「Kissまでの距離」 


ほのかがまた変な顔して見てやがる
笑いそうになるがなんとかこらえる
オレは別に余裕があるってわけじゃない
初めて自分のなかで明確な意思に気付いたら
逆に触れることに臆病になってしまった
それ以前は多分なんとなくいけないような
妙な気はしつつも無意識に近付いていた
だからほのかが今そんな感じなのがわかる
近付いても初めのうちは何にも反応はなくて
そのうちふと気が付くようになると今度は
”なんだろう?”って不思議な顔をする
そして今度はぴくりと驚く顔を見せた
そのうち驚いた後で頬を染めることを覚えた
その瞬間を忘れない 桜色の花が咲くみたいだった
けどすぐに視線を反らした 気まずそうに
オレは別に落胆するわけでもなく ただ
わずかずつの変化がくすぐったくて可笑しかった
堪えきれないようなときも何度かあったが
結局できなかったのは色々と事情も手伝ったから
遠ざけようにもその頃はもう無理だと自覚していた
何故気付かないんだろうと焦るような気持ちと
このまま気付かないで欲しいと願う気持ちに揺れたり
今はそのどちらでもない 少しずつの変化を見るのが楽しい
おまえからもオレをよく見つめるようになったよな
嬉しいような怖いような複雑な気分だった
”なんて眼で見てるんだよっ”って突っ込みそうになる
オレもあんな風にほのかを見てるのかもしれないと思った
手がおずおずとオレの服を掴んで離さなかったり
ゆっくりとオレとの間合いを縮めようとしたり
ぼんやりと遠くから見つめてみたりと一々わかり易い
だからずっと眺めていたいような気になってくるんだ

なぁ、どうして欲しい?
あれこれ悩むよ おまえ見てると
ふいに抱き寄せれば怯える仕草
不意打ちに戸惑う大きな瞳
難しいもんなんだな 知らなかったよ
今日も無意識におまえが誘ってくる
オレが気付いてることを知らない
触れるのは簡単なことなのに
確かめるのがこれほど難しいなんてな

一歩踏み出すためにはかなりの勇気が必要で



「・・何見てんだよ?」
「へっ!?・・ほのか見てた?」
「熱でもあんのか、ぼうっとして。」
「あわっ!なな・・なっつん!」
「熱は無いな。」
「ないよっ!突然触ったりしないでよね!」
「何で?」
「びっくりするからさ。」
「赤い顔してるから熱でもあるのかと思うだろ。」
「ナイナイ。なっつんが触ったりするからでしょ!」
「オレに触られて?へー・・」
「気安く触っちゃダメなのだよ、女の子には。」
「まぁ普通触らねーけど。」
「ホント?なっつんモテルんだよ・・ねぇ?」
「気安く触ってくる奴たまに居るが、めったに触らせねぇもん。うぜぇ。」
「ムゴイこと言うなぁ!・・ね、女の子にもてたら嬉しいんじゃないの?」
「別に。面倒くさい。」
「ふ、ふ〜ん・・あり?でもなっつんほのかが触っても怒らないじゃん!?」
「何を今更なこと言ってんだ?おまえはもう・・諦めてるっつうか・・」
「む・・嬉しくないじょ。嫌なのを我慢してたってことかい?!」
「もう慣れた。」
「むかーっ!感じ悪いなぁ。」
「オレに触るなとか言っておいて?」
「突然だとびっくりするからって言ったの!ダメとか言ってないよ?!」
「ふーん、じゃあ触るぞっつって触ればいいのか?」
「う・うん・・なんか触るって言い方やらしくない?」
「やらしいこと考えるからだろ?」
「やっ!?・・ほのかそんなこと考えてないもん!」
「そうか。」
「そおだよ!んもー・・」
「ぷぷ・・怒るなよ、気の短いやつだな。」
「なっつんてば最近意地悪じゃない?ほのかのこと嫌いになったの?!」
「オレは嫌いな奴なんか触らねぇ。」
「!!そ、そっか・・あ、あれ・・なんか近くない?なっつん。」
「やっぱ赤いぞ、顔。」
「気のせいだよ!赤くなんかないもん。」
「おまえ、なんかして欲しいのか?」
「えっ!?なんかって何!?変なこと言わないでよ・・」
「ますます赤いぞ?」
「なっつんが変なんだもん。なんかどきどきして・・うー、やだもう!」
「変なのはおまえだろ?」
「う・やっぱり・・ほのか変?なんでかなぁ?・・」
「ほのか」
「は・はいっ?!何?なんでそんな真面目な声出すのさ、急に!」
「そこ、顔に何か付いてる。」
「え?どこどこ?!」
「そこ。」
「??わかんない・・取って、なっつん。」
「いいのか?」
「いいよ?」
「じゃあ目瞑っとけ。」
「何で?!ま、まさか虫さん・みたいな・・?」
「じっとしてろよ・・」
「う、うん。なっつん・・・コワイよー、早くぅ・・」
「おまえってやっぱ単純な奴だな・・」
「?早くってば。なっつん何してんの!?」
「目、開けてみろよ。」
「取れた?!」

