口封じ 



何を話してたっけ?びっくりして忘れちゃった。
りん、そんなに煩かった?殺生丸さま。


初めてお口を塞がれたのっていつだったっけ?
忘れてしまうほど昔、まだりんが邪見さまより少しだけ背が高い頃。
驚いて黙ったのは覚えてる。シーンと静かになったのを。
それからときどきおしゃべりしてる途中に塞がれた。
何回もあったから不安になってしまって訊いたことがある。
「りん、そんなに煩い?ごめんなさい。」
殺生丸さまは怒ってないって言った。ほんの少し驚いたみたいな顔してた。
「殺生丸さまの唇は冷たくて気持ちいいね。」って言ったら「そうか。」って。
でもおしゃべりしてるときだったから、やっぱり煩かったのかなあと思って・・・
反省するんだけどついお話ししたくなってしまって困ったなあ。
邪見さまのいないときばっかりだったから、助けも求められないし。
でもお花を編んでるときとか、何かしてるときにもそうされるようになったの。
どうしてか教えてくれないから心配になってしまって・・・
涙くんでしまったら、殺生丸さまは怖い声で
「そんなに不快か。」と言ったのかな?
「ふかいって何?」って尋ねたら嫌なのかと言い直してくれた。
首を振って「ううん、嫌じゃないよ。」って答えた。
「でもりんが煩いから怒ってするのじゃないの?」
そう言ったらなんだか困ったようなお顔になった。
それからしばらくはされなくなっちゃったの。
怒られないのは嬉しいはずなのに寂しい気がして変だなあと思った。
でもいつだったかりんが怖い夢を見て殺生丸さまのところへ飛んで行って、
しがみついて泣いたらお顔中にお口を当てられて。りんのお口も塞がれた。
久しぶりだったからかな?なんとなく嬉しくてお顔が熱かった。
ぼうっとしてたらお口が開いて、殺生丸さまにお口のなかを舐められた。
殺生丸さまの舌って唇と反対に熱かった。りんの舌と混ざって変な感じ。
それに吸われるとりんの舌がもってかれそうになって怖かった。
息が苦しくなってきてぎゅっと殺生丸さまのお着物を掴んだ。
やっと放してくれたときははあはあいってた。
「・・・殺生丸さま、ごめんなさい。怒らないで。 」
「・・・」
「あの・・・」
「怒ってなどいない。」
「じゃあ、?・・・お腹空いたの?」
「・・・食われると思ったか。」って声が溜息混じりに聞こえた。
「えっとじゃあどうして?」よくわからなくて思わず訊き返した。
「おまえは私のものだ。」て言われた。
「はい。・・・?」返事はしたものの、よくわからなくて困ってしまった。
でも何も言わないのにまた口を塞がれた。怒ってないって思えてヨカッタけど。
殺生丸さまの舌はほんとに熱かった。思わず逃れようとしたけど無理だった。
「殺生丸さまあ、息できないよ・・・」
「・・・おまえの鼻は飾りか。」
ああ、そうか、とわかったけどやっぱり上手く息できなくて苦しかった。
離れたと思ったら首の方へ移って、銀の髪がくすぐったかった。
なんでかなあ、なんだかふわふわ、変な感じ。
「殺生丸さま、胸がどきどきいってる。なんか・・変・」
「・・・」
「あっ」
りんはすごく困った。殺生丸さまの熱い舌がりんのあちこちをたどリ始めたの。
どうしていいかわからないし、熱くてお口を塞がれてなくても思うように息できない。
泣きそうになったけど我慢してたの。でもとうとう「殺生丸さま・・・怖い。」って言ってしまった。
「怖れずとも良い。私のものだと印すだけだ。」
「?印し?!りんのどこに付けるの?」
「おまえの全てにだ。外にも内にも・・・」
りんがまだ訊きたそうな顔してたのか、またお口を塞がれた。
どうしてかりんは逆らえなくなって、目も閉じちゃった。
そうしたら・・・りんも殺生丸さまも気がついたら裸だった。
抱っこしてもらうのは嬉しかった。でもどきどきしてどうしようって思った。
その後は・・・びっくりしてて、あのときは良く覚えてないや。
恥かしいのと熱いのと、くすぐったいような初めての感じ。
途中でものすごく痛くなって我慢できなくて泣いちゃった。
涙も血も全部舐めてもらったの。殺生丸さまはとても優しかった。
それになんだか殺生丸さまが近くなったみたいで嬉しかったの。
だってね、終ってからもずっと優しかったの。りんのこと撫でてくれたり。
えへへ。好きってお返しにちゅって殺生丸さまの頬に触れたらね・・・
喜んでくれたみたい。りんは殺生丸さまのものになったの?って訊いてみた。
そうだって言ってくれたの。これからもずっと殺生丸さまだけのものなのだって。
「すごく嬉しい。ずっと、ずっとね?!」
嬉しくて笑って、あとは覚えてないの。りん寝ちゃったみたいで。

言うなって言われなかったんだけどなんとなくだけど、
そのことは邪見さまには話さなかった。
身体中の汗が引いて火照ってたのは収まったけど、だるくて力が入らなかった。
りんの内がじんとした感じは続いてた。痛くはなくなったけどまだ内に入ってるみたいな・・・
りんはそのあと熱を出して二人を心配させちゃったっけ。
でもすぐ元気になったよ。殺生丸さまも心配してくれてた。
だって寝ててふっと目を覚ますと覗き込んで冷たい手を熱い頬に当ててくれたの。
「大丈夫だよ、殺生丸さま。」と微笑むとほっとしてくれたと思う。
なんだかそれがとても嬉しくて、手を伸ばすと握ってくれた。
治ったら邪見さまもほっとして、「長患いにならんで良かった。」って言ってくれた。
大きくなった今も邪見さまと殺生丸さまはりんにとても優しい。
幸せだって思う。どんなにありがとうって言っても足りないくらいだよ。


りんね、怒ってるんでも煩かったのでもないって今は知ってるよ。
殺生丸さまったらね、待ちきれなかったんだよね。なんだかおかしい。
でも殺生丸さまだもの。りんはそれで良かった。嬉しいって思う。
相変わらず無口だけど、りんは色んなことわかるようになったの。
「ねえ、殺生丸さま。」
「何だ。」
「りんにしゃべっちゃだめっていうときもするよね?」
りんは殺生丸さまのお口を軽く塞いで言ってみた。
「口封じか。」
「そうでないときも好きだけど、ふいにされるのも好き。」
「・・・」
「あとりんが困ったことをきいたとき・・・殺生丸さま、りんが好き?」
わざと困ったこときいてしまうときもあるの。内緒だけど。
えへへ、今日も口封じされちゃった。