「キスがスキ」 


「ねぇねぇ、なっち〜?」

と、何気なく呼びかけに振り向くと・・キスされた。
目がひし形になっていたそうで、ほのかは大笑いしていた。
まぁなんだ、ちょっと当たったくらいの超、軽いヤツだ。
それでも油断は油断だから・・相当頭にきた。むかついたんだ。
大人げないっつうか、ばかばかしいっていうのか知らんが・・
オレは断じて嬉しそうな顔なんかしてない。そう断言した。
そしてほのかは憎たらしい顔をしてオレに提案を持ちかけた。
それに乗っかったって、別に誰からも文句がくるわけじゃないし
まさかそんな結果やオマケが付くとは思ってもみなかった。
・・・・いやそれでもオレは浮かれてたんじゃ・・ないぞ!?

「・・・なんの真似だ!ほのか。」
「あーおかしい!お腹痛いよ。喜んでくれた?!」
「ふざけてなんてことしてんだ!怒るぞ!?」
「乙女にちゅーしてもらって怒るなんておかしいよ?」
「どうせこれもいつものイタズラのつもりなんだろ!」
「あ、ばれた?だってなっちの顔・・・ぷふーっ!!」
「ざけんな!ちょっと来い。痛い目に遭わせてやる。」
「やだよ、悪いことしてないもん。なっちが油断したんだじょ!」
「悪ふざけにもほどがあるだろ!?く・・口はやめとけ。」
「ぶー・・ほのかの唇を最初に奪ったのはどこのどいつだい!?」
「あ、あれはその・・ふざけたわけじゃないだろうが!」
「ほのかだってなっちだからしたんだよ。誰にでもしないもん。」
「しかしだな・・」
「そんなに不意をつかれて悔しいなら勝負するかい!?」
「勝負だとぉ〜?」
「そお。なっちがほのかの襲撃に気付いたら勝ち。ちゅーされたら負け。」
「・・・気付いたら阻止していいんだな。」
「いいよ。する?」
「よし、いいだろう。」


とまぁ、そんなのがスタートだったんだが・・・・
意外にもほのかは不意をつくのが得意で、その日の戦績は振るわなかった。

「7勝5敗3引き分け。かな?いい勝負だったねv」
「・・・おい、それじゃあ勝負が着いたとは言えなくないか?」
「でも勝ちは勝ちだもん。ほのかのビクトリーさ!」
「いやまだ・・延長は!?明日また再戦でもいいぞ。」
「出た、なっちの負けず嫌い。・・いいけどさ。」
「よし、明日はオレの勝ちだからな!」
「ぷぷ・・お兄さん弱いからなぁ・・明日も勝てなかったりして。」
「うるせぇ。オマエが卑怯なんだろ、こっちの手が塞がってるときとか・・」
「そんなのセオリーじゃん。お兄さん見苦しいよ、言い訳は。」
「お兄さん言うな!むかつく!!わざと言ってるだろ!?」
「ふふんだ。ほのかちゃんに勝とうなんてのが間違いだと気付かせてやるじょ!」
「生意気な・・返り討ちにしてやるからな、明日は覚悟してろよ!」

・・てなノリで勝負はその後もずるずると続く羽目になった。そこが間違ってたか?
そしてそんなアホな勝負をしていることを嗅ぎ付けたヤツがいたのだ・・・厄介な;

「ほのかよ、それで谷本は勝率を上げたか?」
「ううん〜!今日もほのかの勝ちさ。なっちはね、基本ほのかに無茶しないからv」
「・・・オマエは中々の策士よのう。弟子にしてやろうか?」
「ダメだよ。宇宙人会長にはほんとはしゃべっちゃいけないんだもん・・」
「釘の刺し方が甘いんだよ、奴は。気にするな、ほのかは悪くない。」
「そうだよね!?たまに男らしいね、会長。」

「あ、あのぅ〜・・そんで谷本隊長は・・反撃とかはしないんスか・・?」
「しないよ、旗持ちくん。」
「はぁ・・・スゴイっすね。ある意味勇者です。」
「どうして?」
「スキな女の子に自分からは全く手を出さないなんて・・普通考えられんことですよ。」
「アイツなら不思議じゃねぇけどな。松井、谷本は普通じゃないんだぞ?」
「そうなんスか!?やっぱもてる男は一味も二味も違うんスね!?」
「・・・・なんか・・ほのかもやもやしてきた・・・帰る。」
「あ、ほのか。反撃はな、要求しない方が身のためだぞ?」
「なんでさ!?」
「オマエの攻撃はな、オレタチでいう握手程度にしか思ってないから、奴は。」
「・・・ほのかのキスなんてそんなもん?!ってこと・・?」
「もうちょい色気があればなぁ・・まぁそのうちそのうち。焦るなよ、ほのか!」

