「なんかしたかな?」 


あれ、まただ。おっかしいなぁ・・?

このところ相棒のなっちがご機嫌斜めだ。
尋ねてみてもますますむすっとするばかり。
ときどき・・っていうかしょっちゅう睨むの。
感じ悪いよ。心当たりを探すけどわからない。

それになんか気がつくと近くてびっくりする。
ぶつかりそうな距離に振り向いたら居たりして。
体調も悪くないし睡眠もとれてるって言うし・・
やっぱりほのかがなんかしたかなぁ・?と思う。
理由を言わないってことは気付いて欲しいんだ。
だけどさっぱりわかんないから、ギブアップしてみた。

「ねぇ、ヒントちょうだい。」
「・・質問もクイズもしてないが?」
「ほのかを睨む理由だよ。」
「睨んでなんかない。気のせいだ。」
「睨んでるじゃないか!今だって。」
「・・睨んでない。」
「じーっと見てるっていうか・・」
「見たらマズイのか。」
「まずいって・・わかんないから気になるんだし。」
「気にはしてるんだな。」
「そりゃそうでしょ!?」

埒が明かない。なっちは認めないつもりだ。
確かにオセロもするしお出かけも渋らないし、
オヤツは最近新作も増えたりして充実してるし。
優しいし・・ウン、なんか以前より優しいかも。
それなのになんで!?なんで睨むの!?
謝るから教えてとお願いしてみても言わない。
強情だよ、マッタク。ほのかもさすがに参ってきた。
なんか・・睨まれてると妙にドキドキするんだもん。
こないだなんてさ、手!手が重なったときにね・・
どけてくれないの。動けなくなっちゃったんだ。
あれれ?って見上げるとなっちの顔がアップで。
驚いたよ。「なんか顔についてる?」って尋ねた。
そしたら「鼻がついてる」ってつままれたりした。
結局、動けないって怒ったら離してくれたけど。

そうそう締め技をかけたときもヘンだったんだ。
ちゃんと動脈から逸れないように上手に決めた。
苦しいかな?と思って外したら「ゆるい」だって。
悔しいんでえーいって頭を抱えて目元にちゅーした。
そしたら腕を掴まれてお膝の上に抱えられちゃってね。
「わぁ、抱っこだ!」ってはしゃいだらデコピンきた。
痛くて涙が出そうなくらいだったんだよ、ヒドイでしょ。
ヨシヨシしてっておねだりした。してはくれたけど・・
抱きしめられて息が詰まった。離してって猛抗議した。

「この頃キツイよ!苦しいってば、なっち!」
「そうかよ、スマンな。」
「怒ってるのはこっちなのに睨まないでよ。」
「目つき悪いんだよ。睨んでなんかない。」
「前はそんな風に見なかったじゃないか!?」
「・・・そうかもな。」
「あ、やっと認めた。見すぎでしょ、ほのかのこと。」
「うるせぇ・・見るくらいいいじゃねぇか・・なにも・・」
「なにも?」
「それ以上のことはしてないんだから怒るなよ。」
「それ以上って・・やっぱり何かほのかに言いたいんでしょ!?」
「・・・別に。」
「嘘吐いてもダメだよ。なっちの嘘この頃わかっちゃうんだから。」
「そんなことはわかるくせして・・・このオオボケ!」
「おっ・・ボケ!?」
「オマエが悪い。オレは絶対言わんからな!」
「なんだとー!?開きなおるんじゃありませんよ。」
「オレだってキツイし苦しいんだ。あいこじゃねぇか・・」
「!?・・悩みがあるなら言わないと。」
「・・・・」
「言ったら楽になるよ。」
「い・わ・ん!」
「この頑固ものー!」

