や・・ああ・・・あ・」りんの声には切迫感が籠もりました。
殺生丸の頭を押し、手当たり次第に掴んだ殺生丸の髪のひと房を握り締めました。
「い・いた・・・い・・ひっ!・・あ・やああああああっ・・」
いやいやと首を振り、その未知の痛みに抵抗すると余計な力が入って更に痛みました。
「くっ」「り・ん・・」「力を抜け!」締め付けられる殺生丸が必死に訴えますが
頷いて従おうとするのになかなかそうできず、りんはえっえっと泣き出してしまいました。
涙を吸い、口付けて慰めてもりんは力を緩められません。
殺生丸はりんの握り締めていた手を取って己の手の指と絡ませるように握ってやりました。
「りん、唇を噛むな。」「噛むなら・・・」
噛み締めていた口をもう一度吸って離し、引き寄せて己の肩を咥えさせました。
手を握ってやったことでりんは徐々に力を抜き始めたので殺生丸もほっとしました。
「いい子だ・・・」りんの頭を支えて撫でてやり、りんが泣くのを止めたと確かめると
殺生丸はりんを抱いて動き始めました。
いっぱいだったものが抜かれ、再び貫かれるその衝撃の波にりんの身体は揺れて
握られた指に力を込め、咥えた肩を噛み締めて耐えようとしました。
時の感覚を忘れて揺さぶられたりんがいつの間にか放した口からと
殺生丸の口から、共に熱く荒い息が溢れていきました。
熱い時間の経ったあと、りんは意識を手放してしまいました。
けれどきつく抱きしめられた感触を身体は覚えたまま深い眠りにともに溶けていきました。


”あったかい・・・””・・ここ、どこかなあ・・”
”神様のとこへ戻ったのかな? りん、殺生丸さまのとこへいかなきゃ”
”殺生丸さま、どこ?””りん、殺生丸さまのとこがいいもの”
”お嫁さんになってずっと一緒に居るの!子供もたくさん産むんだよ”
”殺生丸さまーあ!””どこー?”
りんははっと目を覚まし、愛しいひとを探すように目を見開きました。
「何だ。」すぐ目の前にそのひとを見つけてりんはほっとしました。
「殺生丸さま!」「・・・いてよかった」その懐へ擦り寄り呟きました。
「夢でも見たのか。」
「うん、りん離れたくない。」甘えるようなりんを腕に収めて
「離しはしない。」と可愛い妻に答えてやりました。
「うん。」
嬉しそうなりんに優しい眼を向けるとりんはふと思い出したように
「殺生丸さま、お腹空いた。」
「・・・」「・・・そうだな。」間の抜けた返事でしたがりんは真面目に
「ご飯こしらえなきゃ。」と勢い込んで起き上がろうとしました。
ところが腰から鈍い痛みを感じてよろめき、手をついてしまいました。
「大丈夫か?」夫が慌てて支えました。「大丈夫!」と微笑むとふと気がついて
裸の胸を「わっ」と驚いて隠そうとしました。
すると急に顔を顰めて、「・・・殺生丸さま・・」と呟きました。
「どうした?」悲壮なりんの表情に不安げに問い掛けてみると
「りん、病気かな?」と心細そうに言うので殺生丸はますます心配になりました。
「りんね、赤いの、あちこち。」
りんは胸を隠してお腹の辺りを「ほら!」と示しました。
それは殺生丸が残した痕だったのですがりんはそうと知らずに不安そうでした。
「それは・・・心配いらぬ。」ほっとしながらそう言う殺生丸に
「殺生丸さまにも移ったりしない?」と安心できなさそうです。
”そのうち消える”と言いかけてやめ、「それは証だ。」と言いました。
「?何の。」そう言った後であっと小さく声を上げて真っ赤になりました。
「もしかして・・・あのときの?」と恥ずかしそうに小声で尋ねるりんに
「いい子だったからな。」殺生丸は笑いを堪えているようにも見えました。
その言い方や様子にりんはむっとして「子供じゃないもん!」と膨れました。
「ああ、そうだな。」
肯定されたらされたでりんは恥ずかしい気がして困りました。
「・・・これ、ご褒美みたいなものなの?」
「ああ、消えたらまたつけてやる。」そう言う殺生丸は堪えきれずに笑っていました。
「・・・うん。でもなんで笑うの?」憮然としてりんは言いました。
りんを抱き寄せ「お前が変らぬので安心した。」と囁く夫に
「変なの、殺生丸さますごく嬉しそう。」りんはくすぐったそうに答え
温かい口付けとともに二人の想いは重なり一つに交わっていくのでした。





        お終い