Paradise view  


 
あのね、もしかしたらね、ほのかだけ?!
もしそうなら、誰にも譲ってあげないじょ 
特等席なんだもんね、ほのかの
だって最高なんだもん、この眺め
なっつんの傍だと色んないい景色が見えるよ
一番の場所はねぇ・・・・教えない!



「なっつん、あっち!あっちだってば!!」
「そっちはさっき行ったろ?!」
「だからそんとき通り過ぎたんだよう!」
「ホントかぁ・・?」
「ほら、早く行こうよ!」 
ほのかは夏の腕を掴んで強引に引っ張った。
またもや遊園地なんぞに連れ出された夏は憮然とした表情で。
「早くしないとなくなっちゃうかもだよ?!」
「まさか、そんなことねえだろ?」
「わっかんないじゃんかー!」
「ぬいぐるみだの風船だのって・・おまえは幼児か」
「可愛いものは年なんて関係ないんだってば!わっかんないかな〜!?」
”思いっきり子供みたいな面してよく言うよな・・・”
本日の付き添いも子供の引率以外の何ものでもないと夏は思う。
普段からなんだかんだと面倒を見てやってるので半ば諦めている。
「やれやれ・・おい、気をつけろよ!」
お目当てを見つけて駆け出していく相棒の先には団体が向かっている。
ぶつかるのではないかと思わず声を掛けたが聞えなかったようで。
「ぎゃうっ?!」
「いたっ!!あっごめんなさいー!!」
思いきりぶつかって尻餅をつくほのかに溜息が零れた。
「なんでそう周りを見てないんだよ・・」
「大丈夫か?」
「あ、なっつん。・・見てた?」
「さっさと立てよ、ほら!」
差し出された手を掴んでよっと立ち上がるとほのかは「あっ」と叫んだ。
「どうした?また怪我でもしたのか?!」
「違う・・・靴の飾りが〜〜〜!」
どうやら履いていた靴に付いていた花飾りがもげてしまっていたらしい。
「うえ〜ん・・これ可愛くて気に入ってたのに〜〜;」
「仕方ないだろ、無くても歩けるんなら構うな。」
「なっつんて乙女心がわかんないよねぇ・・?!」
「そんなもんわかってたまるか!?」
「それもそうか。」 
気を取り直して歩き出したがほのかは少し歩調がおかしい。 
「どうした?やっぱりくじいたのか?」
「・・・たいしたことないじょ・・ってかなんでわかるの?」 
「転び方見てたからな、もう少し落ち着けよ?おまえ」
「うう・・面目ない・・」
「捻挫は馬鹿にするなよ?どっかで手当てしないと駄目だな・・」
そう夏が呟くのをしょんぼりと下を向いて聞いていたほのかだったが
突然視界がぐるり揺れて身体が宙に浮いたかに思えた。
「わっ!相変わらず扱いが荒っぽいじょ!」 
「うるせー!」
ほのかは夏の肩の上に軽々と担ぎ上げられている。
別段重さを感じる風もなくすたすたと夏は歩き出す。
「あっ!あそこ!!なっつん、風船売りのぬいぐるみが居た!」
「そんなもんは後だ!」
「え〜っ!!また見失っちゃうよ、あっち!あっち行って、なっつん!」
「偉そうに上から指図すんな。後だ、後!」 
「やだー!なっつんのケチ、すぐそこだってばぁ!」 
無視されてほのかはしぶしぶその場は諦めることにしたらしい。
大人しくなったので「痛むか?」とつい尋ねてしまう夏。 
「ううん、平気。それよりいい眺めだじょ〜!」
「?!・・・そりゃよかったな・・」
夏は呆れたようだったがほのかはいつもより高い目線が面白い。 
「いいなぁ、これくらい背が高いと世界が変るじょ。」
「そんなでかいと困ることの方が多いんじゃねーか?」
「そう?ほのかちょびっと低めだから背が高いの羨ましいなぁ。」
「別に不自由してなきゃ背なんてどうでもいいさ。」
「それは背がそこそこ高い人の科白だよ、ふんだ!」 
「オレはそれほど高い方じゃないが別に困ってない。」 
「なっつんがこれ以上おっきくなったらほのか困る!」
