イケナイことしよ? 


一番最初は全くそんなつもりはなかったんだ、ホントに。
退屈で暇を持て余したから飴玉を持って邪魔しに行った。
食べないって首を振っても無理矢理に押し付けたのだよ。
そしたらわんこみたくパクって食べてくれて嬉しかった。

可愛い反応に味を占めたからそれから何度もやってみた。
甘いのが嫌いだから特に甘いのを選ぶ。イヤな顔するから。
楽しくてわくわく。ほのかはイケナイ子だなぁって思うよ。
可哀想かなと思ってそんなにまずいならほのかに返して?
と言ってみた。もちろんできないってわかってて言ったのだ。

だって飴玉はもうなっちの口の中だったんだもんね。
怒るかなって首を傾げたら顎を持ち上げられたんだ。
びっくりしたのは飴玉がほのかの口にコロンと入ったとき。
甘かった。でもってもぐもぐしてたらやっとわかったんだ。

「・・・これってさ、『くちうつし』ってやつ?」
「まぁな」
「唇くっついたよ!ちゅーしたみたいだねっ!?」
「そうだな」
「今度は飴なしで頼むよ。」
「ガキにはまだ早い。」
「たいして変わらないくせに。ほんとは知らないんじゃないの?」
「知ってても教えたらお兄さんの方が一方的に不利なんですよ。」
「黙ってたら?ナイショにするから。」

確か最初はそんなだったと思う。そのときはしてくれなかった。
だけどほのかはしつこく飴玉を持ってなっちの用事を邪魔した。
そうしていたら何度目かになっちが飴がなくなっても止めない。
息は苦しいし、妙に上向きすぎて首が痛いし、体は熱くなるし。
つまりほのかは結構いっぱいいっぱいだったんだ。言わないけど。
キスっていうより食べられてるみたいだってぼんやり思っただけ。
なっちが離れていったらやけに口元がスースーしたのは覚えてる。
そして綺麗なその顔が歪んだことも。”しまった”って感じの。
だから一所懸命普通のふりしたんだよ。なんでもないって顔して。

「ちゅーだ。くちうつしじゃない。教えてくれたんだ。」
「・・・忘れてくれ。でなきゃここへの出入り差し止めだ。」
「エッやだ!誰にも言わない。ほのか口はカタイのだ、安心していいじょ!」
「お前は嫌じゃなかったのかよ、初めてだろうが。」
「ゼンゼン!?気持ちよかった。もっとしたい。」
「・・・・一人前だな、言動不一致もいいとこなのに。」

なっちの言ってることがわかりにくい。どうも嘘だとわかったみたい。
ホントだよ!?と一所懸命言ってみたけど、それも逆効果だったらしい。
なっちはほのかの頭をわんこにするみたいにヨシヨシと撫でた。
もうしないと言うんだと何故かわかったほのかは泣いて縋った。
言ってよかったんだ。それからなっちとほのかは秘密を共有したんだ。
ナイショで秘密。どきどきしてイケナイ気分だった。悪い子だって
わかるんだけどやめられない。なっちとするキスが楽しくって。



「は・・ぁ・」
「うまいか?」
「おいしい。」
「甘過ぎる。」
「だったら舐めなきゃいいのに。」

慣れてきて怖さがなくなるとほのかはそんな意地悪も言った。
なっちはあれ以来乱暴なのは止めて優しいキスばっかりだ。
それが嬉しいんだけど、ちょびっと物足りないなんて、思う。

「ねー、なっち。もっと!」
「何期待してるんだよ。」
「最近ちゅーが大人しいんだもん・・」
「困ったヤツだな、欲求不満かよ・・」
「初めてが刺激的過ぎたかも。あれ、もいっかい・・ほしい。」
「体つきとのギャップがスゴイな、お前。(エロい誘い方しやがって)」
「ギャップって?体つきと何?」
「わかんなくていい・・来いよ。」

久しぶりで頭も体も沸騰しちゃった。熱くて涙まで滲んでた。
もしかしたらなっちもそんなキスがしたかったんだろうか?
だってものすごく・・うまく言えないけど・・なんか溶けそうだよ。
走った後みたいにぜーぜー息をしたら呆れられた。だって難しいんだ。

「ちゃんと呼吸しないからだろ、アホゥ!」
「・・く・・るし・・だってぇ・・ケホッ」
「まぁこれに懲りて大人向けは当分我慢しとくんだな。」
「・・ええ〜!?どうしてえ!?」
「口では平気そうだし誘ってはいるが腰が引けてるぞ。」
「ん?・・そうかなぁ・・怖くなんかないよ!」
「これ以上はいくらなんでも・・マズイだろ。」
「・・・なっちがしたいんならほのかへい・・」

