My little darling


私のことわがままだっていう。いうこと聞けって、エラソウに。
なんでオマエは思うようにならないんだって怒る。そんなの当たり前だよ。
私はアナタの思うようになんてしてあげない。わがままでいい。

だって、知ってる。怒るけど、そんな私を許してる。
カワイイとさえ思ってくれてる。ときどき零れてるよ?知らないの!?
だからどんどんわがままいう。もっともっとスキになってほしいから。
私だけが思うようにならないっていって。誰よりもって。威張っていいから。
憎たらしいって髪を撫でて。腹が立つって抱きしめて。ぎゅうっと強く。
お仕置きだっていって私を独り占めして。離さないでくれていい。


「新白の人たちと会うの楽しみー!久しぶりだー。」
「頼むから余計なこと言うなよ?」
「しつこいなぁ?!言わないよ。」
「・・はぁ・・なんで今日なんだかな。」
「怒るのはこっちだよ、ブッキング!!」
「あっちが急に振ってきたんだ!オレは連れて行きたかないってのに・・」
「ヤダ!ついてくもん。ほのかのが先だったんだからね!?」
「脚に噛り付いてないだけマシだと思っとく・・」
「懐かしいね!?噛り付いてほしい?」
「今のオマエをあんな風に引きずってたら通報されるっての。」
「そう?ほのかおっきくなったもんねぇ!?」
「4センチだけな。」
「スゴイじゃないか!自分と比べないでよ。」
「あー、すごいすごい・・参ったな。」
「ものすごく気分悪くしたじょ・・・」

みんな元気そうで、あんまり変わってなかった。嬉しい。
大きくなったと言ってもらえた。ホラごらんよ、やっぱしね。
けどそのときなっつんはニイジマ会長と離れたとこで話してた。
ツマンナイ。ほのかが褒められたとき居てくれないなんて。

「ほのか、やつってさ、二人っきりのときと感じ変わるのか?」

ふと隣にいたキサラたんが私の耳元に声を潜めてそうきいた。

「え、なっつん?・・ウウン、別に変わんないと思うけど。」
「なんだ・・アイツしょうもないなぁ!?」
「ウッキーはキサラたんと二人だと変わるの?」
「ええっ!?・・別に・・あのまんまさ。」
「ふーん・・優しそうだよね、ウッキー。」
「優しいだけの男じゃ・・ツマンナイよな。」
「ウンウン、そうだよね!?」

「あーっそこ女同士でなにこそこそしてんの〜!?」
「うっさいよ、あっち行け。女だけの話なんだから。」

キサラたんにいわれて、武田のイッちゃんは肩をすくめた。
その向こうでウッキーが何かショックを受けたようにして慰めてもらってる。

「相変わらず仲良しだね、あの二人。」
「ああ、あいつらだってよく男同士の話って邪魔にしやがるからいい気味さ。」
「それもわかる!悔しいよね、お兄ちゃんもなっつんもそんなこというよ!?」
「だから女は女同士、内緒にしてやろうな。」
「らじゃっ!!」

ほのかはキサラたんすきだ。それと要ちゃんも。すごく優しくてステキなの。
あんまりステキだから、帰ってからなっつんにたーくさん褒めたことがある。
そしたらなっつんは・・・むすっとしちゃって・・タイヘンだったのだよ。

「優しくてステキなそっちへ遊びに行けよ、オレはせいせいする。」
「なんでそんなこというのさ!?ほのかここがいい。どこへもいかないからねっ!?」
「フンッ・・」

なんなんだろうね?! ”大人気ない”っていうやつかな?わかんないけど。
キサラたんはもうちょっと近い感じ。お姉さんなんだけど、可愛い。
なっつんは「そうかぁ?」ってあまりわかってくれない。そういえば・・
たいていの男の子が好きだと思うムチプリになっつんはあまり興味なさげ。
お兄ちゃんのダイスキな美羽のこと、スキ?ってきいてみたことあるけど、

「別に。」
「なんで?」
「なんでと言われても・・」
「うーん・・じゃあねぇ、ほのかのお母さんは!?美人でしょ!?」
「あぁ、そうだな。けど、だから?何が知りたいんだ、それ?」
「特になんにも感じないの?」
「オマエは?いっつもオレにきいてるが、どうなんだよ。」
「ほのか?え〜っと・・お兄ちゃんが世界で一番かっこいいと思う。」
「・・・・そうだったな。バカなこときいたぜ。・・兄キの他は?!」
「きずぽんは可愛いし、おいちゃんはすけべだし、秋雨は物知りで隼人は頼もしいの。」
「最後のってあの・・オマエって怖ろしい奴だな!?呼び捨てかよ!」
「あっそれにアパチャイ!アパチャイはダイスキ。すごく優しくってさぁ・・」
「・・・・あいつっていっつもオマエのこと背負ったりしてるよな。」
「ウン。それにオセロはいつでも付き合ってくれるし、何いってもにこにこしてて・・」
「・・オレとは大違いだな。」
「なっつん?」

