奥様は17歳 (その一)



 りんは女子高校三年生。現在17歳であるが、新婚である。
小柄だが均整のとれた身体、長めの黒髪は少々くせっけだ。
黒い大きな瞳、屈託のない笑顔、多少天然だが素直で優しい娘である。
まだ結婚したことは身内以外には秘密であった。お披露目は卒業後の予定だ。
だんな様は大学講師。年齢28歳。名は天之殺生丸。
大柄で逞しい身体、整った容姿、無口で無愛想で人を近づけない自尊心の高さ。
武道を幼いころから有名な父にしこまれ、彼自身の才能もあって相当の強さを持つ。
しかし父のあとは継がず、外科医の免許を取得している。
開業はせず、現在は研究のため講師として大学で教鞭を取っている。
欧州へ転勤の予定ができ、その予定が長くなりそうだったので
りんとの結婚を早めたのである。二人が知り合ったのは
りんがまだ小学3年生の年だ。りんはずっと彼を慕ってはいたが当時
大学生である殺生丸には当然恋愛対象ではなかった。
普段は武術の心得のある彼には例外的な醜態をりんだけが知っている。
とある経緯でほぼ行き倒れの状態の彼を偶然見つけ、介抱したのが
なれ初めといえる。もちろん付き合うにいたるには長い道のりがあった。
とはいえ花も嵐も踏み越えてめでたく結ばれたのである。
彼はりんのほかは目に入らぬほど夢中であったし、りんもまた幼い頃から
大好きだった人と結婚できて雲の上にいるような毎日だった。
そんな二人の新婚生活はいかにという話だ。(長いって!)



「ね、殺生丸さま。今日のお勉強少し短くしてくれない?」
「明日その分長くしていいから。明日当番で早く学校へ行かなきゃだめなの。」
「どれだけだ」 
「30分くらい・・・かな」
「わかった。始めるぞ」
りんは海外生活に備えて夫に語学を教わっていた。
夫は4カ国語がぺラぺラなのだ。りんはどちらかというと勉強は不得意だった。
「うえーん、むつかしいよう!」
「泣き言いうな、次!」
結構スパルタのようで新婚さんムードは漂ってこない。
やっと終るとりんは机に突っ伏した。「うにゃ〜・・・」
「殺生丸さまの鬼」つぶやくと上目使いに夫を見上げた。
「そんな口をきいていいのか」
りんはぎくりとした。「ごめんなさい、ウソよ、ウソ」
笑顔を作って否定するりん。しかし遅かったようで、
あごをつかまれあっという間に口をふさがれた。
身体を移動させりんの口をふさいだまま腕をつかんで立ちあがらせ
ひょいっと抱き上げる。
「・・・はあっ。殺生丸さまあ、ごめんなさいって言ってるのにっ」
「どうするかな」
嬉しそうににっと笑う。
(こ〜わ〜い〜!)
りんはこの先自分に起こる事を想像して青くなるのだった。





二へ続く