「両側からキス」 


好きだからって四六時中そんなことばっか考えてない。
だけどさ、いやだからこそ、二人のタイミングって大事でしょ?!
ウンそうだよ。だからうまく合わなくたって当たり前なのさ。
・・ほのかが悪い・・ってわけじゃない!と、思うんだよ・・

別段不満なわけじゃない。相変わらず口やかましいこと以外問題ない。
ただたまにほのかがなっちに”キスしてほしいなー!”とか思うと、
忙しそうだったり、中々会えないときだったり、ってことはよくある。
会えるときはしてくれるしね!?軽い・・挨拶みたいなのだけれども・・
贅沢!?嬉しいよ?ちょびっと物足りないなと思うくらい、いいじゃないか。

けど逆の場合、少しほのかもいけないかなぁと反省しちゃったりもする。
なっちの腕が中々離してくれなくてつい嫌がるような仕草をしちゃうとか、
長いキスで苦しくなってもうヤダって泣いちゃうこともあったり・・なので。
そんなときなっちは怒ったりしないし、優しいから余計にこう・・ずきずきと・・
胸が痛かったり寂しかったりするんだ。どこかすれ違ってるような気がする。

そんなこと考えていながらおかしいかもだけど、もしタイミング合っちゃったら
どうなるんだろうって思うとブルッときちゃう。怖いような期待してるみたいな?

すごく嬉しいこともある。ほのかが嫌がって中断したキスのあと、
以前のように子供にする頭撫で撫でじゃなくなったんだ。これは進歩だよ。
オマケの軽いキスの後、手を握ってくれるの。ほのかも嬉しがって絡めちゃう。
痛かった胸がふわっと軽くなるのがわかる。微笑みが自然と交差するのも嬉しい。
たまにいじけたように耳に噛み付かれることもあるけど、そんななっちも可愛い。
ぞくっとしちゃうことはナイショにして、ほのかはなっちを慰めてあげるんだ。

「ヨシヨシ・・」
「・・もっと。」
「ふふ・・はいはい、ヨシヨシ・・」
「・・手ぇ・・出せ。」
「握ってくれるの?ハイ。」

たまに握ったまま口元まで持っていかれて、手にキスされる。
くすぐったいの。ぴりぴりって手先から痺れるような感じがする。

「あ・・なっち!・・やめて?!」
「イヤか?」
「じゃないけど指・・どうして舐めるの?」
「・・甘いなと思って。」
「うそぉ・・」
「ウソじゃねぇ。オマエってどこも甘ったるい。」
「それってほめてるの?」
「甘いもんは嫌いだがオマエは別。」
「・・・えー・・・なんか・・」
「なんだよ、文句あるのか。」
「・・ウウン・・もっと・・してほしくなるじゃ・・ない」
「指か?それとも・・どこがいいんだ?」
「い・いいよ、もう。」
「そんな顔して?」
「えっ?!してほしそう!?」
「ぷっ・・嫌ならいい。」
「いつもみたいのがいい。指、絡ませて?」
「あぁ・・オマエ好きだよな。」
「変?・・ヤラシイ?」
「んなことない。」
「そっか・・よかった。」
「いやらしくてもオレはいいけど?」
「ほのかはイヤだ。」
「わかったよ。」
「わがままじゃないよ、ほのか・・けど・・意地悪?」
「さぁな。どうでもいい。」
「どうでも!?」
「ああ、わがままだろうが意地悪だろうが、構わない。」
「なっちってさぁ・・」
「んだよ、引いたのか?」
「ほんとにほのかのこと好きだよね!」
「悪かったな。」
「だからキスして。」
「?」
「わがまま言ってみて?ちょっとなら意地悪してもいいよ。」
「難しいリクエストだな。それに・・こえーこと言ってら。」
「なんでさ!」
「誘い方があからさまというか、大胆だな。」
「ほのか変わった?やらしすぎ!?」
「キスしたいのなら珍しく気が合ったってことか。」
「あ!」
「何だ?」
「両方!?」
「何が?」
「二人共したいってやっぱり珍しい?」
「・・そうだな。」

思った通りだと笑うとなっちは困ったような顔をしながら釣られて口元だけが笑った。
気を良くしたまま目を閉じて顔を近づけた。けどなっちの位置がわからなくなった。
なので目を開けたらまん前に(当たり前?)顔があって、驚いてしまった。

