星空の下で



七夕の夜、りんは殺生丸に「お願い」してここへやって来た
一生懸命こしらえたふたりの浴衣に着替えて
「今晩は晴れてよく星が見えるって、殺生丸様!」
ちょっとはしゃいでしまうのは少し気恥ずかしいから
殺生丸は黙って傍らの浴衣姿も初々しいりんを見つめる
「ここから星見しよう、殺生丸様」
近所の丘は家から歩いて5分ほどのところ
りんに連れられて夕食後にぶらぶらとやって来た
りんが黙ってしまうと静寂が訪れる
落ちつかなくてりんがもじもじしていると
「今日は七夕か」と言って空を見あげる殺生丸
助かったとばかり、りんは微笑んでまた話し出す
「雨が降らなくって良かった!七夕って雨の方が多いんだって」
「七夕の織姫と彦星が一年に一回しか逢えないなんて寂しいね」
「ねえ、殺生丸さま、りんなら天の川を泳いで逢いに行っちゃうよ!」
「離れなければ良い」
「うん、傍にいる・・・離さないでくれるの・・?」
「・・・」
殺生丸が黙ったままりんを引き寄せたとき、
二人で見上げていた夜空に星が流れた
しばらく寄り添って星を眺めた
「殺生丸さま、お星様綺麗ね」
「おまえほどではない」
顔を紅くして恥じらいうつむくりん
「・・・もう、殺生丸さまったら」
「星を見ないのか」と言われて顔をあげると
殺生丸の顔がすぐ目の前に在って少し驚く
「お星様見えないよ」
「見えるから目を閉じてみろ」
そっとりんが目を閉じると唇が暖かくなった
抱きすくめられ深い口付け
殺生丸の言ったとうり、りんの瞼の裏には煌く星
りんも腕を背に回し口付けに酔う
”離さないで”心でつぶやくと伝わったかのように
りんを抱き寄せる腕に力がこもった
二人の願いは口に出すまでもなく
星はあきれるようにまたたくのみ
七夕の星空の下で