「なっつんと一緒v」 


ちょびっとあえない日が続いたのでダッシュした。
”なっつん不足”になっちゃってタイヘンだったよ。
きっと寂しがってると思うんだ。ごめんね、なっつん!
足りなかった分を取り戻すためにも思い切り甘えちゃう。
なっつんは相変わらず照れ屋サンで素直じゃないけど、
まぁそこが可愛いっていうかさ、ウン。いいよねっ!?
この頃お兄ちゃんとも仲良しみたいで良かったなって思う。
それにこないだアパチャイとも遊びに行って仲良くなった。
3人でオセロして楽しかったなぁ!ほのかが優勝したし。
今日はほのかだけだけど、いいよね。物足りないかな!?
でもこないだほのかだけの方がいいみたいなこと言ってたかな・・
なんでってきいたけど、はっきり答えてくれなかったっけ。
まぁ、いいや。それよりもう少しだ。あと何メートル!?

”あっ!前を歩いてるのはなっつんだ。やったね!”

よーし、ラストスパートだよ!なっつんが目標で目的地だ。

「ターゲットオーン!スーパーダッシュもーどっ!」

ほのかに気付いたなっつんが振り向いた。ああ、懐かしいや。
待っててくれる。こっち向いて。だから思い切りジャンプだ。

「なっつ〜ん!!!」

大跳躍を見せて飛びついたってなっつんはびくともしない。
だから遠慮なしだよ。そんでもってかじっちゃおうかな、嬉しいから。

「コラッ!飛びつくなと言ってるだろ!?」
「いいんだもん。あいたかった!?なっつん。」
「あ・いたくなんかねぇよ!このチビ・・」

あいたくないとか言いながら、なっつんはほのかを下ろさない。
だから顔を擦り付けて、めいっぱい両腕でなっつんにしがみつく。
きゅっと軽くだけど抱っこしてくれた!?えへへ・・嬉しい。
顔を上げて、どんな顔かなって確認。やっぱり嬉しそうだ!

「肩車して!」
「はぁっ!?いきなり・・」

ごちゃごちゃ言う前になっつんによじ登ると渋々助けてくれる。
乗っけてもらうと世界は広い。高さがどんと変わって視界良好。
気持ち良さも最高。なっつんはゆっくりと前へと進み始める。

「いざ谷本邸へしゅっぱーつ!」
「はぁ・・やっぱオレんちへ来るつもりか・・」
「何いまさらなこと言ってんの?早く帰ろ。」
「帰るってオマエんちじゃねぇだろ!?」
「別宅なのさ。」
「ずうずうしい。違うだろ!」
「そうなのっ!」
「冗談。」
「どうせお嫁に来るし。それともなっつんがウチに来る?」
「勝手なこと言ってんじゃねぇっ!!」
「勝手じゃないもん。決まりだよ。」
「誰がそんなこと認めた!?え?」
「いいって言ったじゃん。忘れたの!?」
「・・オマエが将来美人になったらと言ったはずだ・・」
「なるもん。だから決まり!」
「わからねぇだろ、そんなの。」
「ウチのお母さん美人だって知ってるでしょ!?」
「・・・とにかくそんなのずっと先のことじゃねーか。」
「だけど決まりだから。ねっ!?」
「ねっ!じゃねぇよ・・」

往生際の悪いなっつんのことは気にしないで景色を満喫する。
心地よさにふーっと深呼吸すると、下では溜息が聞こえた。

「おら、着いたぞ!下りろよ。」
「えーっ!?お部屋まで連れてって?」
「アホッ、甘えんな。とっとと下りろ。」
「ちぇ、まぁいいか。」

ほのかがぴょいとなっつんから下りると、「やれやれ・・」だって。

「なっつん、おじさんぽいよ。若者でしょ!?」
「・・精神的な疲れだ。」
「なんでさ、嬉しくないの?」
「オマエが何故疑いなくそう思えるのかが不思議だ。」
「なっつんが不思議なのが不思議だよ。」

首をひねりつつ居間にたどり着くと、久しぶりのソファにもダイブ。
なっつんちのソファは多分ほのかが一番に利用してると思うんだ。
だってここだけウチの匂いがするもんね。ほのかの指定席でもある。

「ホントに自分チみたいに寛ぎやがって。」
「別宅だもん。あ・そうそう、今日はほのかだけなの。ごめんね?」
「・・前に誰も連れてくるなと言ったはずだぞ!?」
「多い方が楽しいじゃないか。でも誘う暇なかったんだ。」
「だから誘わんでいい。っていうか誘うな!」
「なんで?アパチャイにもオセロ負けて悔しかったの?」
「・・・あの達人の方が良かったらそっちと遊べよ、オレを巻き込むな。」
「もう〜人見知りさんだねぇ。なっつんにあえなきゃダメじゃんか。」
「何がダメなんだよ。」
「今日とかなっつんが足りなくてあいたくて走ってきたのに。」
「・・それで?」
「それでって・・だからアパチャイだって暇じゃないときあるし・・」
「オレだって暇じゃねぇ。オレの都合はお構いなしかよ!?」
「なっつんにあえなきゃ意味ないし。」
「・・一応オレのが優先ってことか。」
「アパチャイはお友達たくさん居るし。」
「待て。オマエ・・オレが寂しいとか勘違いしてきてるのか?」
「というか、なっつんとほのかはお友達じゃないか。」
「・・・・オレが便利だからとか言ってなかったか?」
「あぁ・・でも一番の理由はなっつんが好きだからだよ。」

