「瞳の魔法」 


普段覗き込んだりしないようにしてた。
何故かって? どうだっていいだろ。
何かを見透かされそうだなんて言えるかよ!

いつも背が高いから覗きこめなくてさ。
ふとした拍子を待つしかないんだよね・・
どうして目を反らすのかなぁ?


「おまえ・・でかい目開けて何してんだ?」
「これ、三次元アート?ていうのかな・・?」
「3Dアート!?・・ああ、あれか。」
「なっつん知ってる?ほのかコレわかんなくて悔しいんだよね。」
「別に難しくもないぜ?」
「どうしても見えないんだよ〜!」
「焦点をずらすんだよ、どう言やいいかな・・」
「むー!むつかしいよぉ・・」
「コツを掴んだらどれも簡単だぞ。」
「それがわかんないんだもん。」
「まー、別にいいだろ。見えなくても。」
「そうだ、なっつん、できるんならやってみて!」
「オレが?」
「ちょっとなっつんを観察してみるからさ。」
「嫌だ。」
「そんなこと言わずにさ?」
「オレを見てたってわかんねーよ!」
「良い考えだと思ったのに・・」
ほのかはもうちょっとやってみよと借りてきたらしい本に目を落とす。
一生懸命凝視してるが、どうもうまくいかないらしく首を傾げる。
オレはついそんなほのかの頭の斜め上から少し覗き込んでしまった。
手元には幾何学的な模様が規則正しく並んでいる。
本を近づけたり少し遠ざけたりする真剣な表情が可笑しい。
その様子に気を取られてオレは油断していたんだろう。
全く突然にほのかが「あっ!と叫んで顔を一気に上げた。
「見えたっ!!」
「う?!」
どうしてそういう結果を予想できなかったんだろう。
オレはかなり間抜けな顔をしていたのかもしれない。
ほのかの大きな瞳が眼に飛び込んで来てそのまま固まった。
思考と共に視線がほのかの瞳に固定されてしまって身体すら動かない。
ほのかも呆気に取られたような大きな瞳を開いたままオレを見ていた。
しばらく間抜け面して二人で顔を見合っていた。
「・・・・」
「・・・・」
さすがに沈黙と事態に耐え切れなくなり、二人同時に目を反らした。
「あー、びっくりした!なっつんの眼をこんな近くで見たの初めてだ!」
「・・・うるせー・・・何固まってんだよ。」
「なっつんだって固まってたじゃん!」
「お、おまえの目がでかくて驚いたんだよ・・;」
「えー!?ほのかはなっつんの眼が綺麗だから見惚れちゃったよ。」
「う、うるせー!何言ってんだ。」
「あれだね、なっつんは催眠術とか出来そうだよ。」
「何?」
「魔法みたい。身体が動かなくなって時間が止まったみたいだった!」
「・・なわけないだろ!」
「でも嬉しいな。いつも見たいって思ってたんだ。」
「何を?」
「なっつんの眼。背が高くてよく見えないもん。」
「おまえが低いんだろ。」
「失礼な!それになっつん時々眼をそらすでしょ?!」
ぎくりとした。気付かれていたとは思わなかった。
「だから一度じっくり見たいって思ってたの。」
「・・・」
「なっつんの眼の色って不思議ですごく綺麗だねぇ・・」
「・・・だからうるせーって・・」
綺麗だと思ったのはほのかだけじゃないのだが、そんなことよく言える!
こいつはなんだってこう素直にそんな言葉が飛び出してくるんだろうな。
オレは気恥ずかしさで口が利けず、黙ってしまったというのに・・
「もういいや、これ。ずっとやってたから肩こったし。」
一人で納得して本を片付け、喉渇いたね?なんて言ってやがる。
けろっとした顔を見ながら内心の動揺を悟られなかったことに安堵した。
しかし冷静を装ってもさっきのほのかの瞳が頭から離れない。
こいつの言う通り、確かに何もかもが止まってしまったようだった。
あのまま見つめていたらと思いかけて慌てて打ち消す。
どうかしてる・・!
口には出さなかったのに「どうしたの?なっつん。」と聞かれた。
「どうもしねーよ。」
「そう?おっかしいなぁ。空耳かな?」
不可思議な顔をしてほのかが首を傾げた。
やっぱりこいつの瞳を覗いてはいけないんだと思う。
まるで何もかもを曝け出したような気さえする。
「そういえばさ、なっつんどうして眼合わすの嫌がるの?」
「へ?!」
「なんでかなぁっていつも思ってたの。」
「なんでって・・・別に。」
「ふーん?なっつんの眼ならいつでも見てたいのにな。」
おまえはほんとに心臓に悪い。マジで何かの魔法にかかったみたいだ。
「馬鹿なこと言ってんじゃねー!」
「ばかじゃないもん!」
「あんまり人の眼を覗き込んだりすんな。」
「見たいのはなっつんだけ。そんでもダメ?」
「・・ダメだ。誰の眼も覗き込んだりするな。」
「何でよ?!見たいのに。」
「おまえの眼が悪いんだよ・・」
「悪いって何が?何か出てる?」
「・・・ああ、そうだよ・・」
「何なに?!ほのかパワー?ほのかマジック!?」
「何でもいいから。わかったか?!」
「やだもん。なっつんを魔法にかけちゃうんだもんね!」
「ばかやろ。」
とっくにかけられている気がした。馬鹿はオレの方だと思う。
笑ってろよ、もう知るかってんだ!!







思いつき突発。夏くんが乙女だよ・・!(笑)
キスしそうでしない二人でした。で、次はもうちょっと進化して
「魔法のチカラ」ってのを書きます。相変わらずくさくてすいませ・・;