オレはちょっと距離を縮めてみたが間合いってのは難しい
でっかい目がオレの姿を映すと更にでかくなって笑える
一気に固まっちまって 何見てるんだか・・

「ほーのーか、どうした?」
「!?!?ななな・・なっつん?ちちち・近い・近いってば顔!」
「虫なんていねぇよ。心配すんな。」
「そ・そうなの!?はーっ・・びっくりしたぁ;」
「何にそんなに驚いてんだよ。」
「なっつんにだよ!何でこんな近いのっ!?」
「近づけたからだ。」
「!?・・・なんで・・?近すぎてこれじゃ・・」
「これじゃあ?」
「あ、危うく顔がその・・ひっついちゃうじゃないか!?」
「そうしようとしたんだから当然だ。」
「なんだそっか・・・ってえええええっ!!??」
「ぷはっ・・驚き過ぎだって!」
「わ・笑うなっ!怒るよっ!?・・ほのか心臓がっ!?」
「心臓がどうかしたか?」
「・・・ほのかなんだかものすごくどきどきして・・死にそうなんだけど・・」
「そうだな、いざってゆうと緊張するもんだな。」
「いざって・・?なにそれ・・?」
「距離をさ、測ってみたけど無駄だな。」
「だからなんのこと言ってるの?!」
「おまえとの距離。タイミングっつうか・・」
「・・・よくわかんな・・い・・けど、それって・・」
「いい加減観念しろよ。・・させてくれよ、キス。」
「き・・キ!?きゃあああっ!待って待ってストップ!!」
「・・おい、イテーよ・・」
「あああ、ご・ごめん!だって、だってなっつんが・・!」
「んだよ、・・いい加減待ちくたびれたかもしんないぜ?」
「待っ・・!?う・そ、そんなの、知らないよっ・・!」
「・・・まぁな。わかったよ、そんな顔するな。」
「え、あの・・その・・し・しない・・の?」
「おまえが待てって言ったんだぞ?いいよ、別に。」
「そうなの?・・なんだ・・」
「ぷっ何がっかりしてんだよ!?」
「や、だって、その・・なんだか・・あれ〜??」
「なんだよ?」
「えっと、その・・ね?心臓大丈夫かな?止まったりしない?」
「しねーだろ?!そんくらいで死なれたら困る。」
「そんくらいって!?なっつんはどうだかしんないけど、ほのかしたことないんだよっ!?」
「誰にもさせるなよ?オレ以外。オレなら待っててやるから。もうしばらくは。」
「え、・・え?!・・・じゃ、じゃあ・・もういいって言ったら・・?」
「そんときはまぁ・・遠慮なく。」
「えっあっいやまっ・・そんな・・うわもう・・どしたら??」
「どうって・・とりあえず、黙れ。」
「あ、そ・・うですか?」
「何で敬語なんだよ?!・・んじゃあなぁ・・どこなら大丈夫だ?」
「へっ!?・・・んと、んっと・・うー・・ほ・ほっぺ。」
「わかった。ホラ・・」
「あ・あり?・・終わり?」
「足らないなら次どこだ?」
「え・えっと〜・・く・くち以外!」
ほのかは真っ赤になってておもし・・いや可愛いから譲歩してやった
鼻と眉とデコと反対の頬とついでに耳をちょいと舐めて終わる
ぎゅっと瞑ってた眼をそーっと開けるとほのかは泣きそうな顔をした
「どしたんだよ、口にはしてないぞ?」
「なっつん・・・ごめん・・ほのか・・やっぱり・・して欲しかった・・みたい・」
あんまり情けなさそうに言うから可笑しくてつい微笑んでしまうと睨まれた
ちょっとやりすぎたなと心の中で謝るとほんのわずかだけ掠めてやった
そんなちょっと触れただけでも オレには随分感動するものがあった
”めちゃめちゃ柔らかいじゃねーかよ”と胸の中で一人突っ込みを入れる
ほのかはぽかんと口を開けてオレを見ていた
「なんだよ?不満そうだな?!」
オレの声にやっと我に返ると「えっ!?う・ううん、違うよ、感動してたんだよ!」
「感動?」
「うん・・ちょっとだけなのに・・なんかその・・胸がきゅってなった・・!」
「へー・・一緒だな?」
「なっつんも!?」
「まぁいい感じじゃねーの?」
「うんv・・なんだかね・・嬉しいね・・!」
そのときあんまり蕩けそうな顔を見せるもんだから ちょっとその・理性が・・
やっぱり一度触れてしまうと止まれないもんだと・・実はわかってた





「・・・だいじょうぶか、ほのか。」
ほのかは上目遣いでオレを睨むと首をフルフルと振った
「まー・・その・・すまん。ちょっとやりすぎた。」
腕の中でじっとオレにもたれかかったまま口を開かない
「怒ることないだろ?!その・・オレも・・嬉しいからつい・・な・」
ほのかが黙ってこくんと頷いてくれて少しほっとする
「・・どうしてさっきから黙ってるんだよ?」
じっと考えていたようだったが、小さな声が聞こえてきた
「なっつんに・・ほのかのおくち・・ぜんぶ・・とられちゃったもん・・」
拗ねた小さな小さな声が擦れていて思わず抱いた腕に力が篭る
「あー・・・なんだ、その・・もう一回いいか・・?」
「!?・・やだ!」


ここまで来るのは楽しい道程だったなと思う
だけどここからは・・もう楽しいどころじゃないみたいで
どうすればいいんだろうな?これからはもっとこれまで以上に
苦しい思いをしそうな予感でいっぱいになるというのに
それなのにこんなにありえないほど幸せなら・・・構わない








久々に極甘でっす・・・大丈夫ですか・・?
一応言っておきます、キスしかしてないですよ?!(^^;
次はね、二人ともキスにはまってしまって困る話・・ってのは
やめておいたほうがいいだろうか・・?裏だろうか!?
と悩んでます。(え、どうでもいい?)失礼いたしました。