「負けたくない」 


ほのかはかなりのブラコンだ。
いつだって兄キが一番だと思ってる。
「お兄ちゃんがね」「お兄ちゃんってばさ」「お兄ちゃんたら」
言葉の端はしに顔を出すのは兄キのことだ。
オレの言うことには聞く耳を持たないくせしやがって、
あの馬鹿兄の言うことならあっさりと聞きやがる。
面白くない。何せあの白浜兼一だ、面白い訳がない。
アイツとのリターンマッチはまだ実現してはいない。
だがあの初戦の雪辱は絶対に晴らすと誓っている。
あのときほのかが「負けないで」と兄に叫けんだ言葉で
オレを縛り付けていた見えない糸は切れた。
妹と同じあの言葉は自身に言い聞かせてきた言葉だった。
ほのかが兄を想う気持ちはオレの妹と同じものだろう。
だから響いた、その想いに応えてやりたかった。
そのための選択と結果に関しては今も後悔はしていない。
ただ、白浜兼一が気に食わないということは変っていない。
そしてほのかにとって兄が一番だということも。
そのことは変わりようの無いことだとわかってはいる。
それでも気に食わない。そんなことですら負けたくない。


「なっつんってばっ!聞いてるのっ!?」
「あ?ああ、聞いてねぇ。」
「なんだとー?!」
「いつまで怒ってんだよ。うるせぇな。」
「どうしてオセロ勝負なんてしたの?!ほのかに負けた腹いせ?」
「別に学校でたまたま時間があったから・・あんなのただの暇つぶしだ。」
「お兄ちゃん凹んでたんだよ。『わりと自信あったのに』って・・」
「おまえと毎日対戦してたから強くなったんだ。仕方ねぇだろ?」
「とにかくお兄ちゃんをいじめるとほのか許さないんだからね!」
「虐めたわけじゃねぇ!このブラコンッ!実際にぶちのめしたわけでもねぇってのに。」
「まだ闘いたいって思ってるの!?それこそなんで!?友達なのに。」
「そこへは口を出すな。おまえには・・わからん。」
「わかりたくないよ・・・ほのか二人が争うのは全部やだ・・!」
「べたべた仲良くしろってか!?馬鹿馬鹿しい・・」
「そうじゃなくって・・そりゃ二人は『好敵手』ってヤツなんだろけどさ・・」
「おまえの大事な兄キがオレに負けるのが嫌だってことだろ?」
「なんか違う・・・・なっつんが負けるのもやだし。」
「嘘吐け。別におまえはアイツの兄なんだからそれでいいじゃねぇか。」
「そうだけど、なっつんだって・・」
「オレはおまえの兄キじゃねぇし、2番目に応援なんかされたかねぇ。」
「・・ほのかは順番なんて考えてないよ。どっちも大事だもん。」
「ったく・・おまえはさっさとその馬鹿兄キのことを慰めにでも行けよ。」
「・・・なんだかさっきからなっつん、いじけてるみたいだよ?」
「はぁっ!?何言ってんだ。」
「あのね・・・お兄ちゃんも同じようなこと言ってた。」
「何のことだ?」
「ほのかがあんまりなっつんの肩を持つのが悔しいんだって。」
「あ・・?」
「いつだってお兄ちゃんがほのかの一番だったはずなのにってさ。」
「・・・今だってそうじゃねぇか、アイツ何ほざいてんだ!?」
「どうして二人とも順番なんて気にするの?!ほのかどっちも好きだよ。」
「それがむかつくんだよっ!!」
「・・・うもー・・だからぁ、どっちも『一番』だってば!」
「そんな理屈で誤魔化されるかって!」
「誤魔化してるんじゃなくって・・・どう言えばいいのかなぁ・・?」
「ふん・・どうでもいい。さっさと馬鹿兄んとこ帰れ。馬鹿妹。」
「だって・・『好きなひと』と『お兄ちゃん』なんて順番つけられないよ・・」
「オレは別におまえがアイツを一番だと思ってるからっていじけてなんぞ・・って・・へ?!」
「じゃあどうしてむかつくのさ!?」
「そっそれは・・・オレそんなこと言ったか・・?ってかおまえさっき・・」
「言ったよ。もう〜!」
「だっ・だから、とにかく何でも・・アイツに負けたくないんだよ。」
「何も負けてないよ。なっつんが一番だってば。」
「そっ・・そんでもアイツと同列ってことだろ・・?」
「はぁ・・お兄ちゃんも頑固だけどなっつんもだねぇ・・・」
「アイツもオレに負けそうだと思ってやがるんだな。」
「ちなみに『簡単にほのかの一番は手離さない』だそうだよ。」
「やる気満々じゃねーか!・・・・やっぱむかつく。」
「・・・もうやめた。ほのかの言うこと二人とも全然聞かないし・・」
「む、なんだよ?だから口出すなって言ってんだ。おまえは。」
「やれやれ・・・なんだか一生かかりそうな気さえしてきたよ・・・」
「うっせぇ!これは男同士の問題なんだよっ。」
「あっそう!?ほのかどっちもキライ!なっつんなんかべーだ!!」
「さっきは・・反対だって言っただろ!?何拗ねてるんだ。」
「お兄ちゃんとなっつんでほのかのことお邪魔虫にするんだもん。だからキライッ!」
「なに言ってんだよ、元々おまえが・・」
「口出すなって言ったじゃん・・だからもう何も言わないよっ。」
「・・・どっちもキライって・・・なんだよそれ。」
「ぷん!なっつんのおばか。ドニブ。ほのかもう知らないもん。」
「・・・・あの馬鹿兄キのことまでキライなんて嘘だろ?・・おいっ・・」
「・・・・」
「ちょ・・アイツだってオレだってその・・なんだ、おまえのこと邪魔になんてしてねぇし・・」
「・・・・じゃあほのかの言うこと信じてくれる?」
「信じるも何も・・いつだってその・・言ってたじゃねーか・・嫌いじゃねぇって。」
「そんなこと言ってないもん。『好き』って言ってるんだよ。」
「そ、そうだろ。だから・・・そんでいいんだよ・・!」
「二人ともほのかのこと『好き』?」
「アイツがオマエを嫌うわけねぇだろ!?」
「じゃあなっつんは!?」
「や・その・・嫌ってなんか・・別に・・」
「むー・・・じゃあお兄ちゃんの方がほのかのこと想ってくれてるってことかい!?」
「アイツになんか負けてねぇってんだよっ!!!」
「・・・なんだ・・・そっか。ならいいよ、なっつん大好きv」
「・・・・・おまえ・・・ヒキョウな・・・」
「何が?」
「なんでもねぇ・・」
「まったく手間かかっちゃうよ、二人とも。」
「・・・なんか・・・やっぱむかつく・・!!」
「じゃね、ほのか特別サービスするから怒らないで。」
「?何を・・?」


