火月・Y 



女の眼は熱く燃え 男の心も熱く燃える
「おまえだけが欲しい」
「あなたしか要らない」
紅く染まる男の瞳 女の身体をも染め
縺れる様に重なる男と女
獣の姿に半ば変りつつ組み敷く女はまた
その美しく痛々しい身体を獣に委ね
苦痛以外の声を立て始める
”おいていかないで”
熱に浮かされ何度か呟く
”離さぬ””わたしのものだ”
声にならぬ声が女に届く
安堵と歓びの涙がつたう
喘ぎは烈しさを増し お互いを融かさんとす
熱く融け合う身体は ただお互いを欲し
繋ぎ 擦り 舐め 打ちつける
死ぬかも知れぬ 死んでもよいと
このままひとつになれるのなら
涙溢れても構わず女は縋った
二対の獣は飽かず求めあい
ゆらゆらと紅き月を更なる紅へと染めあげる
夜が朝へと移りゆくその瞬間まで
紅き月は獣らを映し続けた
安らかな朝はやがて訪れ
二人を包みこむだろう
だが今そのいのちの火燃えるさま
時に刻み 証となるよう
天から見守り照らし給え
彼らの祈りに似たのぞみとともに
いつまでも