「可愛い人」 


ほのかはときどきオレの母親きどりだ
オレより三つほど年下でチビのくせに
「良いコだね」なんて言って撫でたり
何考えてんだろうな オレは幼児かよ
初めのうちはそれもまあ許してたが
あんまり子供扱いされっと腹が立つ
もう前と違ってあいつの胸は柔らかく頬に当たるってのに
押し付けんじゃねぇっての!・・言ってねーけどな


「おまえはまた!オレは拗ねてるわけじゃねー!止めろよ!!」
「ハイハイ、わかったよ。可愛いんだから、なっつんは。」
「その可愛いだの良いコだってのも止めろ!!」
「ごめんごめん。つい言ってしまうのだよ。」
「偉そうなんだよ、年下のくせに。」
「年は関係ないと思うな、こーゆーことは。」
「そーじゃなくて、おまえは男に気安くしすぎなんだよ!」
「男って・・・だって、なっつんじゃん。」
「おっまえ!怒るぞ、終いに。」
「しないよ、なっつんだけだよ。だいじょぶ、心配しなくても。」
「オレも男なんだが・・?」
「知ってるよ?こんなでかい女だったら大変だよ・・!」
「人の話きーてるかっ!」
「きーてるよ、なっつんは男の子だよ、どう見ても。」
「・・・やっぱわかってねぇ・・;」
「何怒ってるのさ、いつものことでしょ?!」
「だーかーら、しょっちゅうそういうことすんなって。」
「そんなに照れなくても誰も見てないし。」
「照れてるんじゃねーよ、その・・」
「なんでも言ってごらん、夏。」
「呼び捨てにすんな!おまえのむ・胸とか・・その、当たるんだよ・・」
「へっ・・あっそうか!それがやだっったの?」
「おまえは恥ずかしいとかないのか?」
「うん、なっつん抱っこするの好きなんだもん!」
「なんだと!?」
「胸のクッションはちょびっと発展途上だけどさ、もしかしてそれが嫌?」
「そんなことは言ってねぇよ。」
「わがままだなぁ、結局何が不満なの?」
「不満じゃなくて、その・・そういうことされっとオレは困るんだよ!」
「??・・・だからそこがわかんない。」
「理由はわからんでもこの際いいからとにかくやめてくれ。」
「やだよ。」
「なぁ、頼むから。」
「・・・そんなに嫌がるなんて・・・反抗期?!」
「オレは子供じゃねーっつってんだよ・・」
「ほのかだってもう子供じゃないよ、赤ちゃんだって産めるよ。」
「だったら男を刺激するようなことするなって!」
「ふえ・・・!!なっつん、こんな胸でも感じてくれてるってこと!?」
「ぶっ!・・う・いやだから、その・・」
「ちょっと感動だよ・・あんまり育たないから心配してたしね。」
「・・・もしもし?」
「嬉しくてもっと抱っこしたいよ!させて、なっつん!」
「・・・つまり、おまえはオレをその気にさせたいってのか・・?」
「ん?そうかな?そうかも!」

オレはマジで頭が痛くなって抱え込んだ
どこまでもオレの困惑は止められそうにない
からかってるのか!?面白がってるのか?!
それとも本気でオレを誘ってるつもりか!?
「だいじょうぶー?なっつん・・」
心配そうなほのかの声がかかるが顔はあげない
どうしてやろうかと悩んでる最中だ
またヨシヨシと頭を撫でてきやがった
オレは無視して下を向き続けた
「なっつんが嫌なら、やめるよ・・だけどさ・・」
「・・・?」
「なっつんのこと好きだからするんだよ?嫌がってるなんて思わなくてごめんね。」
珍しく殊勝な免罪と気弱な告白が頭上に降ってきた
こいつが嫌がらせでしてるわけではないことはわかってたはずなのに
オレが悪かったかな・・・少し・・・
「ねぇ、なっつん。ごめんってば。顔上げてよう!」
困ってるみたいなのでそれに免じて許してやるかとゆっくり頭を戻す
すると待ち構えていたらしいほのかの笑顔と両腕があった
「なっつん、ありがと!」
オレに抱きついてきやがったからちょっと焦った
「お・おい、やめるって言っただろうが。」
「嬉しいからもうちょっと!!」
「・・・」

降参していつもと逆にほのかの頭を撫でてやる
柔らかくてくせの有る髪が指に優しい
小さなほのかの頭と柔らかい身体
それを感じながら後ろめたい気持ちを隠す
もう好きにしたらいいさと呟くのを
ほのかは聞き逃さなかったようで
「ありがと、なっつん!」とまた礼を言う
そっと抱き返してもほのかは嫌がらなかった
胸に去来する温かい気持ちはほのかがオレにそうしたい理由かと思う
だがなんだか少しおあずけをくらった気分でもある
にっこりと微笑む笑顔に苦笑が零れた
しょうがねぇな・・・まぁいいか
まだこいつはこのままで・・・って待てよ?
・・・つまり気にして欲しかったのは・・オレの方って・・か?!
「なっつん、どうしたの?」
「い、いや、別に・・」
「顔色良くないね?」
額に手を当て熱を確かめるほのかの指がが触れた途端に動悸が・・
おいおい、しっかりしろ夏!手が触れただけだってのに!
「なっつん、横になる?大丈夫?!」
「あ、ああ大丈夫だ・・;」
ほのかの顔がまともに見れなくなってしまった
オレの方がよっぽど・・・はぁ・・どうするよ・・?!







ギャグです。えっと甘くないのも書けるんですよ!(いいわけ)
無自覚ななっつん、意識するっつう話でしたー!