「運命のひと」 


たとえば二人が仲良くなったことも、そもそも出逢ったことも
色んなことをゼンブひっくるめて簡単に言うと『運命』じゃない?
そう問いかけてみると実に鮮やかな笑顔で「んなわけねーだろ。」と否定。
その一方的な意見に対して単純に疑問を投げかけてみた。すると、

「じゃあ、いったいその『運命』とやらは誰が決めるんだ?」
「ん?・・・っと〜・・・・神さま・・とかかなぁ?」
「へー、そんでソイツの決めたことに全て従ってんのか?オレたち皆。」
「そこまでは言ってないよ、何もかも決められてたらツマンナイじゃん。」
「そうだろ。ゼンブ自分で選んできてるんだよ。誰かのせいにすんじゃねぇ。」
「なるほど。色んな出来事は自ら選択してきた結果に過ぎないってことかね?」
「そうだ。頭いいじゃねーか。」
「ふーん・・・じゃあさ、なっつんは好きでほのかと仲良くしてくれてんだね?!」
「っ!?・・・まっまぁその・・・仲良くってなんだよ、面倒みてやってるんだ。」
「そうかぁ!でもその方が嬉しいよ。そうするとさ、二人が逢えたのは?」
「何が聞きたい?」
「なっつんもほのかもお互いを知らない頃から”逢いたい”って思ったから逢えたの?」

なっつんはちょっと困って黙り込んでしまった。違うのだろうか?

「あのさ、なっつん。ほのかが言いたかったのは・・」
「師匠に逢えたのも・・ややこしい奴らと関わりになったのも・・・確かにオレが選んだ結果だ・・」
「なっつん・・?」
「偶然・・・ってのもな・・違うな。」

真面目なひとだよ、全く。なっつんが考え込んでしまったよ、反省。
そんなに深刻なこと尋ねたんじゃなかったのに。なんとかしないと・・・
少し憂いを含んだ顔は綺麗だけれど寂しい。そんな顔はあまり見たくない。
けど謝ったってダメだろう。それはこっちが気がすむかもしれないってだけ。
それより元気出して欲しい。どうしたらいいか悩んで、思いついたので言ってみた。

「なっつんっあいしてるよっ!!」

「はぁっ!?いきなり何言ってんだ!?」

伏せられていた長い睫がぱっと上がる。すごくどきっとした。キレイで・・
ほんのり赤い顔になって思いつきとはいえ、成功した!と感じて嬉しい。
考えるより感じる派のワタシにはなっつんの真面目さは足りないかもしれない、
けどワタシだってふざけて言ったのじゃないんだ、モチロン困らせたかったのでもない。

「なっつんとほのかが逢えたことが嬉しいから『運命』にありがとうって言いたかったのさ!」

なっつんが目を丸くしてる。けどちゃんと言っておかないとね。

「したいって思うことを自分で選んで、そうしていいんでしょ?!」
「・・・あぁ。誰かに言われてすんじゃねェ。なんでもな。」
「なっつんも遠慮しないでどんどんスキにするがいいのだ!」
「言われなくても遠慮なんかしねぇよ。」
「ウン!それでいいのだ!ヨシヨシ。」

胸を張ってそう言った。なっつんは呆れてる。だけど少しだけ笑ってる。
なっつんと出逢えたことがワタシは世界一らっきーだと思ってるんだよ。
だからもし神さまとかが決めたことなら感謝したかった。そういうことなのだ。

「オマエが『運命』なんて言い出すから似合わねぇなって思ったぜ。」
「そうかい?女の子はわりと好きなんだよ、そういうフレーズ。」
「確かにそうかもしらんが、オマエは『女の子』って感じしないからな。」
「え?ほのって男っぽい!?なっつんは男の方が好きなのかい?」
「なわけあるか。そんなこと言ってねぇよ!」
「どっちが好きでもいいよ、ただしほのかも好きでいてね?!」
「!?・・・んな・・・オマエなにをさっきから・・・;」

なっつんは『好き』とか言われるの苦手なんだよね。言うのはもっと苦手みたい。
でも時々言っておかないと。確認だよ、なっつんがうっかり忘れないように。

「なっつんもたまには言っていいよ?」
「何を言えって!?」
「ほのかのこと好きだとか大好きでたまんないとかさぁ!」
「誰がっ!?んなこと言うわけねぇだろ!」
「ふー・・・しょうがないなぁ、ほのかばっかり。」
「まったくごちゃごちゃとウルセェガキだ・・・好き勝手言ってろ・・・」
「そりゃあ言うとも。」
「・・・『運命』なんかオマエに比べたらカワイイもんだぜ。」
「ん?それって褒めてくれたの?」
「オマエの方が数倍厄介だって意味だよ!」
「あはは・・なっつんがそれでいいんならいいじゃん。ありがと。」
「どうしてそういう結論に持ち込むんだ!オレはオマエなんか好きじゃねえっ!!」
「うあ・・・素直じゃないな〜・・・いいよ、わかった。」
「いいのかよ!?どう言やへこむんだ、オマエってヤツは・・」
「へこませたいの?ふふん、甘いじょ。どっからでも掛かって来いなのだ。」
「・・・むかつく・・オマエみたいな妹持って、兼一も気の毒だな!」
「やれやれ。そんなの羨ましいとしか聞えないよ〜!?」
「なんだとうっ!!」

