「ともだち〜Part2〜」 



学校の女の子たちはそのときものすごく騒いだ。
近くで出会ったなっちを初めて見たときだ。

「あれ誰!?誰なの?ほのかっ!ちょっと!?」
「ひゃああ〜!いない、いないよ!あれはレベル高い!」

あんまり大騒ぎするから不思議だった。

「ほのかのともだち。お兄ちゃんの・・」
「高校生の兄貴の友達!?うっわいいな〜!?」

名前だ、誕生日だなんだかんだと矢継ぎ早に質問された。
いっぺんにたくさん訊かれすぎていやになった私は

「なっちはほのかの!皆には教えない!」

なんて言ってしまった。それが誤解の元だったんだ・・・
皆はぶうぶう文句を言った。相当勘違いされてしまった。
付き合ってるんじゃなくて面倒みてもらってんでしょ!?とまで。
間違ってはいないけどそうじゃないんだと一所懸命説明しようとしたけれど
勝手に押し付けられた結論は、”ほのかの片思いでお兄ちゃんの親切な友人”
だった。納得がいかない。でもその後何を言っても取り合ってくれない。

「まぁね、ほのかに色気出すようじゃおかしいよ、高校生でしょ?」
「そうよね、見た目もこんなお子様だもん。そうだと問題ありだわ〜!?」
「可哀想だけど現実を見なさい。親切にされてるだけだよ、ほのか。」

とかなんとか慰められた。なんて子たちだい!正直な意見なのだろうけど。
なんとなくもやもやした気持ちを引きずったまま、学校帰りになっちに会った。
暇さえあれば押しかけているなっちの家で、いつも通りお茶を出してもらった。

「不景気面。珍しいな。」
「ごめんよ、眉間に皺寄ったかな?やんなるよ。」
「だったらやめればいいだろ。」
「そうだけどさぁ・・」
「んな顔見てたらこっちも不景気になる。やめろ。」
「むぅ・・わかったよ。けどなっちにも責任あるんだじょ!」
「オレ?なんの話だ。」
「学校の友達が皆ほのかとなっちのこと誤解してさ!?」
「・・・なんて言ってんだ。」
「・・・ほのかの片思いで親切なお兄ちゃんの友人・・」
「へぇ、的確じゃねぇか。何を怒ってんだ?オマエは。」
「違うじゃん!なっちとほのかはともだちでしょ!?」
「・・・・信じるかよ、普通。」
「だってそうじゃないか。お兄ちゃんは関係ないよ。」
「出会ったときは確かにアイツの妹だとは知らなかったがな。」
「二人がともだちなのはお兄ちゃんの妹だからじゃないもん!」
「まぁ・・それはそうだな。」
「それに片思いって失礼な!ともだちだと言ってるのにさ。」
「そこはすぐに誤解解けるんじゃねぇ?オマエなら・・」
「どういう意味!?」
「そんな色気感じたことねぇし。オレはそういう期待されるのも好きじゃねぇ。」
「前半はブジョクされた気がするけど・・なっちそういうの多そうだもんね・・」
「オマエ見てれば誰もそんな風に思わないってことだ。」
「でもさ、ほのかなっちのこと好きだよ?」
「・・・ともだちだから、ってことだろ?」
「そうだけど。」
「なら合ってるじゃねぇか。何がそんなに気に入らないんだよ。」
「う・そう言われると・・何に腹が立ったんだっけ?」
「あほらしい・・とっととオヤツ食って忘れろ。」
「ウン・・そう・・するか。」

なっちに言われて自分でもおやっ?!と思った。そうだよね、怒るほどでもない。
放っておけばそのうち誤解なんだからわかってくれるような気がしてきた。
さすがはちょびっと年上なだけのことあるな、などと私は単純にそこで納得した。


その数日後、反対になっちの学校にお迎えに行ったら似たような場面に出くわした。
なっちの学校の人達が「誰ですか!?」「かわいい〜!えっ白浜君の妹さん!?」
とかなんとか周囲にたまたまいたので説明したなっちに口々にそんなことを言った。
気持ち悪い愛想笑いを浮かべたなっちは、適当にあしらってるように見えた。

