「キスをして」 


偶然逢えたときってとっても嬉しいよね?
別れ際のはちょっと切なくて寂しいし。
不意打ちが好きなアナタだけど ワタシはね・・
軽くて優しいキスがスキ。挨拶よりナイショな感じ。
ふっと眼が合ったときも いいと思うよ。
にっこり笑って顔をアナタの高い背に向けて上げて。
”ホラホラ早く”って心の中で催促して
ちゃんと伝わってるのに意地悪するのよね?
”どうするかな”って顔に書いてあるよ。
ちょっと照れて周りに誰もいないのを確かめて、
ほんの少しワタシが思う通りのキスをくれる。
音もしないほんの一瞬の出来事。嬉しくてタマラナイ。


なんだかもうクセみたいになってるよなぁ?
せがまれるのが好きだなんて思いもしなかった。
オマエは軽く触れるのがとても気に入っていて、
それはそれでいいんだが・・・モノタリナイんだよ。
けど眼が合ったときは わりといいかもしれない。
笑顔で”早く”って催促が眼に飛び込んでくると
”どうしたもんかな”って思うんだ、いつも迷ってる。
期待を裏切ってもっと甘いのをお見舞いしてやりたくて。
仕方なく期待通りの軽い軽いキスをすると満足そうな顔。
その表情にほだされて結局少しばかりの不満を飲み込んでしまう。
どうにもアイツのペースになってる。悔しくてタマラナイ。


「えっへへ・・・」
「なんだよそのにやけ顔は・・」
「満足なのだもの。」
「フン・・」
「なんでそんなに不満そうなの?」
「別に・・」
「・・・なっつん欲求不満デスか?」
「誰が・・・」
「あのね・・今日はほのかちょびっと不満デス。」
「・・・・だから?」
「甘いのを一つください。」
「却下。」
「えっどうしてさ!?ほのかが欲求不満になっちゃう!」
「一つならしないほうがマシだ。」
「・・え〜・・・だってそうするとさぁ・・」
「やなんだろ?」
「・・・ほのかがもっと欲求不満になってしまう可能性大です。」
「!?・・・そんなら・・・いいんだな?」
「ウン。」
「途中でやーめた、とかは・・・」
「ワカリマシタほのか今日はギブアップしない!」
「ホントだな?!・・・なんかウソくせぇけど・・」
「ほのかはウソ吐きじゃないもん。」
「ヨシ、気が変わらないうちだな。」
「およっ!?なんだいなんで抱っこするの?」
「ここじゃあなんだし。」
「う・・まさか・・・」
「あのさ・・・まさかと思うんだけど・・まだ明るいし?」
「遠慮すんなよ。」
「シテマセン!」


やっぱりワタシは軽いキスが好き。でないのがイヤなんじゃなくて・・
離れられなくなっちゃうでしょお?・・・それはそれで幸せだけど。
なんとか作戦を練らなくちゃ・・おでかけが怪しくなってくる。
なんでもいうこと聞いてくれるけど、たまに・・・少しだけ強引なの。
困っちゃう。だって色々とね・・・恥ずかしいし。
どこまで許してしまうかどんどん自信がなくなってゆくから
小さな優しいキスをたくさんあげる。それでユルシテ?ってお願いなの。


甘ったるいキスをしてもなかなかそれ以上には進めない。
どうしてこう押しが弱いかなと頭を抱えたくなる。コイツにだけは・・
そりゃまぁ・・それはそれで・・・いいんだけどな。
意外に焦らすのが得意なんで悔しい反面、そこが楽しいともいえる。
何度も色んな手を考えるのも・・・・悪くないし。
泣かれたら・・・弱いしな。ほとんどアウトかもしれない
”ごめんね”なんてキスしてくるから・・・それでお手上げってワケさ。


優しいキスを覚えて、甘くて蕩けるのに夢中になって、
軽いキスがとても便利だと知った。色んな意味で使える。

優しいキスが好き。甘くてくらくらするキスもダイスキ。
だけど軽くて優しいキスがスキ。色んなときにして欲しい。


「なっつんご機嫌直った?」
「どうだかな・・」
「んー・・・これじゃダメ?」
「ほっぺじゃなぁ・・」
「だって・・唇はダメだよ・・」
「終わらなくなるから、だろ?」
「へへ・・当たり。」
「しょうがねぇ。帰ったら続きだ。」
「えっ!?そうなの?」
「リベンジだ。覚えとけ。」
「オセロで仕返すからいいよ。」
「むっ・・・それヒキョウじゃ・・」
「勝てばいいんだよ?」
「おう!勝つさ。」
「その意気だー!」
「・・バカにしやがって・・」
「してないよ。なっつん強くなったし。」
「絶対に勝つ!」
「負けナイもん!」


お出かけ間際までなっつんはオセロの本を睨んでた。面白いの。
「早く行こうよ」って引っ張ったら「ちょっと待て」とキスされた。
これはワタシの好きな軽いのだけど・・・なんだろう、ちょっと不満。

「なっつん」
「わかったわかった今・・!?」


「・・・どお?」
「なかなか・・」
「伝わった?」
「そんな感じ悪かったのか?さっきの・・」
「あんなのはほのかイヤ。」
「わーったよ・・わがままだな。」
「わがまま違う。なっつんが悪い。」
「ホラ、じゃあやり直し。」

邪険にしたつもりはないが、お嬢様はご機嫌を害したらしい。
どこまでもオレを独占しようとするところが・・・
そんな可愛いヤツの乱暴なキスのお返しに丁寧なキスをする。
漏れた吐息に安堵して「これでいいか?」とおうかがい。
「まぁいいよ」とあくまでも偉そうな態度とそれに反した紅い頬。

オマケのキスにいつもの笑顔が戻るとオレも釣られて微笑んだ。
ほのかも嬉しそうにしがみつくから柔らかい髪にもオマケした。










今年もこのバ○っぷるをヨロシクv