Honey



「何作ってるんだ?」台所から甘い匂いが漂うので聞いてみると
「ホットケーキ!」とにこやかに元気よく答えが返ってきた。
見ると蜂蜜やらチョコレートやらがどっさりとのっかっている。
「これ、おまえが食うんだよな?」と恐る恐る尋ねると
「もっちろん、なっつんと二人で食べるんだじょv」だそうだ。
「・・・やっぱりか・・・」オレが頭を抱えても仕方のないことだろう。
「なんでこんなにかけるんだよ?!」
「ちょびーっと多かったかなぁ・・?!」
「おまえ顔にも蜂蜜とチョコついてるぞ・・」
「え、どこ?」
「おまえ・・手にもついてるのに顔触ったら・・あ〜あ・・」
「うん、ついちゃったみたい。顔、べとべとする・・」
「しょうがねぇなぁ・・」
「お湯で洗わないとだめかな?なっつん、そこの布巾洗ってくれる?」
「面倒だ・・ほら、こっち向け!」
「ほへ?!」
オレはほのかを両脇で抱えあげ、まずは目の前の左頬を舐めた。
「うぎゃっ!」ほのかが驚いて暴れたので睨みつける。
「じっとしてろ。その手でオレを触るなよ?」
「う・うん・・」
「次、手を前に出せ。」
大人しくなったほのかが小さな両手をオレの前に差し出す。
「まずはこっちだな。」
抱えていたほのかを台所のテーブルに腰掛けさせると右手首を握る。
一本ずつ指を舐めていくとほのかが肩を竦め目をぎゅっと瞑った。
「あんだよ?」ほのかをうかがうとそうっと目を開けて、
「だって、なんか・・どきどきする・・」言う間に顔が赤く染まった。
ここに至ってオレも随分なことをしていることに気付いた。
ほのかがこんなに恥ずかしそうな顔をするのは珍しい。
その顔をもっと見たくて躊躇したがそのまま作業を再開した。
「ほら、そっちの手も。」
「こ、こっちはついてないよ。」
「いいから、出せ。」
そうっと差し出された指のうちチョコのついた薬指だけ舐めて解放してやった。
ほのかはほっとしたように肩を落として溜息を吐いた。
「あとは・・」
「も、もうついてないと思うよ。ありがとなっつん!!」
オレが顔を舐めるようにじっと見つめたせいか、慌てて制止された。
「う・口ん中、甘ったるい・・・」
「舐めたりするからでしょ?!・・ほのかハチミツ好きなんだもん。」
「ちょっとつけ過ぎなんだよ。」
「いっぱい付けた方が美味しいの!いいじゃんか!!」
「いつもそんなだからおまえも甘ったるい味がするんだな。」
「いっつもハチミツつけてるみたいに言わないでよ。」
「そのうち全身ハチミツになっちまうんじゃないか?」
「そんなわけないじゃん!何言ってんの?!」
むきになってまた顔を赤くしながら怒るほのか。
そんなほのかを見ていると何か物足りない想いに駆られた。
上気したほのかの顎を摘まんで持ち上げ、反対の頬と鼻の頭を舐めてみる。
「ほら、蜂蜜ついてなくても甘いぞ?」
言葉に詰まったのか黙ったままでほのかは少し熱を帯びた眼でオレを睨んだ。
「もう・・・ホットケーキ冷めるから食べようよ・・」
「おまえはそれ食っとけ。オレはこっちの方がいい。」
拗ねるようにつんと尖らせていたからオレがそうしても仕方ないと思う。
啄ばんだ唇は他にも増して柔らかくて甘い。
歯止めが利くかどうか戸惑いながら小さな唇を覆うようにして奪った。
先ほどまでの物足りなさが何であったかわかる。
気付けば深く舌を潜らせていて、その味に身体の奥に火が点きそうになる。
オレに縋るように震える手を押し付けてくるので仕方なく離してやった。
眼を開けたほのかは目尻を潤ませ、手は力なくぱたりと落ちた。
「泣くなよ、そんなに嫌だったのか?」
一人熱くなっていたオレを責めているようで居心地が悪い。
「い・嫌じゃ・ない・・けど・・」
「けど、何だよ?」
「こんなんじゃホットケーキ食べられないよ・・」
出てきた文句の内容がよくわからない。
「これから食えばいいだろ?そんなに冷めてねぇよ。」
「味わかんなくなったかもしれないもん・・」
「味が?」
「お口ん中なっつんでいっぱいになっちゃったからきっと味わかんないよ!」
「大丈夫だから食えよ。そんなことで泣いたのか?!」
「違うよ・・なっつん味が消えたらもったいないからだもん!」
「なんだそりゃ・・」
「あ、そうだ!食べた後でまたしてもらえばいいんだよね!?」
「して欲しいならいくらでもしてやるが・・・知らんぞ?」
「そんなにたくさんじゃなくていい・・オカシクなっちゃうもん・・」
本人はそんなつもりはないのだろうが、それは誘い文句と同じだろ?
こいつは相変わらず天然誘い上手な奴で参っちまう。
ほんとに知らないからな?止まらなくなっても。
「で、結局ケーキはどうすんだ?」
「やっぱり食べる!」
「ヨシ、茶はオレが淹れてやる。」
「うん!熱いのお願いね!」
「了解」
くるっと機嫌を直してほのかは台から飛び降りるとケーキを皿に載せ、
オレはコイツ限定の茶葉とカップを出して並べた。
「フォーク一個でいい?」
「ああ、おまえが全部食べるんならそれでいい。」
「ううん、そうじゃなくてあ〜んってするの、なっつんには。」
「それは・・・遠慮したい・・」
「なんで?」
「・・まぁいい・・」
「なっつんにもたくさん食べさせてあげるね!」
「そんなには要らん。」
「まーまー、遠慮しないで。甘かったらほのかで口直ししていいよ?」
「・・・おまえなぁ・・」
「大サービスだよ!」
”わかってねぇな・・その顔は・・・”
あまりに大胆なほのかの誘いに却って悩まされる。
「なっつん食べて、はいあ〜んv」
オレは結局甘ったるいケーキを結構食べさせられた。
その後の「口直し」に期待を賭けて。
問題はそこまで考えてないこの無邪気な奴なんだが・・
甘いケーキと温かい湯気立つお茶とでほのかは満足そうに微笑む。
オレも満足させてくれるのか?舐めるくらいじゃ済まないぞ?
おまえの番だと耳元に囁いたら、まずは耳から味わうか。
ゆっくりと味あわせてくれ、蜂蜜よりずっと甘いおまえを
愛しさは止め処なく溢れてきてはこの胸を満たす
想いはおまえと同じで蕩けそうに甘い









えーと・・・裏行きを踏みとどまったです!!(笑)
甘すぎて痙攣しそうですが、皆さんダイジョウブですか?!
夏くんが珍しくやばい方向へ行こうとするので何度か書き直しました。
なんとかこの辺に止めてみましたけど、指を舐めるのは既にダメ??!
でも子供の顔になんかついてたら、舐めたくなりますよね?!(言い訳)