「ほのかのなの」 


あのね、ほのかはすごいこと知ってるの。エヘン!
なっちのことを何でもわかってるのはほのかなのさ。
それになっちはね、ほのかのことすごく好きなんだよ。
自惚れてるんじゃない。きっと正解に違いないのだ。

「むむぅ・・なっち、眠くなってきたから寝る。」
「また・・眠いならどこでもいい。オレにしがみつくな!」
「ここが一番くつろぐのだから仕方ないじゃん。」
「人の懐で寛ぐな!オレはラッコか、カンガルーかよ!?」
「大きいからカンガルーじゃない?どっちかっていうと。」
「どっちでもねぇっ!!」

さて、やかましい人は置いといて。寛ぐとするか。
しがみついて頬を摺り寄せるとなっちは既に諦めむーど。
はふ・・と欠伸を一つして目を閉じると抱きかかえてくれる。
お母さんでもこうはいかないんじゃないか、覚えてないけど。
頭なでてくれるし、ポンポンしてくれるし、実に心地良い。
けどね、いつもいつもされてばっかりじゃあないんだから。
交代でほのかもしてあげるの。そこんとこはエライでしょ。
素直じゃないから嫌がる振りするなっちが大層可愛いのさ。
可愛くて可愛くて、困っちゃうよ。皆知らないんだよね・・


ほのかがストンと眠りに落ちる。1分足らずでやたら早い。
オレはしがみつかれたまま。抵抗を諦めて抱きかかえる。
しばしのシークレットタイム。恍惚と苦痛が隣り合わせだ。
唇を髪に寄せる。反応がないことを確かめると顔を埋める。
髪を撫でる振りで香りごと楽しむ。背中もさすってみたり。
柔らかく押し付けられた部分の成長度合いもこっそりと確かめ
深く眠った頃合を見計らってソファに寝かせる。ついでにキス。

「ふ・・む・・にゃ・・」

額でも頬でも全く気付かない。大物というかアホというか・・
これだから他所で昼寝をするなと煩く注意してしまうのだ。
危なくてしょうがない。寝顔を晒すだけでも危険ではないか。
可愛い顔しやがって。相変わらずむかつく。抱きしめたくなる。
そこは毎回かなりの理性でもって堪える。苦し紛れのキスでもある。
唇だって気がつかないんじゃないかと思うのだが一応遠慮して。

この可愛い生き物が目を覚ますまでにオレは用があれば済ませる。
傍にいながらできることは持ち込んでこなす。或いは読書する。
掛けてやる毛布が落ちてしまわないように見張るためでもある。
保護者というか従僕?召使風情なような気もするがそれは置く。
時折寝言を呟いたり、オレの名を呼んで微笑んだりすることが
楽しいのでそれで勘弁してやるのだ。悪い気はしないのだから。
起こす楽しみもたまにある。大抵自分で起きてくるのだが、
その寝起きのぼけっとした顔も面白いし、寝ぼけるときも見もの。
起きないときは起こしてやる。中々そういうときは起きないので
むっとした顔をされたり、手に噛み付かれたりするので要注意だ。


「ん・・・なっちぃ〜・・・」

返事をしそうになったが、寝言だ。ああ、毛布がずれたな・・・
掛けなおしてやると、手を掴まれた。熱いのでまだ眠いらしい。
小さいが意外に肉厚な指と手を弄ぶと、寝ていてもくすぐったがる。
起こしてしまうか迷った。どっちでもいいと頬に唇を寄せた。
すると意表を突く勢いでぱかりと目蓋が開いたので後ずさった。

「どっどうした!?」
「・・・?・・・・」
「ほのか?寝ぼけてんのか?!」
「・・・なっち!好きだよっ!」
「はあ!?・・そりゃどーも。」
「うむ。ちみもたまには言いたまえよ!・・・ぐーっ・・・」

ほのかはオレを睨むようにそう言って・・ぱたりと顔を落とした。
寝ぼけていたらしい。はっきりした寝言だなと感心しつつ笑う。
寝ながら告白なぞされるとは・・アホらしいがおかしい。ぷぷ
覚えてないんだろうなと思いながらも、笑い声を噛み殺した。