「ちゅv」


「・・・おまえ、これ兄キにも同じことしてんのか?!」
「え?ダメ?」
「ダメだろ!!」
「ほっぺじゃんか。いいでしょ、こんくらい。」
「すんな。アイツは兄だろ、兄!」
「・・・じゃあお兄ちゃんにはどうすればいいの?」
「そうだな・・むー・・」
「・・・(そこ真剣に悩むとこなんだ・・?)」
「まぁ・・ここまでは譲ってやるとして・・」
「はぁ・・?」
「ここからは・・・オレだけってことで。」
「うん?・・・それどういう・・あ・・。」


全くブラコンなヤツめ。思い知ったか。
今回はこれくらいで勘弁しておいてやる。
だがこれで納得したってわけじゃないからな。
あの馬鹿兄キが『負け』を認めるまでは引き下がらねぇ。
絶対オレが『一番』だと認めさせてやる。
ほのかが『反則』だとかわめいてるが、構うか。
オレはなぁ・・・絶対に負けられないんだよっ!








・・・ギャグのつもりが・・怒られそうな内容に;(ブルブル・・)
あの、なっつんのイメージが・・・壊れかかってますです、すいません!
ちょっとその、「開き直った」彼が見たかったもんですから〜。
ちなみに背景の花(ビオラ)の花言葉は「私を想ってください」です。(笑)