すっかり元気の出たなっつんにほっとした。がんばった甲斐があったじょ。
悔しそうにワタシの頭をかき回したって全然平気だもん。
ヘッドロックだって手加減しまくりだからちっとも痛くないしさ。
ついでだから甘えてあげるのだ。べったり張り付いて”スキスキ”攻撃だ。
恥ずかしがってまた顔を赤くしながら怒ったフリするんだよ、きっと。
本当に大好きだよ。なっつんはやっぱりほのかの『運命のひと』さ。
どんなに神様が意地悪したって負けないよ。ずっとずっと離さないんだから。
そんでなっつんが降参してくれたら万歳して・・・楽しいよ、きっといつまでも。

「コラっ離せっ!くすぐってェ!ウルセーんだよ、さっきからスキだとか・・」
「ふひひ・・・どんどん困るがいいのだ。大好きだよ!かぷう☆」
「うわっ噛むなっ!?阿呆っ!!ったく動物かオマエはー!?」
「野生が残ってるんだよ!ほのかは野獣なのだ。知らなかったの〜?」
「ぷっ!オマエが野獣って・・・・・・・くく・・!」

なっつんが笑いのツボに入ったらしくてお腹を抱えて身体を折り曲げた。
すかさず乗っかってやるのだ。追い討ちを掛けてくすぐっちゃえ!
ソファの上にひっくり返ったなっつんの上に乗っかっるといい気分だった。

「わーい!どうだい、なっつん参ったかー!」
「ちょっ、おいおりろ。人の上に乗っかるな!」
「そうだ!今日のオヤツはなっつんの上で食べる!」
「なにっ?!莫迦なこと言ってないで!早くおりろってば。」
「だってせっかく金太郎な気分だもん。なっつんって乗り心地イイね。」
「っ!?////////ォ・オマエ・・なんつう・・・こと・・でもってオレは熊かよ?」
「ん?なんで?!ほのか変なこと言った?」
「と、とにかくおりろ。オヤツ持って来てやるから。」
「ほのかもいくーっ!おやなっつん、なんで顔赤いの?」
「・・・・ウルセェ・・もう頼むから黙ってろ・・!」

はて?なっつんが大人しくなって真っ赤な顔を手で覆って隠している。
ナニか間違えたかな?・・・うーん・・・よくわかんないや。
台所までついて行ったけど、なっつんは黙ったまんま。怒ってはいないけど。

「ねぇねぇ今日のオヤツなあに?」
「・・一口ショコラの詰め合わせ。」
「わーいvこないだのだ!なっつん食べさせてね、あーんってして?!」
「するかっ!なんでそんなこと・・・」
「いいじゃん、してして!?お願い〜!」
「あーもーわかったっ!そんかわりオレの上でとか言うなよ!」
「あり、なんでわかったの?膝の上で食べさせてほしかったんだじょ。」
「ドンだけ甘える気だ!?オマエいくつだよっ!」
「そんなケチなこと言わないで・・ねぇ、あいしてるよ〜?」
「しまいに怒るぞっ!!」


「あのさ、なっつんはちょっと怒りっぽいよ。カルシウム足りてる?」
「足りてるっ!ホラ口開けろっ!」
「あい。あーん・・うーおいひぃv」

なっつんの膝の上は却下されたけど、オヤツは食べさせてもらえて満足。
どうして抱っことか乗っかるのはダメなの?と聞いてもなっつんは答えない。
怖い顔するから仕方なくそれ以上は聞かなかった。なんでだろうな・・

オヤツを食べた後、なっつんがそっと答を教えてくれた。
ナイショ話みたいに小さな声だった。聞き逃しそうなほど。

「・・・いいか、もう少し待ってろ・・そんでもって他の誰にも抱っことか強請るなよ?!」
「おぅ・・らじゃっ!・・なんだ、なっつんには甘えていいんだね?やっぱし。」
「憎たらしいヤツだな・・・約束だぞ?」
「わかった。大丈夫だよ、ほのかが甘えたいのはなっつんだけだから!」

なっつんはワタシの頬をぎゅうーって引っ張って「どうだか!」って言った。
信じてくれるまでもうちょっとかかりそうだけど。約束してくれたからいいや。
願いは叶いそうだよ!なっつんがなんでも叶えてくれるんだ。神様じゃなくってね。

「神さまに今までありがとうって言っておいたよ。」
「どういう意味だよ?世話になったってことか?」
「そう!もう『運命』とか考えてくれなくていいですって。」
「???」
「だーからー、これからはなっつんと二人でなんでも選ぶからって意味だってば。」

なっつんはまた顔を赤くした。「オマエ・・それ・・」

「あ、なんかこれって結婚式の誓いみたいだねっ!?」

ほのかが言うと、コツンとおでこがぶつかった。なっつんは笑ってた。とても嬉しそう。
だから幸せな気分で一杯になったの。だから「よろしくね?!」って言っておいたよ。







これは・・・・甘い方だったでしょうか?・・・
置き場所にどっちだろうかとかなり迷いました。ほのぼの路線にしてしてしまいましたが。