「いっぱいください!」 


まだ恋人なりたてだし、覚えたてのキスは胸がきゅってなる。
しがみついちゃうのは怖いからじゃないんだけど、心配なのかな?
そんなに難しい顔しないで欲しいの、せっかく気持ちいいのに。
それに最近なっつんてばおかしいんだよ、ヤキモチやきさんでさ。
どうしてだろう?それがなんだか嬉しいけど変なカンジ。


「ねぇねぇ、なっつんvいいでしょ?」
「ダメだっつってんだろ!」
「そんなぁ・・いいじゃないか〜!」
「よくねぇっ!」
「え〜!?こんなこと次はいつだかわかんないよ!?」
「なんと言われようとだ・め・だ!」
「ちぇ〜・・なっつんのけちィ!」
「誰がケチだ。オマエちょっとは考えろよ!」
「べぇ〜だ!いいよもうなっつんなんて知らない!」
「あっ待てコラ!?」

わからずやさんをちょびっと困らせてやろうと人ごみに紛れてやったの。
ほのかはすばしっこいからね、なっつんもなかなか足は速いみたいだけど。
ひょいひょいと人並みをかわしていたら間違って人にぶつかっちゃった。
「わっ、ごめんなさい!」
すぐに謝って顔を上げたら優しそうなお兄さんだった。
「やぁ、君は・・こんなところで会うなんて偶然だね?!」
驚いて誰だっけ?と必死で思い出そうとしたけどわからない。
「あの・・えっと・・」
「どうしたの?覚えてないのかな?」
「えっと・・その、ごめんなさい。誰・・?」
「ゆっくり思い出してもらおうかな?そこでお茶でも飲みながらさ。」
「え?!ちょ、ちょっと待って・・」

「こんな詰まらん手に引っかかってんじゃねーよ。」

なっつんがいつの間にか後ろに居てほのかの肩に手を置いた。
「なっつん!」
答えずになっつんは私を後ろへ押しのけるようにして男の方に向き合う。
「や、やぁ・・君は・・?」
「コイツの知り合いならオレのこと知らないはずないだろ?誰だか言ってみろよ。」
「やだなぁ、お兄さんには直接僕は・・」
「このタコ!死ね。」
ほのかが驚いてなっつんを止めようとしたときはもう終わってた。
気の毒に顔の正面を殴られてひっくり返ってしまったの。
「ホラ、行くぞ、手間掛けさせんな。」
「えっ、えっ!?この人ほのかの知り合いみたいだったけど・・」
「莫迦か、オマエ?!質の悪いナンパに引っかかってんじゃねぇよ!」
「え?あれナンパだったの?なんでわかったの!?」
「・・・わかるだろ、普通・・・」
「スゴイな、なっつん。ほのかってば知ってるのに忘れたのかと思っちゃった。」
「人ごみとかはいつもみたくオレにひっついてろって言っただろ!?」
「だって、なっつんが意地悪するんだもん・・」
「誰が!?オマエ、帰ったらお仕置きだからな。」
「えぇ〜!?何でよ、ほのか悪いことしてないのにー!」