ほのかに質問ばかりしていたなっつんが急に黙ってしまった。
静かにしてるとここんちは天井とかが高くて広いからシーンとする。
でもって、どうもここんちの主は今日とてもご機嫌斜めみたいだ。

「せっかくあえたんだし、あそぼ?」
「どうせ暇つぶしに来てるだけだろ、オマエは。」
「どうしたの、いじけちゃって。なっつんと遊びたいからだってば。」
「・・・フン・・」

あやや・・・しばらくほっといたせいかな。困ったね。
元気のないなっつんに寄っていくと「来んな、あっち行ってろ。」と先回り。

「ここんちってさ、無駄に広いんだもん。たくさん居たらにぎやかでしょ。」
「ここは寄り合い所じゃねぇんだ。迷惑だから人を連れてくるのはやめろ。」
「ほのか教えたわけじゃないよ、ねずみ君とアパチャイはここ知ってたの。」
「前にオマエのバカ兄キがここへ逃げ込んだとき、つけられやがったんだ。」
「らしいね。なっつんちって落ち着くってお兄ちゃんも言ってたよ。」
「・・・二度と来るなと言った。オマエにだって言ったはずだ。」
「・・でもほのか来てるし。」
「なんでだよ、オマエら兄妹揃ってオレをバカにしてんのか?」
「なっつん・・こっちこそなんでだよ、どうしちゃったの?!」
「脳天気なオマエらを見てるとイライラする。構うなって言ってんだ・・」
「いつも優しくしてくれるじゃないか!なのにどうして一人になりたがるの?」
「うるせぇ・・今日は気分が悪いから帰れ。」
「イヤ!!せっかくずっとあえなくて、あいたくてあいたくてやっとあえたのに!」
「嘘吐け。オマエこそ友達なんぞたくさん居るだろ、オレじゃなくたって・・」
「そんなに寂しかったの?ごめんね、ほのかもね、すごーくあいたかったよ。」
「寂しくなんかなっ・・」

今日何度めだったか忘れたけど、思い切り飛びついてなっつんの頭を抱えた。

「ほのかはすごく寂しかった。だから意地悪言わないで遊んでよ・・」

しがみついたままそうお願いした。なっつんは困ったように黙っていた。
でも無理に離そうとしないでくれたから嬉しかった。ぎゅうと力を込めてみた。

「なっつんにあいたかった。一緒に居ると落ち着くんだ・・」

「・・・・変なヤツ・・オマエって・・」

なっつんがようやく小さな声で呟いた。続きがあるのかと思ったらまた沈黙。
しがみついているほのかの身体をやんわりと抱きしめてくれたのがわかった。
嬉しいから、言ってみた。ほのかってば正直ものだから。

「だいすきだもん。」

期待しなかったけど答えはやっぱり無くて、静かな居間に時間がゆっくり流れた。

「・・・勝手にしろよ、もう・・」

大分経ってから、そう言ってくれた。「ウン!」と肯いてほっぺにちゅうした。
そしたら目を丸くして、顔が赤くなった。なっつんてやっぱり可愛いよ、ウン。
にっこり笑うとほっぺを抓られた。びっくりしたのと痛いのとでちょっとむかっ!

「痛いっ!なにすんの!?」
「お、お返しだ。お返し!」
「素直じゃなさすぎだよ、そんなの。お返しならちゅうすればいいじゃん。」
「だっ誰がそんなこと。オマエなんかそんで充分なんだよ!」
「もう〜できないからってさ。」
「できないんじゃなくて、しないんだっ!」
「そうかなぁ〜?まぁいいよ、いつかしてね?」
「いつかって・・・」
「お嫁になるちょっと前あたり?」
「・・・マジで嫁になる気なのか・・?」
「モチロンさ!」

ほのかが気合を入れて拳を握り締めると大きな溜息。なんか失礼だよね。
けどやっとご機嫌が直ったみたいだから、寛大なほのかは許してあげる。
一緒にオヤツ作ろうよと誘った。ちゃんと作って一緒に食べて、幸せ。

「やっぱり一緒だと楽しいね!?」

ほのかがそう言うと、フンと鼻を鳴らしたけれど、否定しなかったなっつん。
やっぱりほのかと一緒なんだね。確認してなんだか嬉しさが倍になった気がした。

”そうだ、心配性ななっつんのためにも、早めにお嫁に来ようかな!?”

でもそれは口に出さなかった。早く大きくなって美人になりたいな。
なっつんがどんなに困ったって、そのときはお嫁になりに来るからね。
勢いよく飛びついて、離さないんだ。きっとまた抱きしめてくれるよね。








・・おそらく早めにしてくれると思います。他の男に取られまいとして。(笑)