むかむかしたからオセロで連敗させてやったの。フフン!いい気味だ。
なんだかケンカみたくなってその後ずっとツンツンしてた。
そしたら段々寂しくなった。どうしてケンカになったんだろう・・?
ほのかが悪いって・・どうして?ほのかなっちになんかした!?
きっとなにかしたんだ。だけどそれがわからない。胸が痛くなってきた。
ぼんやりしていたら・・・トイレの帰りに迷子になった・・・

まさか慣れたなっちの家の中で迷子とか・・恥ずかしすぎる。
広いお屋敷の中でまだ探検してないところがあっただろうか?
普段使う部屋ばかり行き来していたせいで忘れてしまったんだ。
うえ〜ん・・帰れないようと泣きべそになりかかったとき・・

「こんなとこで何してんだ!」
「あっなっち!迎えにきてくれたの!?」

嬉しくってなっちに飛びついた。「迷っちゃって帰れなくなったよう!」
そう言ったら「バカだろ」って言われたけどなっちは怒ってなかった。
抱きついたからかな、そのまま抱き上げてくれて居間まで戻った。
「お姫様抱っこだv」って喜んだ。けどなっちは黙ってそっぽ向いてた。

「・・ねぇ仲直りしよ?」
「いつケンカしたんだ。」
「え、さっき。違った?」
「オマエが怒ってただけだ。」
「なっちは怒ってなかった?」
「ああ。」
「えーっ・・寂しいなんて思ったのに。」
「少し・・拗ねてたことは・・認める。」
「すねてたの!?なんでまた。」
「オマエがあんまり・・・だからだよ。」
「あんまり・・なに?言ってよ、意地悪しないで。」
「意地悪じゃねぇ・・」
「・・ちょっとなっち顔近い!!」
「近づけてんだ。当たり前だろ!」
「近付きすぎだよ。」
「イヤなのかよ、そんなに。」
「イヤとかじゃなくて。くっついちゃいそうだから・・」

「ひゃっ!?」

驚いてヘンな声が出た。なっちがほのかのほっぺにちゅーしたんだ。
どっきりした〜!?あやや・・なんか顔が・あつぅい・・・

「ちゅーしたかったの?!なぁんだ!」
「なんだとはなんだ。」
「遠慮してたの?バカだねぇ。」
「バカで悪かったな。」

なっちはまた拗ねたみたいにぷいっと顔を背けた。
また胸の辺りがちくっと痛む。ほのかまちがえた・・?
ソファに乱暴に下ろされたと思ったら今度はなっちが部屋を出た。
おトイレかな?と思ったけど中々戻って来ない。迷子じゃないよね?
さすがになっちは迷子にならないだろうと思うけど・・・
一人でいるのがつまらなくて脚を無意味にぶらつかせた。
どこへ行ったんだろ。お腹でもこわしたとか?そんな風でもなかった。

不意に気になってさっきなっちがちゅーした頬を触ってみた。
思い出したらまた少し顔が熱い。なんでかあのとき体がかちってなった。
硬くなって息を止めた。キツク抱きしめられたときみたいだった。
どうしてかなぁ・・?なんで思い出しただけでドキドキするのかな。
早く戻って来ないかな・・また・・寂しくなっちゃったよ、なっちぃ・・
ほのかはそのまんま寝ちゃったらしい。目が覚めたらもう薄暗かった。
毛布が掛かっていたからなっちは戻ってきたんだ。ほっとしたのに
居間には自分一人寝かされていてなっちは居ない。とうとう涙が出た。

「なっちー!どこーっ!?ひとりにしないでようっ!!」

大きな声で叫んだら、ドアが開いた。なっちの顔が見れて嬉しかった。

「・・何子供みたいなこと言ってんだ!恥ずかしいヤツだな。」
「だってなっちが悪い!ほのかのことほっといてどこ行ってたの!?」
「どこって・・台所片付けて戻ったらオマエが寝てたから・・」
「なんで黙って出てくの!ダメだよっ」
「黙ってって、そんなに長くなかったぞ。寝てる間は仕事してたんだが。」
「とにかくほのかを寂しがらせちゃダメなの!わかった!?」
「わかったよ・・何歳児だオマエは・・ったく・・」
「罰として抱っこしてちゅーするの!早くきてっ!」
「なんだとぅ・・!?」
「すーるーのっ!」
「オマエ・・一歳児くらいに退行してないか・・?」
「いいの。なっちのばか。キライ。」
「ほら、泣くな。」