なんだかホントに怒ってるのかなっつんは黙ってずんずん歩くし、
手を引っ張られるみたいにして家に着いたらソファに座らされちゃった。
「あのさ・・なんでそんなに怒ってるの・・?」
「おまえのせいだろ?」
「なんでよぅ!なっつんが言うこと聞いてくれないから・・」
手足をバタバタさせてむくれるとなっつんにキスされた。
いつもみたいに優しくないから黙らされたみたいでなんだかやだった。
「・・・んん・・」
一生懸命なっつんを押し戻そうとしてもびくともしない。
なんだか今までと違うのは気のせいじゃなくて、胸はどきどきを通り越して痛い。
悔しい息の下で両腕を拳にして叩きつけてもなっつんは離してくれなくて・・
涙が滲んできて、力が抜けて意味を成さないわたしの小さな拳を解いた。
長い長い間繋がっていた口が離れると透明な糸が二人の間に伝わるのが見えた。
「・・なんで?ねぇ、なっつん・・」
「まだ・・だめだ。昔みたいにはできないって言ってるんだ。」
「もっと一緒に居たいんだもん・・お泊りさせてよぅ・・」
「だーかーら、キスだけで済まないって・・言わせんなよ、コラ・・」
「・・・いいよ、だから。」
「またオマエは・・もう少し待ってろ。」
「うー・・・なっつんの・・」
「ケチでもバカでもいいから。なるだけ・・我慢できなくなるまで待ってろって。」
「どうして?ほのかがいいって言ってるのに・・」
「オマエいつだって震えてるだろ、キスくらいで・・」
「え、そうかなぁ?」
「それにその・・嫌なんだよ、オレが。・・・もったいないっ・・つうか・・」
「いつも『早い』って言ってたのそういう意味なの?」
「オレがどこまで手加減できるかわかんねぇし・・なるだけ泣かせなくないしだな・・」
「それでいつもキスした後難しい顔してたの?ほのか怖くなんかないよ?」
「うっせぇ、泣きそうな顔してるぞ、オマエいつも。」
「そんなこと言ってて他の人に盗られても知らないよ?」
「あのな、だから余計な心配増やすなよ!ふらふらしてナンパに引っかかりそうになったり・・」
「最近なんかよくヤキモチやくの、心配だからなの?」
「や・妬いてなんか・・もしそうだったとしてもなんか文句あんのかよ!?」
「ううん・・・でもね、ほのかが泣きそうになるのはね・・なっつんが好きだからだもん。」
「・・・」
「間違えちゃダメだよ?怖くないんだからね!?すごく気持ちいいんだから!」
「・・・」
「なっつん?何さ、文句あるの!?」
「・・・ある。」
「えぇ!?ほのかは無いって言ってあげたのに!」
「あるっての。人がせっかく・・・まぁいい、わかった。」
「ホントに?」
「いずれ・・もらうから。全部。」
「ほのかのこと?」
「他に誰がいんだよ。」
「ほのかも欲しい。なっつんのこと全部。」
「いらねぇってくらい、やるから。覚悟しとけ。」
「ウン。えへへ、ほのか欲張りだもん、いらないなんて言わないよ!」
「どうだかなぁ・・」

なっつんが人を疑うようなこと言うのでお鼻にチュウしてやった。
でもって両方のほっぺとおでこと・・・「コラ、止めろ!」って言うのも無視!
「いらないって言うの?!なっつんは。」
ほのかがそういうとなんでだかなっつんは可笑しそうに笑った。
「なんで笑うのよう!?」
「オマエって・・ホント・・」
「なぁに?」
「教えねぇ。」
「あーっ!?何その態度。ほのか怒るじょおおっ!」
憎たらしいったらないよね、膨らましたほっぺを抓られちゃったし。
「もう、あんまり意地悪だとあげないからねっ!」
「うっせぇ!絶対もらう。」
「うー・・・ほのかなっつんなんて・・」
「キライで結構。」
「だいすきなんだから!べーっ!!」
思い切りあかんべしてなっつんに背を向けたら後ろから抱きしめられた。
「やだ、離せー!」
「まだちょっとお仕置きが足らないみたいだな・・?」
「?・・む、なっつんてば目が・・」
にっこりと笑うなっつんにいや〜な予感がしたんだけど、もしかしてもう遅い?
くるんと身体を持ち上げられてなっつんの膝に向き合ってしまった。
「お仕置きって・・さっきみたいなの?」
「どうするかな?」
「痛いのは嫌。もっといつもの優しいキスにして?」
「それじゃお仕置きにならないだろ?」
「ほのか悪いことしてないったら!もお・・」
「してんだよ、思い切り。」
「ええ!?いつ、いつほのかがなっつんに意地悪とかしたんだよぅ!?」
「いつもいつも。」
「ウソツキー!しないよっばかばか!!」
「まぁ・・・してもしなくても・・・いいけどな。」
「ほぇ?ナニそれ・・?」
「どっちでも・・・」
「ん・・?」

その後くれたのはいつもみたいに優しいけどいつもと違う長いキス。
なんだかなにもかもどうでもよくなっちゃったの、だからね、
「なっつん・・もっと・・」っておねだりしてしまった。
なっつんは怒らなかったけど、「やっぱツライかも。」って溜息吐いてた。
それでね、「いつまでもつかな・・」って小さく呟くから言ってあげたの。
「いつでもいいから・・・いっぱいいっぱい、ちょうだい?」って。
とても強く抱きしめられて、なんだかわからないけど幸せな気分。
「了解ってこと?」
「そういうこと。」
「ヨシ!」
「えっらそうに・・」
「なっつんのマネだよ?」
「ふーん、じゃあオレもマネするかな?もっとくれって。」
「どうしようかな?」
「どうする?」




どうしたかって?それは・・・内緒です!






・・・・こんなの書いてていいんでしょうか・・気分は大丈夫ですか?
私は・・・かなりげっそりしてます。ナニコレ・・・・甘いにも程がある。
最近甘いの書いてなかった反動かもしれませんが、それにしても、ねぇ?