なっちがいきなり怒って手首を掴む。ものすごく痛くて悲鳴を上げた。

「自分がどんな状況かわかってるか?俺だからってなんでも許すな!」
「痛いイタイ!ごめんなさい!痛いよぅ・・なっちぃ・・」
「・・他の男ならお前なんかとっくにいただかれてんだよ、バカ。」
「いただくって・・食べられちゃうってこと?」
「バカにはそこまで説明が要るのか。そうだ!」
「う・・ひど・・だってなっちじゃなきゃ言わないよ。」
「そんならあと2・・3年くらいしてから言え。」
「そんなに?けどちゅーはしてるじゃないか。」
「確かにな。だがまだやり直せる、今の段階なら。」
「それってどういう意味?」
「何もなかったことにできる。二度と会わない約束をしてな。」
「絶対しないよ、そんな約束!!」

ぞっとした。想像しかけて眼の前が真っ暗になった。
ほのかはなっちにしがみついて大声で泣き叫んだんだ。
だけど二人がもうずっと会えないなんて思ったら怖くて
止められなかった。なっちは困ってほのかを抱き寄せた。
小さな声で謝って、耳元が熱くてくすぐったかったよ。
そのときにわかったんだ。なっちがほのかのこと好きなんだって。

「ほのかなっちがすき。なっちは?」
「・・・すきだ」
「ちっちゃい声。自信ないの?」
「そんな言葉じゃ見合わねぇんだよ。」
「ものすごーくすきってこと?」
「バカみてぇだが、そうだ。」
「だからイケナイことしたんだよね?」
「知った風に言うがわかってたのか?」
「だったらいいなって思ってた。」
「なるほどな。」

なっちがしょうがないって顔して笑ったのが嬉しくて唇を尖らせた。
ほのかからなっちの頬だけど優しいキス、をしてみたんだ。したら
お返しはとても優しいのに激しいときみたいな蕩けるキスだった。
よかったって心底ほっとした。ほのか間違ってなかったんだって。
大好きだからイケナイことはなっちとしたいんだよ。そう囁いた。

「うまいな。」
「上手?何が」
「俺を悦ばせるのが」
「へえ、ほのかエライね。」
「そういうことにしとく。」
「もっと誉めてよう〜!?」


それから、時々はイケナイ気分になるちゅーもしたけれど
なっちは遠慮しなくなった。熱い手で腰を引き寄せてくれる。
逃げたりしないのに、逃がさないように。心配症なんだ。
誰にも言わない。だけど悪いことしてるからじゃないよ。
なっちとほのかの大切なことだから。一生続いて欲しい願い事。
大好きでいられること。大好きでいてくれること、どっちもね。
今のところ大丈夫みたい。なっちはほのかとらぶらぶだもん。
そういう言い方すると怒るから言えないんだけど、なんでかね?

「あれ、この飴嫌いじゃないの?」
「これはイケる。だからやらん。」
「そんなぁ!?失敗した・・コレはダメなのだ。」
「残りは置いていけ。俺が食ってやるから。」
「べーだ!あげない。もう買っても来ないからね。」
「なんでだよ!?」
「なっちが食べていいのはほのかなの!他はダメ!」
「おかしいだろうが、それ・・理屈になってねぇ!」
「おかしくてもダメなのーっ!美味しいなんて言っちゃいやだよ!」
「なんなんだ・・・飴玉に妬くとかアホ過ぎるだろう・・」
「うるさい!ちゅーしてくれなかったからなっちが悪い!」
「・・そういうことか・・ほら、むくれんなよそんなことで」
「ぶー・・・」
「ブタが居る。このあたりがブタだしなあ。」
「ぎゃあっ!?えっち!どこ触ってんの!?」
「太腿。このあたりなら出荷出来そうだぜ?」
「ブタじゃない!なっちにも食べさせないじょ!」
「ま、あと数年だな。寝かせた方が美味くなる。」
「ちみ・・最近言動がおっさんくさいじょ!」
「そいつは失礼。」
「憎たらしいのー」
「痩せるなよ、ほのか。」
「大きなお世話様なのだ。」

モー怒った。今度は牛と言われないために黙っているけど。
ちゅーはしてくれないしセクハラするし、怒って当然だよ。
ご機嫌取りに何してくるかここでじっと待っててやるんだ。
今日はフルコースで美味しいオヤツとか濃厚なちゅーとか
してもらっちゃうのだ。でもって誘惑もしちゃうんだからね。
だってたまにはイケナイ感じのなっちが見たいんだもん・・
イケナイ顔のなっちにぞくぞくするってこともね、ナイショなの!










結局ほのかの勝ちだと私は思いますv