これが恋なら 


目を閉じなくても見えてくる様々なビジョン。
次から次へと移り変わり、浮かんでは消える。
あなたは知らない。ずっと以前に出逢っていたこと。
誰も知らない。あなたが私に微笑んでくれたことを。
胸が大きな音を立て、その微笑にときめいた事実も。

出逢うより早くに恋をした。恋だなんて知らずに。 
あなたと愛し合うことが運命ならなんて素適な未来。
夢じゃない。予知は外れることもある。だけど
この痛みが事実だって教えてくれてる。これが恋なら

あなたも私に恋してくれるのですか?

誰にも訊けない私の中の問い。答えはあなただけが
いいえ、今はまだあなたも知らないに違いないけど。 
いつかパズルが完成する瞬間はやって来るのだろう。

あなたが私を知らないときから好きでした

そう告げる。どんな顔をするかしら?きっと驚く。
でも笑ったりしない。信じてくれるとわかってるの。
見えない瞳の奥から、真直ぐに私を見詰めてくれる。
何もかも見透かして。あなただけにならそれを許せる。 

この予知が叶う日までに、たくさんの愛を溜め込んで
幼いときから守ってくれたあなたに何もかも捧げたい。
傷を負って何度も死にそうになりながらもあなたは
ねぇ、ただ行き掛かりだけではなかったと言ってくれたら
どんなに幸せだろう。私は期待し過ぎている?だって

現実に出逢ったあなたは、恋を本当にしてくれた。
どんどん好きになって止められない。欲張りになってゆく。
あなたがいけないの。期待を裏切るどころか倍にした。
怖くて辛くてどうしようもないことからも救ってくれた。
お父さんお母さん、おばあちゃん、心配しないでね。
私のせいで・・・ごめんなさい。罪は抱いて行きます。
この人と二人で。地獄だろうと一緒に生きたいんです。

護さん 護さん あなたとずっと ずうっと・・・


「・・・・・か?」
『誓います』

ほら、声が重なった。あなたの声がちゃんとしたよ!?
何も要らない。その誓いさえあれば私は幸せになれるの。

「・・・・・・を」

ビジョンがあまりにもリアルでその場面では目を閉じてしまう。
恥ずかしくて。頬が熱くて体も火照って。それでも見えるの。
私たちの誓いの証。変ね?今はまるっきり子供扱いなのに・・

そんな顔見たことない。ほかの誰にも見せたくはない。
震えるような誓いの儀式の後、私は微笑んで涙が煌く。

「・・・・・・・」



「  、  るか。 遥!」
「わっ護さん!?なっ・なんですかっ!?」
「起きろ。飯が出来たぞ。」
「あ、私・・転寝して・・ごめんなさい。」
「何故謝る?・・いい出来だぞ。わかるか?」
「!?ええ、とっても良い匂い。護さんっ!」
「っと・・いちいち抱きつかんでいいって!」
「ダメですか?これくらいイイって言って?」
「・・・そのうちあの世から苦情が来るぞ。」
「お父さんも護さんなら許してくれますよ。」
「からかわれるから皆の前では自重しとけ。」
「はいっ!!」
「しかし・・慣れるもんでもねぇなぁ・・・」

照れる護さんに舌を出す。見えていないでしょうけれど。
お父さんの代わりなんて、そんなつもりはもちろん無い。
慣れないと言って困るあなたが見たいの。いけないコかな?
無邪気な振りしてあなたに意地悪する私。ごめんなさい。

「おかわりあるかな、護さん?」
「ああ。けど他の奴等も馬鹿みたいに食うから負けるなよ。」
「馬鹿は酷いよ。私も負けずにおかわりします。美味しいもの!」
「お前は腹いっぱい食えよ。痩せ過ぎは可愛くないぞ。」
「・・・護さん、もしかして・・グラマー好き?」
「は・・何言ってんだ?ガキは体型なぞ気にするなってことだ。」
「むぅ・・わかってないんだからぁ〜!」

私が拗ねて見せても護さんはちっとも理解してなくて変な顔。
だけどそんなあなたに安心もしてるの。私のこと待っていてね。
あなたのために大きくなって、綺麗に・・なりたいな。

でも将来のビジョンでの大人の私はあまりグラマーじゃないの。
気掛かりだわ。素適な女の人がたくさんいるんだもの。心配・・
どうかそんな私でもイイって言ってね?わがままを許すみたいに。
私はあなたにありったけを返す。幸い愛情はたっぷりなのよ。


先は長い。楽しいことは少ないかもしれない。
それでも諦めたりはしない。誓い合い、それを叶える。
あなたを病めるときも健やかなるときも共に在ると誓う。


  ”死がふたりを分かつまで”







誓いの言葉とかキスまで見えてるかどうかは不明ですが
そこんとこは見えてるといいな、との願望で書きましたv