Try to kiss. 


なっつんが前みたいにほのかに触ってくれるようになった。
それはいいんだけど・・やっぱりどきどきは相変わらずで。
ほっぺにちゅっとかされてしまったりすると、かなり参っちゃう・・
恥ずかしさがモチロンなんだけど、なんだろうこの感じ!?
身体の奥の方からぞくぞくしちゃう、寒いわけじゃないんだよ?
真っ赤になる顔もかっこ悪い・・・こんなことくらいでさ?
実を言うとほのかは前に何度もなっつんの頬にキスしたことがある。
あんなことどうして出来たんだろう・・最近はされる一方で悔しいんだ。
私だって、やり返してやる!って意気込んでも・・できなくて・・
あー!?やだやだ、イヤになっちゃう!ドキドキ病なんとかならないかな。
なっつんはどうしてあんなに平気そうなんだろ?!不思議だ。
ものすごく恥ずかしいかもと思ったけど、とうとう訊いてみてしまった。

「ねぇねぇ、なっつんてさぁ・・ほのかに・・ちゅってするときどきどきしないの?」
「・・・しなくは・・ない・・」
「えー!?それってたいしたことないってこと!?なんかズルくない!?」
「ズルイってなんだよ!?」
「ズルイ気がするんだもん。」
「嫌ならしねぇけど・・そういうわけじゃなさそうだな?」
「ん・・嫌じゃない。ほのかが負けてるみたいなのがヤダ!」
「負けって・・どんな勝敗だよ、それ?」
「もっとどきどきしてよ!なっつんも。」
「んな!?・・ったく・・ハイハイオマエの勝ち。負けてねぇ!」
「そんなの言ってるだけじゃんか!くーやーしーい!!」
「あのなぁ・・どうしろってんだよ!?」
「どうしたらいいんだ・・・なっつんはほのかがどんなことしたらどきどきする?」
「・・・オマエな・・今、結構そんな状態になってるから、そんでカンベンしてくれ。」
「それって・・ちょっと違くない?」
「まぁ・・どっちかっていうとハラハラって気も・・」
「ちょっとは満足だけども・・」
「困ったヤツだな・・どうしたいってんだよ?」
「ほのか、”よっきゅうふまん”なのかな?」
「ぶっ!!??」
「ね、なっつん。ほっぺじゃないとこにしてみて?」
「オマエ・・こないだまで触るなとか可愛いこと言ってたのに・・そうくるか!?」
「今だってものすごくどきどきしてるけど、なんか物足りないんだもん。」
「はーーーっ・・・・知らねぇぞ・・?どこにして欲しいんだよ。」
「んじゃね・・どこにしよう?・・なっつんにお任せしたげる。どこでもいいよ?」
「どこでもねぇ・・ふーん・・じゃあお言葉に甘えて・・」
「およ?!」

なっつんは全然慌てたりしないで、私の両肩に手を置くと、顔を近づけた。
どっくん!と心臓がものすごい勢いで跳ね上がる。いや身体ごと跳ねたかもしれない。
思わず顔を引いて、「ちょ、ちょっと待って!」と圧し留める格好をした。
「・・なんだよ?・・しろって言ったのオマエだぞ?!」
「あっあのっ・・・またすごくどきどきしてきた・・ねぇ、なっつんは・・?」
「オレ?まぁ・・わりと。」
「ちっともそう見えないよ!?」
「じゃあ、聞いてみれば?」
「ふあっ!」

今度はなっつんの胸にぽすんと顔を押しつけられてしまった。焦るよ!!
自分のどきどきがやかましくてよくわからなかったけど、じっとしていると・・
なっつんの胸の鼓動が聞えた。早いのかどうなのかわからなかったけどもちょっと安心した。

「・・どうなんだよ、納得したのか?」
「う、ウン・・よくわかんないけど・・一緒・・っぽい。」
「なんだそれ・・」

なっつんが面白そうにふふっと笑って私を軽く抱き寄せる。今度はくらっと眩暈がした。
楽しそうに笑っているのが身体全体から伝わってきて、心までくすぐったかった。
そう感じるとなんだかまた安心して、身体の強張りがほぐれたような気がした。

”ヨカッタ・・一緒なんだ・・なっつんと”

そう思いながら眼を閉じると、片方の手が私の顎をひょいと持ち上げた。
びっくりして閉じていた眼を開けた。なっつんのアップ!!!!あわわ・・・・!
結局また眼をぎゅっと瞑ってしまったら、鼻の頭にちょんと感触があった。

「あ・・あれ?」
「当てが外れたか?」
「いやその・・;」

なっつんをそっと見上げると、おかしそうに笑いを堪えてるような顔だった。
からかわれたのかもしれなくて悔しいはずなのにどうでもよくなる・・笑顔にやられちゃった・・
頭の先から足の先まで一気に熱くなった。顔から火も出たかもしれない・・!?

