* Halloween party *


 


新島発案で催されたそのパーティは盛況で、多くの参加者を迎えて賑わっていた。
中でも一番意外な参加者といえば、こういう集まりが苦手な谷本君だ。
なんと言っても「仮装」パーティだし!・・・よく参加してくれたもんだ。
「兼一さん、何不思議そうな顔してらっしゃるの?」
「あっ、美羽さん!・・ふわー・・すごく、その・・似合ってますねー!」
「まぁv兼一さんたらお上手!でも嬉しいですわ、そう言っていただけて。」
お世辞でもなんでもなくて、美羽さんは普段から可愛いけれど、今日はなんと赤頭巾ちゃん!
以前演劇で見たジュリエットよりもずっと幼い感じで、僕はすっかり気に入ってしまった。
「こんな格好って、普段は出来ませんものね?楽しいパーティですわvv」
「うんうんvそうですね。・・ただ、僕はいつもと何故かあまり変った気がしないんです・・」
「え?・・それってミイラ男・・ですわよね?!」
「そうなんです。だけどなんだか師匠達のキツイ修行を受けた後みたいでしょう?!」
ぷっと吹き出して美羽さんが笑った。堪えてる風だけど美羽さんの笑顔は相変わらず可愛くて。
「ご、ごめんなさい!兼一さん。そう言われればそんな風にも見えてしまって・・」
「いやいや・・いいんですよ、美羽さん。思う存分笑ってやってください!」
実際、こんなに可愛らしい笑顔が見れたのだから、僕はお得な格好だったかもと思い直した。
「やぁ、ハニー!今日は食べられないように気をつけないといけないねぇ〜!」
「武田先輩は狼男ですか?!・・う、宇喜田先輩・・・似合いすぎ・・!」
「うるせーな。フランケンが似合うってのは褒め言葉じゃねーぞ!?」
「いいじゃねーか、それはそれで結構イケテルぞ?」
「キ、キサラ!!お・おまえの方がぜ・絶対似合ってる!と、思うぞ。」
「サンキュvおや、坊やはなんだかいつもと変らないねぇ!?」
「・・どーも。キサラさんは魔女・・ではなくてなんかこれどっかで・・なんですか??」
「プリキュアっつーんだってよ。新島が言うには今流行りらしいぜ。結構可愛いだろ?!」
「とっても素適ですわ、キサラさんv」
「おう、おまえもなんか新鮮な格好だな、赤頭巾かよ?!」
ってな具合に皆がそれぞれに仮装パーティを楽しんでいた。
ふと気になって僕は谷本くんを探したけれど、何故だか彼の姿が見えないなと思っていると、
「やぁやぁ、諸君。楽しんでいるようだね〜!」と新島がいつものごとく偉そうに割って入ってきた。
「あ、新島。おまえ・・宇宙人はダメだろ!?仮装でもなんでもないじゃないか!」
「なんだと〜お?!ってまぁおまえもちっとは言うようになったな。感心感心。」
「う・・。あ、おまえ谷本君どこだか知らないか?初めの頃ちらっと見かけたけど居ないだろ?」
「ああ、奴はドラキュラの衣装が似合ってるからちょいと写真に収めて後で売ろうと思ってたらだな・・」
「またおまえはそういうことを・・谷本君せっかく参加してくれたのに悪いだろ?」
「それはおまえの妹に協力を要請したんだよ。一発だったぜ、おまえの妹はすごいな!」
「ほのかが!?・・・なるほど、それで約束させられて連れてこられたのか・・ちょっと気の毒。」
「でもほのかちゃんもさっきから見かけませんわよ?どちらに行かれたんでしょう?」
「美羽さんとさっきしゃべってましたね、そういえば。・・でも谷本君が居ないんならきっと・・」
「その通り。仕方ないから見逃してやったさ。・・・貴重な写真はこっそり手に入れたしな・・ケケケ・・!」
「おまえ!いい加減にしとかないといつかホントに谷本君に殺されるぞ?!」
「まぁまぁ・・俺様に任せとけ。別に悪用はしないさ、俺様の役に立てるだけだからな。」
「それのどこが悪用じゃないんだよ!まったく仕様のない奴だな・・」
「兼一さん、ほのかちゃんを探しましょうか?」
「ああ、ほのかなら大丈夫ですよ、きっと谷本くんの家にでも遊びに行ったんでしょう。」
「あ、なるほど!なら安心ですわね。」
「ええ、いつもきっちり送り届けてくれますし。彼わりとそういうことに真面目だから。」
「うふふvほのかちゃんと谷本さんて本当に仲良しさんですのね!」
「そうなんですよ。昔は僕にさんざん纏わり着いてたのに、兄としては少々複雑ですね。」
「ほのかちゃん、今日は谷本さんとお揃いの衣装だとかでとっても可愛らしかったですわ。」
「お揃い?へーそうなのか!僕、全然気付いてませんでしたよ、さすが美羽さん。」
「蝙蝠とドラキュラでしょう!?とってもお似合いでしたわ。」
「ふーん・・あれ、そうすると美羽さんは・・」
「ふっふっふ・・そうだよ、ハニーv今日はこの僕とペアってことになるんじゃな〜い?!」
「た、武田先輩!ダメですよ!?赤頭巾ちゃんを襲ったりしたら。」
「おや、ミイラ男くん、邪魔する気満々だね〜!?」
「当たり前でしょう!?美羽さん、今日は武田先輩から離れて、離れて!!」
「ま、まぁ、兼一さんったら・・!」
「おーおー、良かったね、赤頭巾ちゃん!?ミイラ男が護ってくれるってよ?」
「か、からかわないでくださいですわ!キサラさんったら。////」
「なんだよ・・おまえら。いちゃいちゃすんなよな・・(うらやましーだろーが!)」
会場には色んなメンバーがそれぞれに楽しんでいて、僕は新島もたまには良いことをするなぁなんて感心した。
まぁ、調子に乗るから、言わなかったけどね。そうそう谷本くんをからかえなかったのは残念だけど。
ほのかと谷本くんもきっといつものように仲良くやってるんだろう。
僕は美羽さんを護るという使命があるから谷本くんほのかを頼むよと心の中で頭を下げた。


