「気不味い」 


今まで気付いてなかったからっていっても
すぐに態度を変えるのなんてムズカシイよね?
っていうかなっちはそうじゃないのかなって思う。
困ったな。正直にぶっちゃけると今現在困ってる。
久しぶりのなっちの家がまるで違う場所みたいだ。

お茶は丁寧に淹れてくれて美味しかった。
オヤツはとっておきのチョコだったし大満足。
なっちは・・ぱっと見はいつもと一緒なんだけど・・

「ほのか」
「はいっ!なっなに何?!」
「いや・・お茶のおかわり要るか?」
「あっああおかわり!いるいる!ちょうだい。」

きっ・・・きまずい!なっちも変な顔になってた。
ううむ、白浜ほのか史上最大のピンチ・・は大げさかな;

だけどけどけどっ・・おおお・落ちつかない〜!!

なっちの何が変わったかって?そこだよ!問題は。
じっと見ないで欲しいなんていうのはダメかな、反則かな?
そわそわする。どきどきもする。でもって・・体がふわふわする。

「そういや試験どうだったんだ?」
「えっそれは・・まあまあ・・だよ!・・・多分。」
「成績下げたら怒るぞ。家庭教師の名が廃る。」
「うぐ・・今回は思ってたより簡単だったから大丈夫だって。」
「自信ないとこはすぐに持って来い。早い方が解決も早いから。」
「頼もしいお言葉!ひとつヨロシクお願いしますよ。」
「それと・・・そんなに身構えるな。なんもしねぇから。」
「えっ!?ほのか別に・・緊張してるように見える?」

”家入ってからずっとガチガチじゃねぇかよ・・・”

「今日は家に入れたが・・これからどうするかだな・・」
「どうって・・もう入っちゃダメなの?!」
「取り合えずオマエんち行って許可もらうか・・?」
「そんなことしなくってもなっちのとこなら文句言われてないよ?」
「”付き合う”って報告したらダメ出しされるかもしれないだろ。」
「そういうもの?・・よくわかんないけど。っていうか・・”付き合う”って!」

しまった!なっちがむっとしちゃった。否定したんじゃないんだけどな;
まさか自分が『お付き合い』するなんて、ちょっとまだピンとこないんだ。
どこがどう変わるんだろう?よくなっちとは付き合ってると誤解されてたけど
今度から否定しなくていいわけだ。うわ〜・・・やっぱりウソみたい。

「はぁ・・まぁオレも経験ないからよくわからん。ただ・・」
「ただ?」
「いや、今みたいに緊張してるときはいいんだが、そうでないときは気を付けろ。」
「んん?何に?」

あや?!ほのか変なこと訊いたかな?なっちがまた顔をしかめちゃったよ。
黙ってしまうから、心配したかな、なんだろうと思っていたら

「あんまり誘うなよ?前みたいにべたべたとくっついてきたら襲うぞ。」
「おそっ・・!!??」

お・お茶・・吹くかと!・・・あわわわわわ・・・・!
人を慌てさせておいてなっちってばまたコワい顔になってるー!!
っていうか、不機嫌。いや今のはほのかがいけなかったかもしれない。
そそそそーいうことだってある、いやありなのだよね?!付き合えば。
しまった。今までそっちの知識はどうでもいいかって仕入れてなかった。
別に決まりとかあるわけじゃあないよね?・・・って感じで実にいい加減だ。
ほのかの友達にも付き合ってる子はいるけど、なんとなく違う気がしてた。
なっちとほのかは普通とはちょっと違うのかなって・・・そうでもないのか?
そこで気付いた。なっちがほのかを”襲うかもしれない状況”って!?

「あの〜・・・きいてもいい?なっち・・」
「どうぞ。」
「べたべた・・してたっけ?ほのか。どういうことするとダメなの・・?」
「そこからかよ!?・・・ううむ・・数学より時間掛かりそうじゃねぇ?」
「や、そこはお兄さん。寛大に。ほのか付き合うってもよくわからないんで。」
「・・考えても無駄だ。やめとけ。ともかく警告は出すからよく聞け。」
「ウンウン、その都度教えてくれるんだね!?よかった。」
「・・・オレも訊いていいか?」
「おお!?いいともさ。なんでもきいておくれ!?」
「・・・どこまで・・いやそうじゃないな。オマエは何がしたい?」
「お付き合い?・・そうだなぁ・・なんだろう・・??」
「どうもオマエは今までと変わりなくていいみたいだな。」
「あっあった!したいことあったよ、なっち!」
「なんだ?」
「恋人繋ぎ!」
「・・・なんだそれ?」
「知らないのっ!?マジで!?ほんとに経験ないんだ!ほほ〜v」
「・・手の繋ぎ方か・・?」
「そうそう、教えてあげる。こうやって〜・・・」

なっちの手は大きいのでちょびっと不安だったけど指を広げて?と頼む。
なんとかその間に指を・・うぬう・・手の違いがちと厳しいかも!?