ほのかが涙目でウチにやってきて、再戦を申し込んだのはその後だったらしい。
翌日あの宇宙人は殴っておいたが・・それよりも事態の収拾の方が大事だった。

「いいかい!?ルール変更だからね!なっちからもしてこないとダメなんだから!!」
「・・泣くことないだろ!?アイツらの言うことなんざ無視してろって。」
「ヤダヤダ!ほのか悔しいもん。なっちは・・・う・・やっぱりほのかなんて・・・」
「なっ泣くなって!違うって言っただろ!?妹とかじゃないって今は・・」
「じゃあなんでなっちからはしてくれないの!?最初なんて怒ったよね、そういえば。」
「それは油断してた自分にちょっと・・反省しただけだ。嫌がったわけじゃないぞ!?」
「くすん・・・じゃあなんでぇ・・?」
「え・・た、たまにはオレからもしてるだろ!?」
「ほのかの3分の1もしてくれてない。・・気付いてなかったけど・・」
「回数とかどうでもいいだろう!?そんなことより・・」
「とにかく勝負するの!いい!?なっちからもっ・・!!!」


「・・・そんなの勝負にならねぇ。わかるか?」
「・・わかんない・・ほのかまだ一回めだもん。負けないから次・・」
「勝てるわけないから諦めろ。な?」
「う〜・・・なんでなんでなんでっ!?」
「だから・・勝負にならないってんだよ。ずーっとこうされてたいか?」
「・・ずうっと?」
「オレはいいけど、そうなったらな、オマエ・・キスだけで終わらないぞ?」
「・・・・んっと・・・えっと・・・?」
「わかるまでするか?」
「ん・・ちょっと待っ・・」


一応涙は治まった。だがほのかは眉間に皺を寄せてまだ思案中な顔をしていた。
抱き寄せていた腕から開放すると、脱力した体と手がオレを引っ張った。

「待って・・力・・入らない。」
「大丈夫か?!」

くたりとなったほのかを支えると赤く染まった頬で見上げられて・・困る。
苦労して踏みとどまったってのにまた・・消耗するぜ、全く・・コイツは。

「ねぇ・・絶対負けない自信ある?」
「あぁ。」
「そうかぁ・・なんだ・・ほのか心配しちゃったよ。」
「っていうかオマエ・・なんでもかんでもしゃべるなよ、頼むから。」
「あ・ごめん。言うつもりじゃなかったんだけど・・あの人うまいんだよ。」
「あれは人じゃねぇから。」
「でもさぁ・・すごくなっちのことわかってるみたいでさ・・ちょびっと羨ましい。」
「わかってるみたいに言ってるけどな、アイツはオマエには勝てないから。」
「?・・そうかな。」
「アイツだけじゃない。オマエしか知らないことならたくさんある。」
「もしかして勝負にならない?ほのかが最強!?なっちに関しては。」
「あぁ。」
「そっかあ!元気出た。」
「・・やれやれ・・とんだ勝負になったな。」
「へへ・・・やったあ!ほのかの勝ちィ!」
「!?・・・今日のところは勝ちにしといてやる。」
「ふふ・・でも今日はなっちからいっぱいしてくれたから、勝負なんてどうでもいいや。」
「じゃあもうやめるか?」
「ううん、なっちの驚いた顔見るの好きだから明日からまたガンバル!」
「新島たちに報告しないんなら、それでもいいぞ。」
「わかった。ほのかの一人勝ちだって言っとく。」
「しょうがねぇなぁ・・そんでもいいから。」
「ウン。あ・ほのかさぁ、なっちとキスするのすき。」
「・・勝負が、じゃなくてか?・・ふ〜ん・・・」
「あれ?どうして不満顔なの?」
「キスがすきなのかよ?・・オレじゃなくて。」
「!?・・ぷぷ・・なっちがすきだよ。サイコー!」
「それなら許してやる。」

真っ赤になったほのかに劣らずオレも頬が熱かった。何言わせるんだっての。
悔しいから頭をぐしゃぐしゃにした後で、もう一度キスをした。少し長めの。

「・・なっちは?・・すき?」
「・・言ってやらねぇ。・・ばぁか。」

憎たらしい!と怒っていたがほのかの機嫌はすっかり直ったようでほっとした。
何もかも勝負になんてならない。参ってばっかりだ。けど・・嫌にはならない。
負けても幸せだなんて気分はほのかだけが教えてくれる。調子に乗るから言わないが。







お久しぶりのど甘い夏ほのでぇ〜す!(開き直りすぎ)
いちゃあまいのが不足しがちなんです、ですのでね!?
・・・・そういうことで許してください。(==)