火月・W 



女の悲鳴は獣を震わせ 飲み込むように口付ける
血の匂い強く香り 体液と混ざりあい恍惚を呼ぶ
繋がり身悶える 身体と身体 狂ったように求める
烈しい責めは果て無き想いの証 欲すれば喪うものを
やがてコトリと気を失せて 女は力なく崩れ落ち
獣は女を抱きしめ 哀しげに 苦しげに身体波立たせ吼えた



思い知らせたかったのだ この焦りを
気も狂わんばかりの この想いを
この私を弄ぶ罪を その身でもって償えと
だが私の中に残された おまえの儚きその身体
いまにも露と消えんとし さらなる焦燥を呼び起こす
私と血に塗れた無残な姿に 満足を覚えながら
呻き声と涙の残滓に 心乱れるばかり
思い知ったのは この私か
想えば想うほど おまえは儚く遠ざかり
繋ぎとめ 熱き想い全て注ぎ
この私を苦しめるおまえを ひと飲みにしてひとつになり
己ただひとりだけのものにしたかったのだと
その身を引き寄せ 頬を摺り寄せても
いまは私を見ない 閉じた瞳のこの哀しみ
願い乞うはただひとつ
私の身を何度焼いても構わぬからこの命を
果てしなく苦しんでも構わぬからこの女を
りん おまえだけが のぞみ



妖の獣は女を包み込んだまま 何処かへと消えた
残されたそこに浮かぶ月は火のごとき紅
流された血と想いの色は その闇を染め
辺りを静寂とともに照らした





続く