あっまただ。なっつんが怒っちゃった・・ほのかのわがままいうときとは違う。
ほのかが誰か他の人のこと褒めたりスキっていったときはホントに怒ってるみたい。
なんでだろう、なっつんのことが一番スキだけど、それじゃあダメなのかな・・?
いつもみたいに甘えても、引っ張っても冷たくなっちゃう。すごく・・寂しくなる。

「ねぇねぇ・・こっち向いてよ。なんで・・?」

口利いてくれない。どうしたらいいんだろう?なんだか悲しくなってきた・・
じんわりと涙が滲んできたとき、なっつんがようやくほのかを見てくれた。
けど顔は曇ったまま。眉間に皺まで寄せて、「このヒキョウものめ・・」と呟いた。

「失礼な!ほのかはヒキョウものじゃないよっ!」
「泣き落としって女の常套手段だろ!?ったくそんなの・・」
「ちょっと待って!それって女の人にたくさん泣かれてるってこと!?」
「何言ってんだ。知るか、他の女が泣こうがわめこうがどうでもいい。」
「一体どんだけ泣かせたのだね!?なっつんのひとでなし!ほのか見損なったよ!」
「よくもそんな・・言っとくが泣かせたことなんかない!・・オマエ以外は。」

なっつんはものすごい剣幕で怒鳴った。耳が痛いくらい。なんだ・・違うのか。

「なっつんが誤解を与えたんだもん。ほのか悪くないよ!」
「イライラさせやがる・・オマエだけだ、こんなにオレをイラつかせるのは。」
「ほのかだけだったらいいよ。なんだ・・よかった・・誤解で・・」
「よっ・・よかったら泣くなよ!オレだってなんも悪くないぞ!?」
「なっつんが悪い。ほのかを誤解させたから。」
「オマエが勝手にしたんだ。オレはオマエ以外は・・って何回言わせる・・」

なっつんはようやく気付いたみたいにはっとした後、顔を赤くしてきまずそうだった。
ちょっと油断したみたいなそんな顔がカワイイと思う。いってあげたいけど・・
ほのかならカワイイといってもらえたら嬉しいのに、なっつんはそうじゃないらしい。
前に怒られたことがある。男は可愛くても仕方ないって。・・どうしてだろう?

まださっきの悲しさで涙は留まったままだったから、両手を差し出した。
なっつんは表情で”なんだ?”とほのかにきいた。もう一度両手を伸ばす。
やっとわかったみたいで、ふぅ、と小さな溜息を洩らしたけれど抱っこしてくれた。

「・・ヨシヨシして。」
「ったく・・何様だよ。」
「いいの!ほのかは特別なの!!」
「わがまま・・言いやがって。」

ああ、これは・・いいんだ。怒ってない。よかった。御機嫌直ったんだ。
寂しかったからその分甘えるの。いいの、だってなっつんはほのかのだから。
私だけを許して。私だけに呆れて。私だけを抱きしめてて。でないとダメ。
でないと死にそうになる。どうしようもないんだもの。縋りついて頬にキスした。

「・・なにすんだよ・・!」
「いいんだもん、ほのかの好きにするんだよ。」
「オマエ、オレのこと好きにしたいんだ?」
「ウン。そんでなっつんも好きにしてほしい、ほのかのこと。」

ほのかは眼を見つめて真直ぐにいった。そしたらなっつんはまた真っ赤。
なんてカワイイんだろ。だけど実はほのか怒ってるの。だからプイって顔を背けた。

「だけど今はなんか悔しいからなっつんからキスしてくれなくていいからねっ!」
「あのなぁ・・結局好き勝手してんのってオマエだけじゃないか?」
「べーっ!なっつんが悪いんだい。ほのかの一番スキな人って誰!?いってごらん!」
「えっらそうに・・オレだろ!?」
「ちっともわかってないみたいじゃないか、さっきだって。」
「・・オレの好きにしていいんだろ?だったら・・妬くくらい・・カンベンしろよ・・」

なっつんは横向いたほのかの耳元に囁いた。小さな声で内緒話みたいにして。
チラっとみたら、困ってた。もうなんにも寂しくない。嬉しくて泣きそうになる。
いいよ、許してあげる。許してくれるから。ほのかのことダイスキって思ってくれるなら。

「じゃあね、キスしていいよ。」って、横向いたまま怒った声でいってみた。

そしたら優しい手がほのかのあごをそっと引き寄せる。吸い寄せられる。眼と眼が合う。
・・ねぇ、カワイイって思ってくれる?私もいっぱい思ってるよ、だから・・・
キスの後、嬉しくって泣いちゃっても・・・ゆるしてね?








あまっ・・・4度目の書き直しで最高糖度に達しました。