尋ね人   



「ね、殺生丸さま。あの神楽ってひと、綺麗だね」
「りんも大きくなったらあんな風に綺麗になれるかな」
「突然なにをいいだすんじゃ!こいつは」
「邪見さまに言ったんじゃないよ」
「しょうもないことを聞くな!無礼なやつめ」
「なんで無礼なの?殺生丸さまが女のひとを綺麗と思ったらいけないの?」
「そ、そういうことではなくてな、」「えーい、黙れ。」
気の毒にも次の瞬間、邪見は主に足蹴にされていました。
「殺生丸さま?」
「綺麗になってどうする」
「・・・りんはあんな風にはなれない?」
「なる必要はない」
「綺麗でなくていいの?」
うまく言えないのか殺生丸は憮然として
「なぜそう思う」
めずらしくしゃべる主に不思議そうに、でも嬉しそうに
「うん、わかった!ありがとう、殺生丸さま」りんは笑った
蹴られた場所をさすりながら邪見は尋ねました。
「いったいなにがわかったんじゃ?」
「なんとなく」
「なんじゃ、それは?!」
「だから、綺麗でもそうじゃなくてもりんじゃないとダメなの、か、な?」
「あれ?やっぱりよくわかんないけど、殺生丸様が綺麗と思ってくれないと意味ないんだよ」 
「相変わらずどあつかましい奴じゃ!おまえなんぞ大きゅうなっても変わりゃせんわ!」
「邪見さまの意地悪!わかんないじゃない。もしかしたら・・・さ」
「殺生丸さまが綺麗と思われる者なぞ、そうそうおるものか」
「じゃ、もしりんが綺麗と殺生丸さまが思うようになったら”参った”って言う?」
「おう、なれるもんならなってみい。何でもお前の言うことを聞いてやるわ!」
「ようし、約束だよ!ね、殺生丸さま、覚えててね」
「・・・」
二人のやりとりにあきれるように主はさっさと行ってしまいました。
ですが心のなかで”邪見の負けだな”とつぶやいていたかもしれません。
さて、将来のりんの姿は如何に。



「ねえ、ねえ、じゃ綺麗になれたら、殺生丸さまと邪見さまに”参った”だよー!」
「そのままじゃったら、”降参”するんじゃな!りん」
ぱたぱたと二人は主の後を追いかけながら、まだやりとりしています。
いつもいろんなことを尋ねるりんにもうすでに”降参”していることを
邪見も当の殺生丸も気づいているやら、いないやら
そよと秋らしい風の吹くある日のことでした