「見つけた」 


私は普段それほどドジじゃないし、
わりと身体も丈夫だと思ってるし、
自慢じゃないけど風邪もめったに引かない。
なっつんは色々と心配してくれるけど。
きっと妹さんが病弱だったからだと思う。
とても妹思いで良いお兄ちゃんだったんだろうな。
私のこと妹みたいに思ってくれてるんだ。
そのことを不満に思ってたわけじゃないのに
何でかな、この頃「違うのに」って思う。
お兄ちゃんなら一人居るけどなっつんとは全然違う。
心配されて嬉しいのに嬉しくないなんて変なの!
妹さんと間違えられるときもちょっと寂しい。
なっつんは私に「妹」で居て欲しいのかもしれない。
そう考えるとどうしてだかわからないけど悲しくて。


「いたた・・・」
「どうした?目に何か入ったのか?」
「うん・・そうみたい・・」
掃除をしていたら突然痛みで目が開けられなくなった。
涙が出れば流れ落ちるかもしれないのに涙が出ない。
それでも痛くて目の辺りがじんじんして辛い。
「目薬取ってきてやるからちょっと待ってろ。」
「んー・・涙出そうだからいいよ、なっつん。」
「辛そうだぞ?ちょっと見せてみろ。」
「目開けられないから見せらんないし。」
目を閉じてたからなっつんに両頬を挟んで上向かされて驚いた。
「なっつん、痛いよ・・」
「どっちの目だ、開けられないか?」
涙がじんわりと湧いてきたので少し目を開けることができた。
ぼやけた視界になっつんの心配そうな顔が映る。
そんなに真剣に心配しなくてもいいのにって思う。
「睫」
「え・・?」
「睫が入ってる。取るぞ。」
「え?!」
一瞬でよくわからなかった。瞬きしたときには痛みは消えてた。
「わ、すごい、治った?!」
「結構長いな。」
なっつんの指先にあるのが取ってくれたものらしい。
「それ、指で取ったの?痛くなかったけど・・」
「ああ、妹のも取ってやったことがある。舌で。」
「ええっ!?そうなの!わかんなかった。」
「ふっ、同じこと言ってら。」
私はまた妹さんのことを思い出させたみたいで。
懐かしそうな顔が優しそうなのに何故か胸がつんと痛んだ。
なっつんはさっき妹さんを見ていたのだろうか、私じゃなくて。
悲しい顔をされるよりずっといいと思うのにどうしたんだろう?私。
こんなんじゃ妹さんにもなっつんにも申し訳ないような気がした。
自分が情けない気持になったら少しまた涙が浮かんできた。
どうしてこんなに心の狭いこと考えてるんだろう。
いいじゃないか、なっつんが妹さんのこと思い出したってさ。
俯いて涙を堪えていたらなっつんが気付いてしまった。
「どうした、まだ痛むのか?」
「・・・う、ううん、もう平気。ありがと、なっつん。」
無理やり笑おうとしたら涙がぽろりと零れ落ちてしまった。
「あ、あれ?涙残ってたみたい。もう痛くないのにね!?」
なっつんは何も言わずにまた私の顔を両手で持ち上げた。
私を覗き込む瞳と私の瞳が合う。反らせないことに困った。
醜い自分の心まで見られてしまいそうで目を閉じてしまいたかった。
綺麗ななっつんの瞳がまるで私を責めるみたいで辛いのに。
「何泣いてるんだ?」
「な、泣いてないよ。もう」
なんだか理由を目の中に見つけられたかと思って焦った。
「嘘吐くな、泣いてただろ?」
「うん・・・でももう大丈夫だよ・・」
「オレのしたことが嫌だったのか?それとも・・」
「嫌じゃないよ。違うの・・えっと・・その・」
なっつんの前では何もかも見透かされそうな気がした。
けれど嫌な子だと思われたくなくて私はまた泣きそうになった。
「なっつんの・・妹じゃないよね、ほのか。」
自分でも恥ずかしいような気弱な声がぽつりと零れた。
じっと私を見つめる瞳が少しだけ動いた。
「思い出すといっても、おまえは妹じゃない。」
「・・・うん、そっか・・よかった。」
私はそう言ってもらえてほっとしてしまった。
馬鹿だなぁって自分のことが可笑しくなった。
私はなっつんに見つめられてわかってしまった。
なっつんが妹さんを思うのが嫌なんじゃなかったんだ。
「妹だったら・・困るだろ」
「・・?・・困るの?」
「まぁ、色々と・・」
よくわからなくて私は眼を丸くするしかできなかった。
だってずっと顔を大きな手に包まれていて動けないから。
「ほのかも、なっつんの妹じゃなくてよかった。」
「そうか?」
「うん、そうだね、やっぱり困っちゃう。」
「そうだろ?」
私はやっと笑顔を浮かべることができた。
なっつんも笑ってくれてすごく嬉しい。
「ね、なっつん・・・どうして離してくれないの?」
「離して欲しいか?」
「・・ううん・・でももっと傍に行きたい。」
「わがままだな。」
「うん、妹じゃないもん。」
「もっとわがまま言っていいぜ?」
「妹じゃないから?」
「ああ・・」
「じゃあ・・」
どうしてもらおうかなって言おうとしたんだけど言えなかった。



「・・ね、塞いじゃったらわがままも何も言えないじゃない?」
「いいんだ、兄じゃないからわがままでも。」
「!?・・うん、わがままきいてあげる!」


私はいつの間にか妹を卒業していたらしくて。
嬉しかった。やっぱり見つかっちゃったんだね。
私も見つけたの、とても大切なことを。







さー、皆さんご一緒に!「こーの、馬○っぷるー!!」
暑い夏にあっつい夏ほの、大丈夫ですか、皆さん!
管理人最近の暑さで脳が疲労してますので歯止めがききません。
ですので熱さ暴走気味かもしれませんが、突っ走ります。