「やさしい手」 


彼は素直じゃないけど
とてもわかりやすい
わりとウソツキなくせに 
正直な行動をとったりする
意地っぱりは照れ隠し
隠しても無駄だと思うよ?

あとね、過保護で心配性
男の人ってみんなそうなのかな
大事にしてくれるの嬉しいけど
くすぐったくてじれったくて
なんでそんなに優しいのかなぁ
私はあんまり優しくしないのに
不公平かな?・・・だってね
私ってものすごく意地悪なの 
素直じゃないのはこっちかな


「なっつん、助けて〜!」
「なんだよ、どうしたんだ?」
「ドアに指はさんじゃった・・・」
「ハァ?!何やってんだよ。」
「でもってとげみたいの刺さって痛いじょ〜!!」
「どこのドアだよ?何でまた・・」
「トイレの出窓の枠。」
「・・・・何?」
「少し開いてた隙間から猫が見えてね、」
「・・・猫?!・・なわけないだろ?・・」
「見間違いかな?で、覗き込もうとしたら挟まれた。」
「見せてみろ。」
「うん。ここ!・・・取れないんだよ深く刺さって。」
「ちょっと待ってろ、救急箱持ってくるから。」
「うん。」

「ときどきなっつんてほのかのお医者さんだよねぇ!」
「おまえはそそっかしいからな・・・マッタク。」
なっつんが私の手をとる、とても自然に。
丁寧だけどすばやく処置はあっという間。
消毒までしてくれて絆創膏も貼ってくれたりして。
「ちょっと血が出たからしばらく貼っとけ。」
「はーい。ありがとう、なっつん。」
「ああ・・」
返事は溜息交じりで無愛想なんだけどちっとも嫌じゃない。
「なっつんの手って綺麗だよね?」
「は?!別に普通だろ?」
「大きくて厚みはあるけど、綺麗だよ?!」
「別にどうでもいい。」
「あんまり怪我とかしないよね?」
「普段気をつけてるからな。」
「ふーん、感心感心。」
「おまえの手はちっさ過ぎ。」
「むか。そんなことないよ!」
「ちょっと力入れたら折れそうでこわ・・」
「怖い?」
なっつんはバツの悪い顔をした。うっかりさんだね。
「なんでもねぇ!」
「ぷぷ・・大丈夫だよ。なっつんの手はやさしいから。」
「何言って・・!」
「えへへ、ほのかね、なっつんの手が好き。」
「うるせー!」
「あ、手だけじゃないけどね?」
「もうそんなことはいいってんだよ!」
「ねぇ、手をぎゅっとしてみて?」
「?痛いだろ、そんなことしたら。」
「さっきのと反対の手。ほら、握って!」
「なんでだよ、理由も無くできるかよ。」
「折れないから、安心させたげようと思って。」
「わかったから。手引っ込めろ・・」
意地を張るなっつんの手を無理やり捕まえて握る。
「こらっ!なんだよ、おまえは!?」
「握り返してみて?ほらほら」
少し顔を紅潮させて目を反らしながらそっと握られた手。
彼の心の中まで見えるようだと思う。
私はそんなとこが好きで、大好きで。
思わずうふふと笑っていた。
「・・・なんだよ・・・」
「折れないよ、絶対。なっつんの手だもん。」
「やろうと思えばできるぜ。簡単だ。」
「そんでも・・しないでしょ?」
「当たり前だろ。なんで物足りなそうなんだよ?」
私は彼の手を自分の頬へ持っていって摺り寄せる。
びっくりして緊張がダイレクトに伝わってくる。
「あー、なっつんの手が好きだなァ!」
「変な奴。おまえの手はやっぱ小さすぎだってんだ。」
「そう?!なんでさ?」
「思い切り握れねぇ・・・」
「・・・握っていいよ?」
「嫌だ。」
「だいじょぶだからさ。」
「ダメだ。」
「そんなに心配?」
「ホントは・・・折れるほど握りたい。」
「うん、だからどうぞ?」
「馬鹿だな、おまえも。」
「うん、馬鹿かもしんないね、二人とも。」
なっつんと二人してくすっと笑った。
そのあとゆっくりと私の身体は彼に囲まれる。
「もっと遠慮しないで強く抱きしめていいのに。」
「マジで壊しちまいそうなんだって・・」
「じゃあ代わりにほのかが思い切り抱きしめてあげる。」
「ああ、それは・・・いくらでも。」







死・・・死にそうに甘い!どうなってんですかこりゃ!
これでもまだ足りないなんて、貪欲ですね。私のことです。
なんかもうできあがってるっぽい二人ですが、実はまだまだだったり。
どうしてこんなに愛しいんだろうね、この二人。