その谷本夏とほのかはというと、彼らの会話の10分ほどまえに会場を後にしていた。

「見つけたっ、なっつん!待って待って、どこ行くんだよぅ!?」
「・・・帰るんだよ、アホらしい。」
「ええーっ?!もう帰っちゃうの?なっつんせっかく似合ってるのに・・」
「似合ってたって嬉しくもなんともねーよ。」
「あのねあのね、なっつんのってほのかとお揃いなんだよ、気が付いてた?」
「お揃い?・・・ああ、おまえのそれって蝙蝠なのか。」
「今気付いたのかい!?うーん、まぁいいや。ね、可愛いでしょ?これ。」
「ああ、可愛い可愛い・・」
「なんだい、その気のない言い方は〜!?」
「どうでもいいがついて来んなよ、さっさと着替えて帰るんだからな。」
「待ってってば。まだ言ってないのに!なっつん、『とりっく・おあ・とぅりーと』!!」
「あぁ?!オレは菓子なんぞ持ってねぇぞ。会場戻ってなんか食って来い。」
「なっつんに言ってるの!くれないんならイタズラしちゃうぞ!?」
「持ってねーもんはやれないだろっ!」
「だからぁそんときはイタズラなんだよ、わかってないなぁ!!」
「何でもして来い。どっか他所でな。」
「うもー!そうだ、これも言わないと、『ドラキュラさん、お味見しない?』
「・・・」
「あ、あれ?台詞間違ったかな?!なっつん、何か言ってよ。」
「・・・その台詞、誰に言えって言われたんだ?」
「宇宙人みたいなあの人。そしたらいいもんくれるかもよって・・」
「またあいつかっ?!いいか、もう二度とあいつの半径1M以内に近付くな!!」
「でもなっつんの居場所教えてくれたの。見つからなかったら帰っちゃうとこだったんでしょ?」
「一応約束は果たしただろ。オレはこういうのは好きじゃねーんだよ!」
「うう・・ごめんよ・・なっつんのドラキュラ見たかったんだもん。」
「そんなにオレに噛みつかれたいのか?」
「?ほのかは蝙蝠だよ。吸血鬼って女の人の生き血を吸うんでしょ?」
「おまえも一応女だろ。」
「一応は余分だよ、吸ってもいいけど。って、なっつんホントに吸血鬼だったのかい!?」
「んなわけあるか。冗談だ、とにかくオレはもう帰る。おまえはさっきから引っ張ってるマントを離せ。」
「離さないじょ!ほのかも行くもん。」
「今日はもう遅いから諦めろ。親が心配するぞ?」
「今晩は遅くなるって言ってあるもん。なんならお泊りしてもいいよ?」
「!?・・・終いに噛み付くぞ、コラ。」
「いいよ、生き血でも何でもあげるから。一緒に帰ろ?」
「おっまえ馬鹿なことばっかり言いやがって!・・・今の誰も聞いてねぇだろうな;・・誤解される・・」
「とにかくほのかも一緒に行くのーっ!!」
「引っ張るなって!!はー・・・仕方ねぇな・・ちょっとだけだぞ?すぐ送ってくからな?」
「やったー!ねぇねぇ、着替えないでこのまんま行こうよ。暗いからわかんないよ、きっと。」
「・・・オレは変質者か?・・・おまえ連れてこの格好でか?」
「うんうんvハロウィンだもん、大丈夫だよ。」
「・・・何が大丈夫なんだよ・・・?」
「ねぇ帰ったらもう一回「とりっく・おあ・とぅりーと!」しようね。」
「・・・どうしてもそれか・・・・」
青ざめた吸血鬼の谷本とその相棒の蝙蝠の衣装を付けた兼一の妹はそんな感じで会場を後にした。