「ちょっと離して・・なっつん・・」
「どうした?!もういいのか?」
「ウン・・なんかもうどうでもいいというか・・降参するよ、なっつん・・」
「へぇ、オレの勝ちってわけか?!いいのかよ?」
「悔しいけど、もおダメ・・勝てないかも・・」
「なんだ・・オレの方が物足りなくなったぜ?」
「えっ!?・・・どっ・どう・・しよう!?」
「困ったな・・・どうしてくれんだ?」

なっつんが卑怯にも上目遣いで私の眼をじっと見つめるなんて暴挙に出た!
たたった、試されてるのかな!?ナニコレ・・はっ!もしかしてこれって誘われてる!?
うううう・・・どきどきがまた復活だよ・・・やっぱり困ってるのは私じゃないかぁ・・!
こうなったら、”女は度胸だ”と決心してみる。握り締めた拳が震えてて情けないけど・・

「・・・なっつん・・いいよ。その・・しても・・」
「・・・マジで言ってんのか・・?!」

覚悟は決めたつもりでも、身体が震えてるみたいな気がした。考えないようにして眼をまた瞑る。
じいっと待っていた間は長かった気がするけど、実際はどうだったんだろうか?
私ってばもしかしてとんでもないことしたかな?とか、ううん、そんなことない!とかが浮かんだ。

 ”ふわ・・”と何かが触れた。唇に・・あっあれっ!?今の・・は!?

ぱっと眼を開けたらなっつんの顔だった。そんなの当たり前だけどまたどきんとした。

「あ・・あのさ、今・・」
「何だよ?」
「う・・んと、その・・”した”・・の?」
「ああ。」
「!?・・・そ、そっかぁ・・なんか・・全然思ってたのと違った!」
「どんなのを想像してたんだ?」
「えっその・・えっと・・・こんな空気みたいんじゃなくて・・」
「こんくらいか?」
「え?」

次に触れたときは眼は開けっ放しだったから、なっつんの唇が離れるところも全部見た。
でもそれどころじゃない。触れたときの感触が身体を駆け抜けて呆然とした後、叫んでいた。

「っ・・・わーーーーーーーーーーっ!?」
「っ!おっおい;・・」

「やっやわら・・うう・・うそっヤダッ!!どうしよ・・!」
「落ち着けよ!オマエってホント予想外というか・・驚かせる・・」
「だっだって!・・・どうしよう!?」
「どうしろって言われても・・・確かに柔らかかったな、思ってたより・・」
「ひゃあああああっ!!ヤメテ!そっそんなことほのか言った!?」
「言いかけてたんじゃないか?」
「ふえー・・・なっつんなっつん!」
「なんだ!?嫌だったか?!」
「そうじゃなくて・・・もう一回・・いい?よくわかんなかった・・」
「ナニ!?・・・くっ・・信じらんね・・ぷくく・・」
「あれ?!なっつん・・?」

焦って言ったことを思い返すと私はまた体温上昇したと思う。なっつんはまた・・笑ってるし;
ちょっと失礼じゃないの?と言いたくなるほどお腹を抱えて笑ってるから髪が顔を撫でてくすぐったい。
泣きそうになって情けない声でなっつんと呼ぶと、「す、スマン・・悪い!・・」と苦しい声。
だって初めてだったから緊張してたし、ほんの一瞬だったし・・普通アンコールしないものなの?
やっと治まったらしいなっつんが私の半泣きの顔を見て、もう一度謝った。

「謝らなくてもいいよ・・でもほのかちょびっと傷ついた・・」
「ホントにワリィ!・・もう一回やり直してもいいのか?」
「・・眼は開けてていいの?」
「怖ければ開けてもいいけど?」
「怖くなんかないよ。でもその・・難しいよ、いつ閉じるのかとか・・」
「んなこと・・それこそ何も考えなくていいって。」
「どうして?」
「決まりがあるわけじゃないだろ?」
「そっか。なっつんて賢ーい!」
「落第点にされたくねぇし・・」
「大丈夫だよ。なっつん上手だと思う。」
「どうやってそんなの判断するんだよ?さっきのなんかちょっと触れた程度だぞ!?」
「?・・んん?・・あの・・もっとその・・奥深いものなんデスカ・・?」

私はとっても真面目に訊いたのに、なっつんにまた笑われてしまった。・・ちょっとむかっ!
「オマエって・・ホント・・なぁ、何度でもやり直しさせてくれるか?」
「やり直し?ウン、いいよ?」
「そんでオマエが一番気に入ったキスを教えてくれ、後でいいから。」
「そんなに何度もするの!?・・なっつんてスゴイんだね・・?」
「オマエだよ、スゴイの。飽きる気がしねぇもん・・」
「えっ!?そんな簡単に飽きちゃったらヤダ!ツマンナイ!!」
「飽きさせたりしない・・から・ホラ・・」

なっつんはやっぱりスゴイ。眼を閉じるのをとても上手に教えてくれたの。
その後も何度も何度も・・その・・でもね、どれが一番とかってわかんなかった・・
だから「どれも全部・・」って言ったら、なっつんはまた見惚れるほどの笑顔を見せてくれました。








・・・いちゃあまですよ!?それはもう完全に楽しんで書きました!
この連載もクライマックス。あと一回くらいかと思ってたんですが、
このらぶらぶバカップルが楽しいので一個挟むかもしれません。^^
いずれにしても最終話が「Wish for love.」になります。どぞヨロシク☆