願いを叶えて



「ねぇ、ゼルガディスさん!」
「何だ、アメリア。」
「お元気でしたか?!」
「見ての通りだ。」
「私、変ってませんか?」
「・・そうだな、多少・・痩せたか?」
「いいえ、残念ながら。ゼルガディスさんこそ痩せてませんか?」
「俺は変りたくとも・・変らない。」
「あ・・ごめんなさい。そんなつもりじゃ・・」
「いや、いい。少し疲れているだけだ。」
「逢えて嬉しいです、ゼルガディスさん。」
「そう言ってもらえるならありがたい。」
「私ずっと星に願いを掛けてたんですよ。」
「何をだ?」
「ゼルガディスさんが私に逢いたくなりますようにって。」
「・・・無駄なことを。」
「願いは叶ったと思っちゃ・・いけませんか?」
「そんなことを願う必要などない。」
「・・少しでも逢いたいと思ってくださいましたか・・?」
「・・おまえの顔はよく・・思い出してた。」
「嬉しいです!私は毎日ゼルガディスさんのこと思い出してましたよ。」
「毎日?」
「はい。辛いとき、一緒に旅をしていたときのことを思い出すと元気になるんです。」
「・・そうか・・」
「えへへ・・だからいつも寝る前は星を眺めて願いを込めてたんです。」
「それは・・逢えないことがいつも辛かったということか?」
「はい・・逢いたかったんです、ゼルガディスさん。とてもとても・・」
「・・・アメリア・・」


長い旅をしてきた。この少女と過ごした旅はその中で今も記憶に鮮やかだ。
破天荒な他の二人に半ば引きずられるようであったとしても、確かに俺はそこに居た。
少女は眩しいほど真直ぐな想いに溢れ、瞳を燃やしていつも俺の傍らに居た。
目の離せない危うさを備えながら健気に、真摯な想いに耀き、揺ぎ無い信頼とともに。
少し大人びた表情を垣間見せるようになった少女は今、俺との再会の喜びに泣いている。
硬く冷たいこの岩のような身体と腕が、慰めたいと手を伸ばそうとしている。
きっと喜びこそすれ、嫌がったりしないと理解できるのにそれが出来ないでいる。
逢いたかったと素直に口にすることの出来る少女を心底羨ましいと感じながら。
俺は懐かしさと愛しさで胸を熱くしながら、預かりものを少女の目の前に差し出した。

「アメリア、これを・・」
「・・・私のアミュレット・・ずっと持っててくださったんですね。」
「しばらくの間、返しておく。」
「しばらくって?」
「傍に居る間はこれはおまえが付けていてくれ。」
「それはゼルガディスさんのです。」
「俺に早くここを立ち去れって?」
「まさか。あっ、じゃあそれをしている間は傍に居てくださるんですね!」
「ああ、どうやらまた縁が出来たようだな。」
「今更ですよ、私たちは縁なんかよりずっと硬い絆で結ばれてるんです!」
「そいつは少々厄介だな。」
「仕方ないんです、私たちは出逢うのも必然だったんですから。」
「運命だとかの決まりごとだと言うのか?」
「運命とか、縁とか、そんな薄っぺらいものじゃないんです。」
「そりゃまた大仰な話だな。」
「そうです。ゼルガディスさん、私たちの絆は硬くて強いんです、世界一!」
「世界一ねぇ・・」
「そうです。だから揺るぎませんよ、どんなことが起こったとしても。」
「強いな、おまえは。やはり変ってはいない。」
「ゼルガディスさん?」
「おまえが俺に出逢えて良かったと言ってくれるなら・・俺は救われる。」
「私そんなに思いあがってませんよ。ゼルガディスさんを救うとか・・・」
「救ってくれた。そして今も・・これからもきっと・・」
「ゼルガディスさん・・」
「逢いたかった・・一人でも独りではなかった。おまえがいつも傍に居た。」

少女の頬は薔薇色に染まり、大きな青い瞳は光りを受けた湖よりも煌いて俺を射抜いた。
手渡したお守りごと小さな手を握り締め、恭しく尊敬の意味も込めて手の甲に唇で触れた。
「願うならば、星ではなく・・これからは俺に願ってくれるか?」と呟くと、微笑んで頷いてくれた。






ゼルアメで初の小説書いてしまいました。ここはやはり「再会」がテーマですv
ゼルガディスはアメリアを事実上とは別の意味で「お姫様」と敬ってる気がします。
一歩引いたところで深く大切に思いながら護っている、そんなイメージですね。