「花〜胸に咲く〜」 


はしゃぎ疲れるなんて 子供
間違えてるだろ 色々
安らぎは求めて得られるものじゃない
オレの傍に在ると思うのがおかしい
果てしない信頼はやはり子供のそれ
いつでも奪うことのできるもの
それら全てを投げ出して眠るなんざ
どうしたってオレには出来ないことだ

毟り取り踏みにじってもいいのか
なのにこの胸に落ちてくるこれは
この重みと温もりは何故
オレを動けなくするのだろうか


「おい、おまえ眠いなら帰って寝ろよ!」
「ふにゃあぁ・・あー、もうダメだぁ・・」
「ここはオレんちだ。我が物顔でソファに寝そべるな。」
「いいじゃん、気持ちいいんだもん・・ちょっとだけ」
「・・・・ったく!おい、ちょっと待てクッション・・」
「いらないー・・・なっつんが居るから〜・・・」
「オレ?・・・って、お、おいっ!!」
「うーん・・なっつん、おやすみー・・・」
「おま・・人を枕代わりにすんな!」
「・・んー・・・?うん・・」
「返事だけされてもな・・」
部活で疲れたってんなら何故オレの所へ来る?
嬉しそうな顔して「だだいまー!」なんて言って
「試合勝ったじょ〜!褒めてほめてー!?」
「はーっ・・・良かったな。」
「溜息は要らないけど、まぁいいや。ありがとー!」
「疲れたからちょっと横にならせて〜!」
「何!?何しに来たんだよ、おまえは。」
「なっつんに会いに来たに決まってるじゃん。」
「・・・別に毎日来ることもねーだろ。」
「あー、なっつん、ほのかに何か飲ませて。のど乾いた。」
「おまえ、何様だよ!」
「ごめんー!だってほのかがしたら怒るじゃん、いっつも。」
「オレが飲みたいからついでにおまえのも用意してやる。」
「あはvご相伴に預かりますー!っとと・・」
「わっ、おまえふらふらしてんなよ、ひょっとして眠いのか?」
「うん、ちょびっと。だいじょぶだよ!・・たぶん」

仕方なく飲み物を二人分用意して居間へ持っていくと案の定だ。
「こら、寝るな!飲み物淹れてきたぞ。」
「はうっ!ね、寝てないよ〜!ちょっと横になってただけさ。」
「ほら、飲め!」
「わー、おいしそー!ありがとう、なっつん。」
「ほれ、おかわりはこれだ。」
「うわ、すごい!至れり尽くせりだじょ!?」
「美味しい〜!なっつんて天才。おかわりー!」
「こんなこと褒められてもちっとも嬉かねぇ・・」
「なんでー?」

いつもと変らない馬鹿みたいな言葉のやりとり。
おまけに飲んで目が覚めたのか試合だのの感想が始まる。
一人でよくこんだけ盛り上がれるなってほどの熱の入りよう。
満足するまで話終えるとまた飲み残しを口にしてソファに転がった。
「あー、満足。疲れたからちょっと休憩。ふーっ・・」
「スカートでひっくり返るなっていつも言ってるだろう!」
「お母さんみたいなこと言う〜!」
「母親の苦労なんぞわかりたくねぇんだよ!」
「お父さんのがいいの?あはは、なんだそりゃ。」
「んなこと言ってないだろ、横になるな。寝るなら帰れ。」
「ちょびっとだけ。お願い、なっつん。」
「だめだ、こら!」

結局押し切られてほのかは胸の中で
オレを枕代わりに眠っている。
すうすうと軽い寝息が規則正しい。
なんなんだろうな、こいつって。
家でもこんな感じなのだろうか。
オレはおまえの家族なんかじゃないんだぞ?
そうだ、こいつの寛げる場所ならもうあるはずだ。
だからオレにそんなものを求める必要などない。
オレには求めても適わないものをこいつは最初から持っている。
なのにほのかはやって来る。毎日のように。
それも嬉しそうに顔を綻ばせてオレを見る。
その顔を心待ちにしてしまうオレがいる。
打ち消しても見れば思い出し心で舌打ちする。
その花の咲くような笑顔は誰のためなんだ。
どうしてそれをオレに見せに来るんだ?


オレの胸にもたれて無防備に眠るおまえを
そうっと息を殺して包んでみると
オレに見せるあの笑顔のような花が咲く
砂地のようなオレの心の中に鮮やかに
いつまでも咲いていて欲しいと密かに願う







え、えっと、いつもと違う意味で甘いです。
甘いっていうよりくさいっつうか・・・;
まだ恋人未満です。今回のは「夏→ほのか」で、
今度は「ほのか→夏」でもう一作書きます。