「ってわけさ。谷本も苦労してるんだな、おまえの妹天然だもんなぁ!」
「おまえに言われたくない。ほのかは純粋なんだよ!おまえ後尾行たりしてないだろうな?」
「聞いてて恥ずかしいほどのいちゃつきっぷりだったから、そのまま見送ったぜ。」
「・・・まぁ・・いつものことだよ。仲良しなんだ、あの二人。」
「ケケケ・・あのもてもての王子様が裏ではあんなお子ちゃまな女に振り回されてるってのも愉快だがな!」
「そっとしておいてやれよ!彼は真面目だからほのかのことを大事にしてくれてるんだよ。」
「けっ、公認なんてつまらねぇな。駆け落ちくらいの境遇の方が美味しいネタだってのに・・」
「何のネタだよ、何の!?せっかくパーティの礼を言ってやろうと思ったけど、僕が馬鹿だったよ。」
「ふふん、そんでおまえは美羽ちゃんとちっとは進展したのか?え!?どうなんだよ?」
「う、うるさいな。なんでおまえにそんなこと一々報告しなきゃなんないんだ。」
「そう言うなよ、親友じゃないか、俺達。」
「違うだろ?おまえは悪友以外に言いようがない。」
「ケケケケ・・!」

あの夜、ほのかは谷本くんにおぶさって帰宅したらしい。母は恥ずかしかったとか言っていた。
谷本くんはとても申し訳なさそうに謝ったらしいけど、ちょっと見たかったな、それ。
え、僕と美羽さん?!・・・新島には教えなかったけど、ちゃんと護りきったよ、赤頭巾ちゃんを。
進展・・?!・・・あのね、そんな簡単にあったら嬉しくて黙っていられないよ、まったくもう!
だけど帰りに「兼一さん、今日はありがとうございました。狼さんから護ってくださって。」って言ってくれたんだ。
にっこり笑った赤頭巾の美羽さんは天使より女神よりずっと綺麗で幸せそうで・・僕は満足さ♪








初めての兼一×美羽メインです!(夏ほのがかなり出張ってますがv)
兼ちゃんと美羽ちゃんのちょっとおとぼけなカップル、可愛いですよね!?(好)
また書いて見たいと思ってます。ハロウィン記念ってことでフリーにしました。
もちろん、お持ち帰り報告いただけると大変嬉しいデス!!(礼)