「文句あんのか!?」 


「アイツ・・またかよ!」
オレは出かけた先でまたふらふらといなくなったヤツに毒づいた。
いったい幾つになったらアイツは落ち着くんだろうな?と思う。
もしかしたらこの先もずっと・・・と想像しかけて首を振った。


オレはもう随分長いことアイツの保護者みたいな立場なんだが、
最近は少し事情が変わっている。「変ってない」とか言う意見もあるが。
オレとしてはかなりの変化な訳だ。アイツは「妹」ではなくなったわけで。
しかし困ったことに「変ってない」部分というのも認めざるを得ない。
昔っからひょこひょこふらふらしたヤツでオレに心配かける処とか。
心当たりを思い浮かべて足を向けると案の定な場所で見つかった。
でもって、相変わらずなことに引っかかってやがる、どうしてやろうか!


「う〜む、やっぱりカワイイじょ・・」
「ねぇ、さっきから見てるけど、コレ欲しいんだ?取ってあげようか?」
「へっ?!・・誰だい?いいよ、取ってくれなくて。」
「俺コレ取るの得意なんだ。取ってやるよ、遠慮しなくていいからさ?」
「遠慮なんかしてないじょ。いいってば。」
UFOキャッチには時々すんごくカワイイのが見つかったりするよね。
だからほのかは見つけると必ずチェックしに行くってのが決まりなのだ。
なっつんがずんずん行っちゃったことに気付かなかったのは失敗だったけども。
何度かの経験上、なっつんはほのかを絶対見つけにきてくれるからじっとしてた。
下手にうろうろするよりその方がいいってのも経験上の知恵なのさ。
だからさっき通り過ぎかけたUFOキャッチの前で待ってることにしたの。
そしたら高校生くらいの男の子が寄って来てこうなったわけなんだけど。
ほのかが止めたのにその子は勝手にお金入れてぬいぐるみをゲットしちゃった。
「ホラ、一発だったろ!?やるよ、これ。」
目の前にぬいぐるみを差し出されてほのかは困った。
「でもさ・・・知らない人からもらえないよ。」
「えー?ナニそれ。いいじゃん。そんなの黙っとけば。」
「や、それに取って欲しいなんて言わなかったでしょ?」
「カワイイ子が欲しがってたら取ってやんなきゃ男じゃないって!」
「・・困るんだよぅ・・どうしようかなぁ・・」

困っていたら目の前でぬいぐるみがふわって浮いたからびっくりした。
男の子も目を丸くしてた。それはなっつんが取り上げたからだったんだけど。
黙ったまま現れたなっつんはそのぬいぐるみをポイっと男の子に投げて返した。

「いらんっつってるだろ。返すぞ。」
「なっつん!よかったぁ、見つけてくれた。」
「よかったじゃねーよ!・・ったくオマエは・・」
「あの・・えっと・・?」
「行くぞ。ホラ!」

なっつんが腕をくいっと示したのでつい習性でその腕に手を伸ばした。
いつもはほのかの方からしがみつくんだけど、なんか嬉しい。
ぽかんとしていた男の子にはちょびっと悪い気がしたけど、
「あ、あの、せっかく取ってくれたのにゴメンね?ばいばいっ!」