なっちは近付くと本当に子供を掬いあげるようにほのかを抱き上げた。
首にしがみついて甘えた。・・赤ちゃんみたいだって自分でもそう思う。
わがままついでに文句を言った。「なっちがじろじろ見るから悪いの。」
「ええ?」
「睨むみたいにじーって・・ドキドキして落ち着かないよ。」
「・・・そんくらいはしろってんだよ。」
「イヤだ!ドキドキして苦しいもん。居ないともっとダメ、寂しい。」
「そうかよ・・しょうがねぇなぁ・・傍にいるから。」
「ウン、傍に居てね。」
「・・キスは?どこにすればいいんだ。」
「どこでもいいよ、なっちの好きなとこで。」
「ふぅん・・どこでも・・・ここでも?」
「っ!」

なっちの唇とほのかの唇が触れた。ふっとすぐに離れたけど。
ほのかはまた固まっていたらしくて、なっちが眉を顰めてる。

「おっおい!ちょっと触っただけだ。そんな固まるなよ!?」
「あ!あぁ・・びっくりしたあ・・!」
「驚いたのはこっちだ・・ふーっ・・」
「ねぇ、なっち。今のは子供にはしない場所じゃない?」
「・・オマエだと子供と一緒だから・・やっぱまずかったか;」
「子供と一緒ってどういうこと!?ほのか子供じゃないよ!?」
「だったらもうちょっとわかれよ、色々。」
「色々って?」
「オレのこと好きか?ともだちじゃなくて。」
「好きだよ。なっちは?」
「好きだ。子供じゃないなら意味わかるな?」
「・・・・ウン。」
「えらく間が空いたぞ。」
「ゴメン・・よくわかんない。」
「はぁ〜〜〜〜〜っ・・わかった。ゆっくりいこう、な。」
「なにを!?どうして?なんでほのかバカにされてるのっ!?」
「ごねるな!オレが悪かった。もうちょっと待つから。」
「イヤ!待たなくていい。ほのか子供じゃなーいっ!!」
「泣くなよ!してることは限りなく子供じゃねーかっ!」
「なっちがバカにしたあ〜!うえええっ・・・」
「泣くな!大人なら。」
「むぐ・・泣いてない。泣いてないよ、ほら。」
「・・・ぷっ・・」
「笑うなあああっ!!!」

どうもなっちはほのかをお子さまだと思ってるらしいんだ。
やっとわかった。なんて失礼なんだろ!ユルセナイよっ。
だから今度から大人のちゅーをしてもらうの。ゼッタイだよ。
無理やり約束してやったんだ。なっちは困ってたけど。
「オレはいいけどオマエ泣くなよ?」ってまだ疑うんだから。
「泣かないよ!なっちのカノジョになるんだから。」って言ったら
「・・そこは了解してるんだな?・・ややこしいヤツ。」だって。
ほのかはなんにもしてなかったとわかった。やれやれほっとした。

ただ”大人のちゅー”は思ってたのと違ってやっぱりちょびっと泣いたんだ。
だけど悔しいから「泣いてないよ?」って澄ました。なっちは笑いを堪えて
「ウン、大人だな。」と言って髪を撫でてくれたの。・・子供扱いっぽい?
だけど嬉しそうに笑ってたからカンベンしてあげるの。ほのかって大人だね!







えーと・・・ガンバレ、なっつん!的なものを書きたくて。
バカバカしいお話でごめんなさい。バカなコほどカワイイんです!><