なんか夢みてたみたい。頭の中がぼんやりとしてる。
なっちがいつのまにかほのかをソファに寝かせていた。
むっとして傍にいたなっちに文句を言ってやったさ。

「なっち!抱っこしててって前も言ったじゃないか!」
「そんなことしてたらオレは動けないだろ!」
「たまにはすればいいじゃないか。ずっと抱っこ。」
「甘えるな。なんでそんな・・図々しいヤツだな。」
「腕枕しろとは言ってないし、可愛いお願いじゃないか。」
「へぇへぇ・・また今度な。」
「頼んだじょ。ったく・・」
「怒られる理由がわからん。そうだ、ほのか。」
「なんだい?」
「好きだぞ。」
「・・・・へ!?」
「オマエがたまには言えと言ったのになんだそのリアクションは。」
「たまにって・・いつほのかがそんなこと言ったんだい!?」
「さっき。」
「覚えてない・・言った覚えないじょ。」
「・・まぁそうかと思ったが・・とにかく言ったからな。」
「寝起きに告白ってちょっと・・あんまりピンとこな・・」
「たまにでいいんだろ?しばらくは言わないからな。」
「そんな!?ちょっとなっち、ケチなこと言わないでよ。」
「誰がケチだ。」
「ほのかなっちに好きって言えっていったの?たまに?!」
「その通り。」
「そういうのってさ、好きじゃなかったら言わなくていいんだよ・・」
「へぇ!?意外だな。オレがオマエを好きじゃないと思ってたのか?」
「嫌われてるとは思ってないし、好きでしょ!?けどそうじゃなくて」
「・・・深い意味があるかどうか訊いてんなら、あるぞ。」
「・・ほのかまだ・・寝ぼけてるのかな、ひょっとして。」

どうもおかしい。現実なのかな、これ。ほのかは自分の頬を引っ張った。
痛いような、そうでもないような・・・困ってたらなっちが寄ってきた。
ぼんやり見てたら眼の前になっちが立って、いきなり人の顎を持ち上げた。

「乱暴!もうちょっと丁寧に扱い・・」


「オマエいっつもオレはオマエのものだと言ってるじゃねぇか!」
「いいいい・・ってたっけ?!」
「オマエのこと好きなくせにとか、人にまでそう言ってるぞ!?」
「そう・・だね、言ってました。ハイ・・」
「ならそんなに驚くことか!?なんならもう一回キス・・」
「ひやあああああっ!!!いいっいいよ、なっち・・まっ」
「うるせぇっ!デカイんだよ声!」
「い・いいって・・いったのに!」
「いいんだろ?だからしたんだ。」
「そうじゃ・・しなくていいって・・」
「それって嫌だってことなのか?」
「う・ううん・・」
「ならいいんだろ。何慌ててんだ。」
「慌てるよ!いきなり。なんなんだい!?急にどうしちゃったの!?」
「急じゃねぇだろ!前からオマエオレのものになるとか色々言ってたぞ。」
「そっそんなこと・・ほのかそういや好きとか色々・・言ったね。」
「だから痺れ切らしてオレにも言えって言ったんじゃなかったのか?」
「・・・それ夢だよ。言った覚えないもん。」
「はっきり聞えた。間違ってないならいいだろ。」
「あのさ、だったら抱っこもしてくれる?」
「・・それはまだ早いんじゃないか?」
「なん・・・まさか・・・なっちやらしいこと考えた?」
「当然考えた。」
「違うよっ!なっちはほのかのなんだから、言うことききなさい!」
「わかったよ・・けど・・少し強く抱きしめてもいいと言え。」
「う・うん。いいよ、抱いて。」
「それどっちの意味だ?」

そんときになってようやくほのかはわかった。からかわれてることに。
だから怒って噛み付いてやったのだ。なんて憎たらしい人なんだい!
だけどなっちだからね、しょうがないの。ほのかのなんだからね。
ちょびっとわかってなかったかもだけど、いいんだ。たいしたことじゃ
ないもん。肝心なのはほのかは大好きで、なっちだってそうなんでしょ!?
へへ・・でも照れくさいから顔を胸に擦り付けてみた。そしたらね、
なっちも赤い顔してたよ。なんだ、なっちもかって二人で抱きしめあった。
嬉しくってぎゅうぎゅうってね。やっぱりなっちはほのかので
ほのかはなっちのほのかなの。ウン、これで大正解さ!







おばかなほのかさんも書いてみたv