火月・V 



獣の爪と牙により 女は身体中から血を滲ませた
その匂いに恍惚となる犬の妖 嘗め回し押さえつけては血が滲む
じゃれつかれているかのような 食われようとしているような
女は途惑い 眼を開いたまま 爪と舌とを受け入れる
血まみれの儚きその身を震わせば 妖は愉悦の吐息を漏らす



女の乳首のその周り 歯型がくるりと弧を描く
その血も舐めきり その次は人の口にて強く吸う
花を散らしたその跡と 傷にまみれたその姿
そこまでされても女には怯えの影は見当たらず
ただみつめるのみ 切なげに
口と口とを重ねれば 舌は奥へと落ちていく
内も全てを舐め上げる
血も皮膚も口中も甘さで舌が蕩ける
女の漏らす吐息さえ 逃さず己に閉じ込める
苦しい息のその下で 女は弱弱しく名を紡ぐ



彼が刻んだその跡を指がたどったその先は高く掲げた足の元
濡れた深い割れ目には紅く染まった花の弁
啄ばみ舌で転がせば あえかな声がこだまする
貪欲に沈み蹂躙する舌 女は獣に爪を立て
声を震わせ身悶えた 



ぼうっとした頭でどうしてこうなったのかと思った
罰を受けているのか それとも身を焼くこの感覚は
考えはまとまらず 次々と襲う波に揉まれ喘いだ
痛い 苦しい 切ない そして・・・熱い、熱いの
たすけて、たすけて殺生丸さま・・・声にはならず
呼び続け 縋り続けた 身を弄ぶ妖怪を
やがて覚えた硬い肉の塊に 冷たい汗が背を伝う
コレなあに なんでソコへ当てるの まさかそんなの入らない・・・
眼を再び見開いて 女は全身で抗った
やっと怯えたか だが遅い 抗うことは許されぬ
女が己を畏れたことに満足し
妖は女を貫いた





続く