「”すいっち”をさがせ!」 



つい最近わかったことがある。それはほのかだけの特権らしい。
遠慮しいのなっちのどこかにあるらしい”すいっち”の存在だ。

やっと恋人みたいにキスしてくれるようになって舞いあがってた。
だけど単純なほのかと違ってなっちはなんだか複雑そうでもあって。
間違いなく幸せだよと伝えるにはどうしたらいいかなと思ってた。
そんなときに知ったのが ”なっつんすいっち”なのだ。

だからそれを探すの!ほのかガンバル!だって、だってね・・
そんなの魔法だよ!なっちが遠慮なしにほのかに夢中になるって!?
まさかって思うそんな夢みたいなことができるのだとしたら。
そんなのがあるなら誰だって探すでしょ!?ものすごく気になるよね。
本人に訊いても教えてくれないの。恥ずかしがりやさんだしね。
仕方ないので自力でがんばってみることにしたってわけ。

「オマエ人のこと威嚇してんなよ・・なんかあったのか?」
「そんなことしてないよ。観察してるの、なっちのこと。」
「そのデカイ目で睨まれると、身に覚えはなかったかと焦るだろ・・」
「睨んでないってば。それってなんか後ろ暗いことでもあるの!?」
「そうじゃねぇけど。気になるだろうが。」
「なっつんすいっち探してるんだよーだ。」
「・・・まさか・・・この前言ってた・・?」
「だってなっちのそのすいっち、ほのかなら押せるんでしょ!?」
「や、待て待て。それってオレにどうしてほしいんだ・・?」
「モチロン、なっちに”やる気”になってもらうのさ!」

そう宣言するとなっちは上を向いて手で顔を覆った。どういうこと!?
ヘンなこと言ったかなとちょっとだけ不安になってると、眉間の皺が見えた。

「わぁ・・どうしちゃったの?その皺。かなりヒドイよ?」
「・・オマエこそやる気満々なとこ悪いが・・それ、やめとけ。」
「ヤダ!なんでいきなりがっかりするようなこと言うの!?」
「目的はなんだ!?襲ってほしいってのか?」
「そういうことに・・なるかもしんない。」
「はぁ・・ほんとにそういうことをしたいのか?!」
「だって・・ほのかだけ”やる気”じゃダメでしょう・・?」
「う・・そっ・・マジかよ!?」
「もっちろん!」
「落ち着け。ってか落ち着こう、オレ。そんで具体的になにするつもりだ?」
「まずは観察してみようって思って見てたの。でもよくわかんなかった。」
「はぁ・・それで?」
「んーとあとはぁ・・あちこち触ってみようかなーとか・・」
「こ、コワイヤツ!」
「あとさ、脱ぐのって反則?ほのか脱いでもすごくないのが残念だけどねぇ・・」
「それもやめてくれ。」
「無駄とか言ったら怒るよ!」
「言ってない。」
「ねぇヒントちょうだい。どんなことするのが有効かな!?」
「オマエ絶対間違ってる。やる気ってのを勘違いしてるぞ!」
「そんなことないもん。ばかにしないで!」
「じゃあぶっちゃけて言う。オレはそんなこと今はしたくない。」
「だからすいっちを探すんじゃないか。わかんないひとだねぇ!」
「だああああっ・・・オマエは〜!?」
「ほのかにはすいっちいらないけどね。」
「な、なんだと・・!?」
「なっちが”その気”ならどんと来いだもんv」
「・・・魅力的な誘いのはずだが・・恐ろしさしか感じないぞ?」
「なんでさ?」
「あ、あのな。よくきけよ?オレもそうなんだよ・・要するに。」
「??・・?」
「スイッチを押すか押さないかはお互いの意思だろ?」
「そうだね。」
「でもって、そういうことをするなら二人ともそうしたくないとダメだよな。」
「だけどなっちはちっともそうしたいって思ってないみたいだもん。」
「んなわけあるか!」
「・・・・あれ?だって・・」
「ごほっ・・いやだからな、オレだってオマエにそんなスイッチあるなら知りたいが・・」
「ほのかの?・・えーとどこだろ?!教えてあげたいんだけど・・ちょっと待ってね?」
「考えるな!考えなくていい。知りたいが教えてほしいんじゃないって言ってんだよ!」
「ややこしいこと言わないでよ、わかんない。」
「ああもう!ややこしいこと言ってんのはオマエじゃねーかっ!」
「そんなことないよ!なっちがおかしい。せっかくほのかがやる気になってるのに!」
「そりゃ・・ありがたいが、オレは・・・したくないんだよ!」
「!?・・・ヒドイ・・ほのかしょっくだ・・・・」
「ぐ・・どう言やいいんだ・・その・・そんなことはもっと後にしてくれよ。」
「後っていつ!?何の後?」
「オレもオマエもそういうことが・・日常になってからっつうか・・」
「・・・ほのか焦ってる?なにか飛ばしちゃったってこと・・?」
「やれやれ・・そうだ。」
「無理矢理じゃダメってこと・・?でもなんでなっちはしたくないの?それがショック。」
「・・・ほのか、引くなよ!オマエな、そのスイッチなら毎日押してる。だから無駄だ。」
「・・・・え!?」
「遠まわしじゃオマエに通じないってよくわかった・・」
「どこどこ!?どこなのそれ。意地悪しないで教えてよ!?」
「どこって・・そんなもんどこにもない。わからなくても当然だ。」
「だって押してるって・・ほのか知らないのに?」
「知ってても知らなくても肝心なのはそこじゃねぇっての。」
「じゃあなに!?どうしてしたくないの!?ほのか全然そんなことしたいと思えない!?」
「だーかーら、したくないわけがないだろっ!?」

