「おまじない」


「殺生丸さま、ちょっといいですか?」
木陰で座っている殺生丸のところへりんがやってくる。
なんだと顔をりんに向けると額が温かくなった。
「えへへ・・・おまじないだよ」
「・・・なんだそれは・・・」
「内緒。おまじないだから」
少し上気した頬で微笑むりんに殺生丸はそれ以上追求せず
「ふん・・・」とまた元のように取澄ましてしまった。
りんは特にがっかりした風もなく横に腰掛けた。
触れた唇はまだほんのりと温かい気がしてりんはこそばゆい。
殺生丸の額の三日月のような紋様にそっと触れたのは
あることを願ってのおまじないなのだ。
”叶ったら教えてあげよう、今日でなくていい、いつか”
りんはそう心に置いてちらりと殺生丸を見上げてみた。
殺生丸はいつもと変らぬままなのを見ると安堵する。
”殺生丸さまのお月さまにお願いです”
”ゆうべ見たような綺麗なお月さまを”
”殺生丸さまと一緒に見られますように”
昨夜の晴れた夜空を思い起こしてりんは一人微笑んだ。
そんなりんをそっと窺いながら殺生丸は思った。
”・・・今宵は満月か・・・”

「?なあに、殺生丸さま」
「・・何もない」
「呼ばれたかなと思ったけど気のせいかあ・・」


冴え冴えと光る月をりんと殺生丸は今夜見るだろう。
りんは願いが叶ったとはしゃぎ、妖怪は微かに目を細め
冷えぬようりんを包んでやりながら空を仰ぎ見るのだ。
触れ合った箇所が温かいなとそんなことを思いながら。







他愛無いものが書きたかったのです。
雰囲気伝わるでしょうかね・・・