「・・・なっちはともだちだって言わないんだね。」
「・・オマエのことをか?言っても通じないだろ。」
「・・お兄ちゃんの妹って言うとどうして皆安心するんだろ。」
「オレとオマエじゃ普通友達には見えないだろ。」
「そうか。でもなんで?ウソ吐いてるみたいでなんかヤだ。」
「・・放っておけよ。オマエの言う通り安心したいんだよ。」
「安心?どうしてともだちの妹だと安心なの?」
「さぁな。皆関心あるのは男か女かってそこだけにあるからじゃねぇか?」
「だったらともだちでもいいじゃないか。」
「オレにとってはどうでもいいけどな。ともだちってのもよくわからねぇ。」
「なっち・・やっぱりほのかはなっちのともだちだよ!信じてね?!」
「呼び方なんか別にいい。オマエはオマエだ。」
「ウンっ!ありがと、なっち。」
「礼を言うことかよ・・」

「でもさ、いつか違う好きになるかもしれない。だから悔しかったのかな?」
「!?」

ふと浮かんだ考えを意識しないまま口に出した。そしたらなっちはすごく驚いた。
驚いたことを隠さずに私のことを見た。目が合ったらなんだかどきんと胸が鳴った。

「どうしたの・・?変かな?そう思ったんだよ、今・・」
「・・ふぅん・・オレはそういうの好きじゃないって言ったろ。」
「あっそうか・・ほのかもそんな風に好きだと・・嫌かな?」
「・・わからん。オマエだと・・そんなに嫌じゃない気がして・・驚いた。」
「そっかあ!よかった。じゃあ安心しとく。」
「安心って・・ともだちなんだろ!?妹じゃなくて。」
「他の皆は妹だと安心するのかもしれないけどほのかは違う。妹じゃない方が安心なの。」
「・・・オマエさぁ・・あんまり考えずに言ってるだろう・・」
「ウン。ややこしいね。ははっ・・!」
「まったく・・ややこしいヤツだぜ。」
「そお?いいじゃん、なっちがキライじゃなかったら。」
「誰がオマエのこと・・好きだなんて言ったんだよ・・」
「ふへへ!今言ったじゃん。なんかむずむずってしたあ!」
「ガキのくせして。生意気な。」
「今はガキでもいいもん。好きになったら女の子だってわかってくれれば。」
「オマエは・・ガキでも・・最初っから・・・」
「ん?なんて言ったの?」
「なっなんでもねぇよ。」

なっちはどうしてだか顔を赤くしてそっぽ向いてしまった。”最初から?”なんだろう?
女の子だってこと?そりゃそうだ。男には見えないよね。それとも・・わかんないや。

「でも今はともだちだからねっ!なっちヨロシク!!」
「好きに言っとけ。」

横を向いたままなっちはどうでもよさげにそう言った。夕陽に照らされた横顔が綺麗だった。
男と女とか、ともだちだとかカレカノだとか・・そうだね、どうでもいい。
私はなっちと出会って、好きになった。ただそれだけだ。
なっちはほのかのことどう思ってるかって、それもいい。
一緒にいてくれるし、優しいし、ありのままを見せてくれるから。
傷ついた顔も寂しい顔も知ってる。だから今のなっちの顔がいい。
穏やかな顔で微笑むなっちが、とても。だからそれだけ大事にしよう。

「なっちー!手繋いで帰ろうよ!」
「はぁ?!」

嫌がるなっちの片手を握って引っ張って歩いた。そのうち歩調が合ってくる。
合わせてくれてるんだ。なっちってホント・・優しいね。ダイスキさ。

嬉しさを隠せないままなっちに向かって微笑んだら、こっちを向いてくれた。
夕陽はほのかのことも綺麗に見せてくれたらいいな、だってなっちがとても綺麗だから。
微かに浮かんだ笑顔が眩しくて目を細めた。握った手を握り返してくれたのがわかった。






ほのぼのでどうしても何か書きたくて!書いてみたら・・被りました!以前のと。
タイトルすらも被ってしまって修正に大慌てです!パート2ってことでお許しください。
(以前の「ともだち」は夏さんサイドのお話でした。内容は同じではありません)