鼻の奥がツンとして涙が出そうだったけど、そのときは出なかった。
なっちがほのかを抱きしめてくれたから、ちょっとほっとしたんだ。
だけど全部はほっとできなくて、わからない自分が子供みたいで口惜しかった。

「これ以上誘惑するなって・・必要ないんだよ、オマエがそんなことする。」

耳元でなっちが苦しそうな声でそう言った。なんだかまたジンとして涙が出そうになった。

「ほのか・・なっちにも幸せだって思ってほしかったんだもん。」
「それなら尚更必要ないじゃねーか。」
「なっち、伝わってる?ほのかなっちのことダイスキなんだよ?」
「あぁ。だから必要ない。今だって幸せだって思って降参してるさ。」
「そう・・かぁ・・なんとなく・・わかった・・かもしれない。」
「急ぐな。焦らなくてもオレは絶対オマエのこと離さないから。」
「ウン。ウレシイな・・珍しく素直だね!?」
「しょうがねぇだろ!わかんないヤツがややこしいこと言い出すから。」
「なっちがダイスキすぎるからなの。怒らないでよ。」
「怒ってねぇよ。毎日毎日オレを翻弄しやがって・・この悪魔。」
「・・悪魔はヒドくない!?」
「魂ごと持っていってる。悪魔とおんなじだ。」
「ふわ・・なっちってば恥ずかしいこと言ってる〜!」
「まったくだ。腹立つっつうかむかつくってか。」
「へへ・・責任取るよ。ほのかのもあげるね!?」
「・・マジで殺されそうだぜ。」
「なんでだよう!?喜んでよ!」
「悲しんでるわけないだろ。」
「・・・・ねぇ・・チューは?キスはしてってお願いしていい?」
「どんくらい?」
「えっとねぇ・・そうだ!ほのかに”すいっち”入るくらい。」
「!?オマエ・・新たな誘惑思いつきやがって・・」
「ほのかってスゴイね!そんなに誘惑できてたなんて知らなかったよ。」
「この上、自覚ありで攻められたらと思うと・・気が気じゃねぇよ・・」
「ほのかばっかり幸せじゃあ申し訳ないもん。だからいいんだよっ!!」

ほのかは成功したかもしれない。なっちが幸せそうに微笑むのが見えたの。
ぶつぶつ文句みたいなこと言ってはいたけどね。抱きしめる腕は熱かった。
いつだってやる気だとか・・・言わせんなっての!ってちょっと怒ってもいた。
なぁんだ。言ってくれないからわかんないんだし。ってほのかも怒っておいた。
なっちはほのかの顔中にキスしてくれた。唇だけわざと残して。

「ねぇねぇ、ホントに二人してすいっち押しちゃったら、どうなるの?」
「そんなこともわからない悪魔には絶対踏みとどまってみせねぇとな。」
「まだまだ誘惑が足りないのかもしれない・・ほのかガンバろうっと。」
「っとに・・オマエって・・むかつく!」

ほぉらね。残してくれた唇だけ丁寧なキス。嬉しいけど・・なんだかわかんなくなる・・・
もしかして・・ほのかだって毎回・・すいっち押されてるんじゃあ・・ない!?

「・・なぁ、まだ大丈夫か・・?」
「・・は・・ふ・・もぉだめぇ・・・!」
「ほのか・・それって止めてんのか、誘ってんのかどっちだ?」
「なっちだって・・押してるじゃないか・・ほのかの・・・いっぱい・・」

そりゃあいいことをきいたと囁いたりするから、「なっちだって悪魔みたい。」
そう言って睨みつけてやったの。そしたらね、「なんせ悪魔に魂売り渡したからな。」
だって。口惜しいからほのかもキスしてあげたの。「ほのかの悪魔さんに」って。







バカなカップルって普通見てられないものですが、この二人は飽きません。
好きなだけいちゃついてなさいって思えるところが病気ですね〜!?(^^)