「恩返し」弐



ぴたりと素肌が合わされて、りんは驚きました。
ですがその広い胸はりんを優しく包むようで、
”肌でって、こういう意味だったのかなあ・・・”と思いました。
「殺生丸さま、あったかいね!?」りんは言いました。
しかし何も返事は返らず、また不安になってきました。
それに黙っていると心臓の音がやけに大きく感じられました。
”なんだか熱い・・・”りんはぼうっとするような頭と
変にどきどきとする心臓と熱があるように火照る顔を持て余しました。
それに押し付けられた胸の先端が擦れて痛いのです。
柔らかく膨らみかけたりんの乳房とその蕾のような先端は
押さえらたせいで疼くようで、こらえきれずりんは口を開きました。
「あの、殺生丸さま?」
「何だ」
「りんね、あの、胸の先が痛いの・・・」
何も言わず少し離れてくれて、りんはほっとしました。
「?!」
りんはその痛かったところを舐められてひやっとした感触に衝撃を受けました。
「あの、大丈夫だよ、怪我したんじゃないし・・・」
けれど殺生丸の大きな手が胸のふくらみを包んだのにまた驚き、
「殺生丸さま?」りんは眉を寄せて、困惑の表情を浮かべました。
「痛っ!」
二本の指に挟まれた先端を摘まれて痛みに顔をしかめ、
再び咥えられ、舌で転がすようにされるとずきりとしました。
「あっ・・」小さな声が漏れて、りんは思わず顔を顰めました。
そして這わされていた手がりんの下腹部へと下りていくのに気付くと
びくりと身体が勝手に震えました。
りんの足の付け根の境目には柔らかな谷間があることは事実。
しかしそのことをりん自身は意識したことはありませんでした。
このとき初めて、そこを触れる男の指を認め、さあっと身が凍るように感じました。
「!!! せ、殺生・丸・さま、それ、いやだ・・よう・・」
「恩返しするのだろう。」
「お、恩返し?・・・こんなとこ触って・・どうするの?」
りんは殺生丸がりんを黙って見つめるのをどこか上の空で受けながら、
”殺生丸さまの眼が金色に光ってる・・・なんでだろう”とぼんやり思いました。
「せっ殺生丸さま、あのね、あっのっ・・殺生丸さまがしたいこと、なの?」
「・・・そうだ。怖いか。」
「う、ううん。でも、なんか・・・どきどきする・・・」
「おまえは恩返しと言ったが・・・」「恩なぞ感じる必要はない。」
「わたしがおまえのためにしたことなど何もないのだから。」
「?じゃあ・・・」
「おまえの思い違いをわたしが利用したまでだ。」
「でも・・・りんが嬉しいことたくさんしてくれたよ?!」
殺生丸は手を止めてりんを見つめました。
「りんが恩返ししたいと思ったのはいつも幸せだからなの。」
「幸せ、だと?」
「うん。りんを護ってくれるし、あったかくしてくれるし、それに・・・」
「一緒に旅してくれてるでしょう?!りんね、今何もかもが幸せだよ。」
「・・・わたしがこれからすることを知ればそんな考えは消える。」
「消えないよ。」
「おまえを傷つけ、泣かせてもか。」
「りんが泣くの嫌なら、泣かないよ。」
「肌だけでなく何もかもわたしによこせと言ってもか。」
「りんにあげられるものなら全部あげるよ。」
りんは強く真剣に訴えかけました。
幼心は敏感に相手の不安を感じとっているのでしょうか。
怯えているのは男の方と言わんばかりに胸元にあった頭を包み込み、
「あったかい?殺生丸さま。」りんは囁くように言いました。
「りんのこと心配してるの?大丈夫だよ、嫌いになったりしないから。」
気がつくとりんは殺生丸に抱きしめられていました。
とても辛そうに、ひどく愛しそうに。
「泣かないで、殺生丸さま?」
殺生丸は泣いてなどいませんでしたがりんはそう思って言いました。
「あのね、殺生丸さま・・・大好き・・・」
しばらくの間、沈黙がありました。
りんが心配そうに顔の見えない相手の方へと視線を送ると
「・・・もう、よい・・・・」と掠れた小さな声が聞こえました。
「何がもういいの?」
「もう恩返しなら充分だ。」
「え?でもこれから何か・・・」
「今はもうよい。」
りんの髪を優しく撫でながら、殺生丸は呟きました。




                         続く