「?・・・なんでだよ」
「今だって見上げないとなっつんの顔がよく見えないもん。」 
「なんだ、そんなことか。」 
「そんなことって言うけどさ、首痛くなるんだよ、見上げてばっかだとさ。」 
「今は見下ろしてるだろ?」          
「うん!とってもいい気持ちv」 
肩の上で嬉しそうなほのかに見えないように夏も微笑んだ。 
木陰のベンチを見つけたのでそこへ向かうと夏はほのかを下ろした。
ベンチに下ろされたとき夏と視線が合ってほのかが少し目を見開いた。
「なんだよ?顔なんか付いてるか?」
「ううん、やっぱり背が高くなりたい、なっつんとおんなじくらい!」
「どうしたんだよ、突然。」
「なっつんと目が合うこれくらいがいいの。」
夏には真意が汲み取れないようでほのかに懐疑の目が向けられる。
「背が違うと離れてるみたいでやなんだもん。」
「・・・・」
「もっとなっつんの傍がいい・・」
やっとほのかの言いたいことがわかると夏は少し顔を赤らめた。
木陰でそれが誤魔化されたことに感謝すると俯いたほのかの額に指を当てた。
びっとデコピンされてほのかが「ぎゃっ!」と悲鳴を上げた。
「痛ー!何すんだよ、なっつん、暴力反対!」
「馬鹿言ってるからだよ」
「む、馬鹿って何?!」
「馬鹿らしいだろ、そんな距離を気にするなんざ。」
「??・・だってさ・・」
「そんなもんいつだってゼロに出来るぜ?」
「え?」
額の衝撃と正反対の優しい感覚が一瞬唇に落とされた。
「!?」
すぐに離れていった夏の顔がやはり心なしか赤い。
「ほら、足出せ。手当てしてやるから。」
そう言って夏はバッグを下ろし、ほのかの前に跪いた。
「そうか、背が違っててもいいんだ・・」
呟きを聞いてない風にバッグから包帯なぞを取り出している夏。
「なっつん、用意がいいんだね?」
「おまえといつも居るせいでな・・」
夏は嫌そうにそう言うのだがほのかは嬉しくなって微笑んだ。
「そうだね、高い景色だってなっつんとならいつでも見えるし!」
「こら、じっとしてろよ!」
「好きなとき色んな眺めが見えてお得かもしんない!!」
「わかったから、じっとしてろよ、足動かすなって!」
「うんv」
ほのかは満足そうに頷いて大人しくなった。
慣れた手つきでテーピングしていく夏を見つめて嬉しそうにまた笑う。
「やっぱりほのかはなっつんの傍が一番だね!?」
「人を便利グッズみたいに思ってるだろ?!」
「あははvそうじゃないよぉ・・!」
「ほら、出来だぞ。立ってみろ。」
「うん、あ、全然平気。ありがと、なっつん。」
「ヨシ、じゃあ例の風船売りでも探すか・・」
「さっきみたいに抱えてよ、その方がよく見えるからさ。」
「何甘えてんだよ。・・でもあまり歩かない方がいいか・・」
「そうそう!ほのかがすぐに見つけてあげるから安心して!」
「ったく・・しょーがねーな・・」
夏はしぶしぶと言った口調と裏腹に今度は優しく抱き上げる。
ほのかが嬉しげに夏に身体を預けて猫のように頬を摺り寄せた。
「くすぐってー!何してんだ?」
「なんでもないよーv」
「見つけても嬉しがって暴れるなよ?」
「ダイジョーブ!しゅっぱーつ!!」
「おまえ、やっぱ子供だろ・・?」
「なっつんの傍は嬉しいんだもん。」
「・・・そーかよ・・」


もしかしてほのかってすごくなっつんに近いの?
すごく嬉しかったよ 距離なんてもう気にしない
ほのかもなっつんの近くがいいんだよ
だから一緒に居ようね、色んな景色見せてね
なっつんと一緒だからこんなに世界がステキなの
ずっとずっと一緒にいようよ








ふう〜、相変わらず糖度高いですが・・夏ほのはいい!
最近夏視点が多かったのでほのか路線でいってみました。
乙女思考が難しいのですが、頑張りました。(疲)
少しでも幸せをおすそ分けできたら管理人本望です。