奥様は17歳 (その四)



「まったく、仕事や嫁はどうした?暇なのか」
えらそうだが艶のある声でそう切り出す。
「いらぬ世話だ。おまえこそ、早くから何の用だ?りんなら私が先約だぞ」
父が返す。

りんは二人に挟まれてどうしようかとおろおろしながら左右を見比べた。
殺生丸は頭を抱えている。”ヒトの話をきかん奴らだ”と思っているらしい。
殺生丸はこの二人が苦手だった。実の息子で外見は父によく似ているといわれる。
だが父は豪胆で人懐こく、どちらかというと母と性格は似ているかもしれない。
父は日本国内では武道家として有名だが若い頃からやり手の男で
いくつも会社を持ち海外では貿易商としても有名だ。実際外国暮らしの方が長い。
母とは殺生丸が5歳のとき離婚している。幼馴染だった二人はどちらかというと
父の片思いで無理を言って結婚して子供が出来たら別れるという約束だったらしい。
母はアパレル関係で名を馳せる男顔負けの仕事振りで父ほどではないが会社も持っている。
美しい外見に似合わず男っぽい性格で家事や子育てもほっぽりだしていた。
殺生丸は母親らしいことはされなかったがこの母が嫌いではなかった。
だから離婚は許すにしても父が若い女とさっさと再婚したことをあまり歓迎しなかった。
別れたとはいえ、二人は仲がそれほど悪いとは思えなかったからだ。
とはいえ、父はとっくに再婚して子供もいる。腹違いの弟は15になる。母は独身のままだった。

「あの、お父さま、お母さま。コーヒーでもどうですか?」
「りんはもう学校へ行かないといけないんですけど、ごゆっくりしていってください。」

にっこりとりんに提案されて、父と母はくるりとりんに向き直り、
「じゃあ、送って行こう!」とふたり同時に答えた。
「なんでおまえはそうりんに構うんだ!息子は放っておいたくせに」父が文句を言った。
「りんが可愛いからだ!娘が欲しかったんだ私は」と言い返す。
「息子は可愛くないのか、薄情者が!」なにやら痴話げんかのようになってきた。
「嫁や子供が泣くぞ、帰れ馬鹿親父!」母は負けていない。
「いいかげんにしてくれ!」殺生丸が珍しく大声で叫んだ。
「りんが困っているだろう、送っていくのは私だ。帰ってくれ」
「なんだ、りんを独り占めしようとして。けちくさい。」ぼそっと言った父に息子が切れた。
「・・・聞こえなかったのか?親父・・・」低い声に物凄い殺気が立ち込める。
「殺生丸さま、落ちついて!」りんが怒る夫の腕を掴んで揺さぶった。
「仕方ない。ではりん、放課後にな!」懲りない台詞を吐いて父は帰っていった。
「放課後、メールするからな〜!」母も息子のオーラに負けたらしい。
後に残った心配そうな若妻は「殺生丸さま?お父さま達帰っちゃったよ・・・」

申し訳なさそうにそう言うりんにやっと落ち着いた声に戻って
「おまえは気にするな。さあ、行くぞ」と背中を押した。
「放課後も気にせずさっさと帰れ」そう言われてりんは少し困った顔をして頷いた。
しかし気を取り直し「行って来ますのキスは?」と夫に尋ねる。
「そうだった」りんに向き直り結婚してから毎日の習慣のひとつを忘れずに実行した。
いつもなら軽く触れるだけの挨拶なのに今朝は濃厚だったのでりんは驚く。
父母のせいで独占欲でも刺激されたのかどうかはさだかでないがりんはあせった。
「ん、殺生丸さま、熱い」りんが赤い顔で甘えた声を出すので夫はついその気になる。
「なんだ、足りないのか」とりんを抱き寄せ、身体を密着させる。
「んん、ダメだよ、遅刻しちゃう・・・」言いながらりんは這わされた手の行方に全身を熱くする。
いつのまにかテーブルに持たれかけ滑り込んだ手で太股を刷り上げりんの足を高く持ち上げると
りんは「あっ殺生丸さま、だめ、ダメよう!」止めようとするが逆に甘ったるい声が出てしまう。
「止めているつもりか」殺生丸もそこまでするつもりはなかったがりんの痴態に火がついた。
「ああっ、だめえっ!」スカートを捲り上げられテーブルに寝かされてりんは抵抗するが
下着を下ろされパニック状態だ。恥ずかしさで顔を覆ってしまう。
「はあっ、いやっ、ああ、あ」弄られ押し付けられたモノを感じてりんは思わず覆っていた手を離し
殺生丸の首に手を回し縋りついた。「あ・ああ・・だ・め・・え・・やめ・・」
りんは涙声で抵抗の声を上げたつもりが更に次へと進む合図になってしまった。
着衣のまま、それも制服で朝からこんな場所でりんは羞恥でおかしくなりそうだった。
だがいつのまにか繋がって打ち込まれる衝撃に気が遠くなるのを感じた。
乱れた制服を整え荒い息がおさまるまで、ずいぶん時間が経った気がした。


「ひどい、制服が皺になっちゃった」りんは恨みがましく夫を睨んだ。
「あそこの方がひどい有様だが」夫が無表情でいやらしいことを言うので妻は怒った。
「誰がしたのおおっ!」真っ赤になって抗議する妻に「ほら、急げ。ぎりぎりだ」とおでこをつつく。
「きゃー、もうこんな時間!?」りんは慌てて鞄を探し、「車で送って!」と夫に頼んだ。
「ああ。行くぞ」二人は急いで玄関へと走る。車に乗り込むと
「殺生丸さま」りんがまだぷくっと膨れて夫を睨むのをおもしろそうに眺め
「歓んでたが?」とからかうと真っ赤になってまるでトマトだ。
「嫌い!もう知らない」りんの精一杯の抗議だった。
夫は「すまん」と言ってこつんとりんの頭に自分の頭をくっつけて謝った。
妻はべーと舌を出したあととても小さな声で「ウソ、大好き」と囁いた。
「知っている」満足気な夫の顔に幼い妻は”すぐに許さなきゃよかった”とちょっとだけ後悔した。





続く