なっつんの腕に捉まりながらふと思い出して「あ、あのぬいぐるみ!」
「何だよ?いらんつってただろ?」
「なっつんに取ってもらおうと思ってたんだよ。戻って、なっつん。」
「・・・今日は取ってやらん。我慢しろ。」
「え〜?!いっつも取ってくれるのに、なんでぇ?」
「オマエな・・人に探させておいて、何だその態度は。」
「あ、そりは・・・悪かったね。ごめんよ?」
「ちっとも反省してねぇな・・」
「そんなことないよ。見つけてくれて嬉しかったのだ、ありがとう!」
「・・・まったく・・」
なっつんはまだ不満そうだったけど許してくれたみたい。ヨカッタヨカッタ。
しがみついた腕に頬を寄せるとなっつんはいつもみたいに止めろと言わない。
「今日はいいの?」
「何がだ?」
「ほのかがお外で引っ付くといつもは嫌がるでしょ?」
「・・・まぁな。」
「えへへ、嬉しいけども複雑なのだ。」
「複雑?・・嫌がって欲しいのか?」
「ううん。そうじゃなくって、なっつんが照れるトコ結構好きだから〜・・」
ぽかりと叩かれた。でもこのいつものなっつんが好きなんだよね。
「何笑ってんだ、怒ってんのに。」
「嬉しいんだもん。」
「そんなにオレを怒らせたいってのか?」
「怒ってんの?もう怒ってないじゃん。」
「オマエむかつく!」
「ぷぷ・・むかつかれちゃった。」
「馬鹿にしてんのか、オマエ。マジで怒るぞ。」
「怒らないで。なっつん大好き!」
「ちっとも嬉しかねぇ。」
「嘘じゃないよ?ホントにホント。」
「ふん、そいつはどーも。」
「やだねぇ、この子は。駄々っ子みたいに。」
「・・・怒った。オマエ今日のおやつ抜き!」
「なななんと!?それはないよ、あんまりだよ・・!」
「でもってオマエの分オレが食ってやる。」
「ぬわー!!ヒドイ、それは酷すぎる!!なっつん許してぇ!?」
「ふん。許さん!いつもいつも馬鹿にしやがって。」
「えぇ〜・・・そんなぁ。なっつん、ごめんだよぅ!」
「許して欲しいか?」
「ウン。なっつんサマ、お許しください。」
「・・・そうだな、許してやらんこともないが・・」
「なんでもします。・・嫌なこと以外。」
「なんでもじゃねぇじゃねーか、それ。」
「やはは・・だって、できないこともあるじゃないか。」
「例えば?」
「うーんと・・なっつんをキライになれとか。」
「他には?」
「ほか?・・えっとぉ・・なんだろ?おべんきょ・・とと。」
「そうか、じゃあそれでいこう。」
「今のなしだよ!違うよ、お勉強大好きだから、ほのか。」
「今日は帰ったら、お勉強しようね、ほのかちゃん?」
「うげ・・そのなっつんもヤダ・・」
「じゃあこの『僕が』お勉強みてあげるね。さ、早く帰ろうか?」
「う・・嫌だぁ・・・なんかむずむずしてくるんだけど・・?」
「それはよかった。じゃあ帰るよ。ちゃんとできたらおやつあげるからね?」
「ふぇ・・・ううう・・なんてヒドイ・・なっつんてばほのかのことキライになったのかい?」
「そんなことないよ。だけど・・たまには言うこと聞けってんだよ、この莫迦。」
「おおおおっこっちのなっつんがいい。いつものなっつんにして?お願いだよおお!」
「しょうがねぇな。オレも疲れるから勘弁しといてやるか。」
「はーっ・・ヨカッタ。ほのかもうどうなることかと思ったよ。」
「課題はするからな。」
「ぎょえっ!・・・まじで?」
「当たり前だ。確かあるって言ってただろ。」
「よく覚えてるなぁ・・あ、そだ!カワイイ子の願いは叶えないと男じゃないんだよ!?」
「ふーん・・あのナンパ野郎が言ってたのか?」
「う・・なっつん、ほのかのことカワイクない?」
「どうだろうなぁ・・」
「えぇっ!カワイクないの!?・・・そんでも・・好きでしょ・・?」
「聞き分けのないヤツはどうだかなぁ?」
「ふぇ・・なっつん〜!?」
「ふっ・・オマエ本気で心配してんのか?」
「だってぇ・・最近なっつん意地悪だもん。もしかしてと思って・・」
「ばぁか。」
なっつんが笑ってくれたからほっとして抱きついた。
「コラッ!」って言ってるけど安心したら涙が出た。
「なっつん、意地悪でもいいから。好きだからね?」
「・・・オマエ泣くことないだろ、オレは嫌いなんて言ってねぇし。」
「そっか・・よかったぁ!」
「わかったら、離せよ。まだウチに戻ってねぇってのに。」
「じゃあお家に着いたらもいっかいなっつんに抱っこしてもらう。」
「・・・」
「そんでもってほのかのこと好きって言ってもらうのだ。」
「言わねぇよ!」
「なんでっ!?言ってよ、たまには。」
「・・・言わなくていいんだよ、そういうのは・・」
「言ってくれたっていいじゃんかぁ・・」
「とにかく帰るまで待て。ここどこだと思ってんだよ?」


しがみつくほのかを引きずるように帰ったが・・疲れた。気疲れってヤツだ。
いつものことと言うと情けないんだが・・・ほのかが勝つのが常になってる。
どうにもこうにも・・泣き落としとかズルイ手も使いやがるしな・・・
結局勝てないって状況はやはりこの先も続くのかもしれない。
溜息の一つくらいは吐いても仕方のないことだよな、こういう場合。
惚れた弱みだなんて言葉で片付けて欲しくないんだが、もうこの際どうでもいい。
一番困るのはどんなに困らせられても無茶を言われようとも
少しも嫌じゃないってことか・・・はぁ・・・どうしようもねぇなぁ・・
・・・けど仕方ねぇだろ、カワイイもんはカワイイんだよ!
・・・そんなこと絶対に言わないけどな。言ってたまるかってんだよ!






まだ恋人なりたての頃ですが、「甘々」だったかな・・?(汗)
この話は背景の絵を描いてるとき思いついたのです。(^^)
全体にはほのぼのに書いたつもりなのでコチラに。お許しください。