「なんだよ、いきなりやめんなよ・・」
「やめたんじゃなくて、どこだかわかんなくなったの。」
「そうですか。」
「そうですよ。」

恥ずかしくて顔が熱かった。気まずいというの?キスの手前のフライング。
もしかするとなっちも照れてたかもしれない。ああせっかくのチャンスが。

「せっかく二人ともしたいときなのに!ごめんよ、やり直し。」
「オマエはどういうときしたくなるんだ?」
「え、・・わかんない。なっちが忙しくて構ってくれないとき?」
「それ以外は?」
「・・・すきだなぁって思うときとか・・」
「ふぅん・・普通だな。」
「結構よく思うよ。」
「へぇ?」
「それでね、この頃二人共したくなるのってどういうタイミングかと悩んでた。」
「わかったのか。」
「わかんない!」
「なのになんで嬉しそうなんだよ。」
「えー・・だってさ。わかんない方がワクワクしない?いつかな、いつかなって。」
「・・まぁ・・言われてみりゃそうかもな。」
「そうでしょ!エヘン、さすがはほのかなのだ。」
「で、キスはいつしてくれるんだ?」
「あっ忘れてた。」
「ひでぇヤツ・・」

口ではほのかが悪い子みたいな言葉だったけど・・楽しそうになっちは笑った。
とろとろのチーズみたい。胸がどくんと鳴ってすごくステキに見えたの。

「なっちっていじめられるのが好きなの?ほのかに。」
「・・オマエ限定だぞ?じゃないと変態みたいだろ。」
「意地悪されたいなんて!?」
「オマエだってさっきそうしていい、って言ったじゃねぇかよ。」
「そうだっけ?・・あ・言ったねぇ!」

なっちはボケちゃっておかしなほのかの頬を摘んで引っ張った。

「いたたた・・意地悪ってこれ!?」
「耳貸せ、耳。」
「・・?・・!!!!」

実はほのかは耳って弱点で、かなりくすぐったいの。なっちにはばれてるけど。
甘く噛んだり舐めたり苛めるんだよね!・・わんこみたいって思うときあるよ。
ってそれどころじゃないや!

「なっち!ダメ!ヤダ!そんなとこキスしないで!?」
「いやだ。」
「ええっ!?い、意地悪。」
「していいんだろ。」
「ちょっと!ちょっとならって・・」
「こんくらいちょっとだろうが。」
「耳はだめだってばぁ・・・あっ!」
「やらしー顔。でもって声。」
「なっちの今の顔には負ける!ねぇいつのまにほのか寝かされてるのさ?」
「いつって今。」
「でもってなんでなっち乗っかっておさえてるの!?」
「耳は暴れるかなぁと思ったんで・・」
「暴れるよっ!けどこれじゃ動けない・・」
「そうだな。」
「ね、ねぇ・・なっち・・コワいから・・」
「わがまま言えってのは?キスしたかったんだろ?まだしてないぞ。」
「う・言った・・けどぉ!」
「ホントに難しいな。本気になれば逃げるし・・」
「からかってたの!?」
「いや本気。」
「えっと・・えっと・・もおわかんない!」
「そういうのがわくわくすんじゃねぇの?」
「はう・う〜・・・」
「キスだけだ。心配すんな。」
「予告しちゃったら・・ダメじゃないか。」
「わがまま。」
「そうだよ。知ってるでしょ!?」
「たまには苛めたっていいじゃねぇかよ。負けないのが信条なんだぞ、オレは。」
「負けてないよ、なっちぃ・・降参。」
「・・ドローだな。お互いさまってとこか。」

胸がきゅんとした。思ったよりずっと優しいキスだった。でも物足りなくなんかない。
嬉しくてなんだか恥ずかしくてしがみついてもっとと強請った。離してほしくなかったから。
けどすぐに悲鳴を上げちゃった。なっちがカン違いしたの。そりゃ「もっと」って言ったけど!

「チガウ違う、ちがーう!さっきみたいなキスをもう一回って意味だよ!」
「なんだ・・やっと双方同意で先へ進めるのかと・・」
「そうだけどそうじゃないの!」
「はいはい・・わかりました。」


期待していた両方ともしたいときって・・思ってたのと違ったの。
だけどね、ドキドキは最高潮だったし、タイミングずれてるのもそれなりに・・

楽しいかも!?ってわかっちゃった。ああ、ごめんなさい。ほのかはやっぱり贅沢者です。
意地悪するのもされるのも好き。予想を裏切るのも裏切られるのも。なんてヤラシイんだろ。
だけど・・だけどね?二人共お互いがダイスキってことがわかったから・・いいんだよーだv







お久しぶりです。甘すぎましたか?え、そうでもない!?
どんとこいと思われた方がいらしたらまた書きますv^^