「あぁ・・こういうことか。」
「ひゃっ!!?」

教えてあげるつもりがなっちからぎゅっと握ってきた。ので驚いた。
あ・・あれ?おかしいな、あってると思う。けど・・嬉しいっていうより
なんだかものすごく落ち着かない。どっきんどっきんしてきた!何故っ!?

「・・ちいせ・・こうすると尚更小さく感じるな。」
「ぐさっ!小さい禁句だよ!それになんか痛い・・」
「指が広がってるからだ。力入れてるか?弛めてみろ。」
「う・うん・・・」
「なに体全体もちっさくなってんだ!?」
「だって・・なっちはなんともないの・・!?」
「なんともってことはないが・・オマエの態度の方がヤバイ。」
「ほのか・・おかしい?」
「明らかにおかしい。大人しくなっちまってるし・・」
「なんだか・・正直嬉しいのかどうだかわかんなくなってます。」
「ふ〜ん・・」
「あわっ!?ちっ・・力入れないで!なんか・・」
「逃げてるぜ、腰が引けてる。」
「むっ・・逃げてなんかないやい。」
「へぇ・・?」
「んなっ!?」

・・・・・っくりした!腰をっ・・抱き寄せたり・・突然過ぎる!
なっちの体と顔も近付いてしまって。(当たり前か)焦るじゃないか。
思わず繋いでいない片方の手でなっちの胸を押し返したけど力が入らない。
嬉しそうな顔!なっちってばなんなのその顔。ドヤ顔禁止って言ってみるかな?

「望みは叶えたぞ。これで満足か?」
「あのね、手を繋いであるくときにこうするの!これはなんか違う気がするよ。」
「この繋ぎ方だと歩きにくそうだな。オマエうろちょろするしなぁ・・?」
「ええ!?じゃあこの繋ぎ方で歩いてはくれないの!?」
「しないとは言ってない。」
「なんか意地悪いなあ・・」
「!!!???ちょっ・・なにして・・んの!?」

繋いだままの二つの手を持ち上げたと思ったら・・なっちがほのかの指に
ちゅー・・した!から驚いた。なんかもう心臓ばっくばくだし。どうしよ・・

「悪くないな、これ。」
「嬉しそうだね。悪くはないよ、ほのかも。」
「そのわりに嬉しそうじゃないぞ?」
「だって・・なっちやらしい。なんとなく・・」
「じゃあ離す。ほい。」
「!?・・」
「不満が直らねぇな?」
「・・・なんだろ・・もやもやする。」
「物足りないって顔だ。違うか?」
「なっちは楽しそうなのに。ズルイ。」
「楽しいが、物足りないな。オレも。」
「なんでかなぁ・・?」
「さぁなんでかな・・」

どうしたことだろう。なっちに魔法に掛けられたみたいだ。
ひっつきたい。ものすごく。だけど・・いいのかな?いい・・?
ほのかは何故か言葉が出せずになっちを見詰めた。伝わるだろうか。
しばらく見ていたらなっちがもう一度ほのかを抱き寄せて

「いいのか?」

って訊くんだけど、何の許可を求めているのかよくわからない。
わからないのにほのかは「うん・・」って言ってしまった・・んだ。
そしたらぐっと抱き締められた。なっちとほのかの距離がなくなってしまった。
手をどうしたらいいのかわからなくて結局なっちの背中に回した。

「やっぱりよくないっ!!」

もうちょっとでちゅーしそうってとこで叫んでしまっ・・・たんで;
なっちは痛そうな顔をした。それはそうだ・・耳元で大声出したんだもんね。
けど怒るかなと思ったらそうでなく、少し離れてほのかを見た。

・・・さっきよりずっときまずい・・多分、ううん絶対に顔は赤いだろう。
嫌な汗まで出てきた。どうしていいのかわからなくてすごく困っていたら
なっちはふっと笑ってほのかの頭を優しくぽんぽんっ!ってした。
そのおかげでふっと力が抜けて・・ふにゃっと体が崩れそうになった。

「・・ごめ・・ん、ね。なっちぃ・・」
「あー・・今度から謝るな。いいな?」
「うぬぅ・・なっちが泣かせるぜ・・」

なっちの手がまた髪を撫でてくれたので嬉しくてへらへら笑ってしまう。
こつんと軽い衝撃。なっちとほのかのおでこ同士が当たる音だ。

「なんか・・恥ずかしい。なんでだろ?」
「そうだな・・気不味いからか?」
「あれ?なっちも!?ねぇ、ドキドキは?しないの・・?」
「してねぇとか思うか?・・・残念ながら・・・してる。」

こんなにすぐ近くでなっちがまた笑ったりするから、気まずいなんて
どうでもよくなった。ほのかもつられて笑う。胸がきゅうって痛いけど
幸せかも。きっとおんなじ・・なっちもそんな笑顔をしてるから。







ゆっくりとらぶらぶスタート。