「強引なキス」 


「そんなのアリエナイな〜!?してもらいたいくらいだよ!」

なっつんといわゆる”両思い”ってやつになったのはわりと最近。
でもそれまでと変ったことってあんまりないんだよね、実際。
友達は不思議がるけど、別にいいじゃんね?おんなじだって。
そんでもあれだよ、ようやくチューvはしたんだよ!!快挙だ。
嬉しくってね、眠れなかったよ。すんごく緊張したけどね、お互いに。
どきどきは指の先まで届いてた。照れて二人して目をそらしたり。
なんだか、あったかかった。なっつんの傍はね、いつもそうだけど。

「でもさ、たまにはこう・・強引なのもイイよ?」なんて友達が言ってた。
そうかな?ほのかは思わないけど。だって、想像もつかないしね!?
どっちかっていうと、ほのかの方がせっきょくてきだと思うしさ。
でもいいんだ、そんなオクテななっつんがカワイイもの!
へろへろ笑ってたらしくて、部屋に入った途端「なんだ、その顔は!?」だって。

「あー、ちょっと幸せを噛締めてたとこなんで・・いーじゃん。」
「まぁいいが、それより用ができた。送って行くから今日は・・」
「何ー!?聞いてないよ、なんだいそれ!?」
「仕事だよ。オレの会社だから一応な。」
「ぶーっ・・・ツマンナイ!・・そうだ、会社行くんならほのかも行きたい!」
「アホか、遊びに行くんじゃないんだぞ。面白いもんもなんもねぇし。」
「用事終わるまで一人で見学してるからさぁ、ねぇねぇ、お願い〜!!」
「・・だ、め!気になって仕事どころじゃねぇし・・・」
「大人しくしてるからさぁ!それに将来就職するかもしんないでしょ?!」
「はぁ・・・ホンっとに大人しくしてるんだな?!」
「ほのかだってもうそれくらいできるさぁ!」
「・・・どうだかなぁ・・・」

渋々だったけど、許してもらって着いて行ったんだけど・・ちょっと後悔した。
まずびっくりしたのは受付のお姉さんたちの美人なことといったら・・・
でもってでっかい会社のあっちこっちに美人がウヨウヨ・・どういうこと!?

「・・まさか、採用はなっつんが顔とかで決めてるんじゃあ・・?」
「んな訳あるか、ボケ!いいか、秘書を一人連れてくっから、言うこときけよ!」
「ウン・・わかったよ・・・」

「あのー・・秘書って何人くらい・・いるんですか?」
「そうですね・・部署ごとにですから、かなりの数が・・」
「皆、お姉さんみたいな美人ばっかりなの?」
「まぁ、ありがとう。男の人も居るけどね。」
「・・ふぅん・・・」
「お茶でも飲む?えーと、ほのかちゃん?」
「ウン・・・」

見晴らしの良い広いお部屋に連れて来られた。そこはなっつんの部屋らしい。
お茶とお菓子をもらい、しばらくそこで休憩すると言って一人にしてもらった。
なんだかどーっとくたびれた。会社なんて全部こんな感じなのかな・・?
そういえばお父さんの会社も場所は知ってるけど行ったことはなく、よくわからない。
お手洗いを探して見つけると、今度は女子社員の会話がまた落ち込ませてくれた。
なっつんのことだった。人気者だね。まぁ・・確かに若いし、独身だし〜?!
なんだかむかむかして部屋へ戻ろうとしたけど、・・・どっちから来たか忘れた。

「!?あ、あれ?やっぱ違うな・・そもそも何階だったっけ・・?」

溜息が出た。なんか・・よくこんな詰まんなさそうなとこで仕事してるね、皆。
歩きくたびれて座っていたら、社員さんの男の人に声を掛けられた。

「お嬢ちゃん、ここで何してるの!?」
「・・・大人しくしてるの。」

なんとか元の部屋に戻れた。親切な人で助かった。迷子は内緒にしてくれるって。
でも元気が出なくて、ぼけっと高いビルの窓から外を眺めていたらなっつんが来てくれた。

「大人しくしてたか?・・・って、どうした?」
「え・・?もしかしてほのか疲れた顔してる?」
「・・・何かあったのか?もしかして迷子になってないかと心配してたんだが・・」
「や、やだねぇ、そんなことあるわけないよ!?」
「じゃあなんでそんなげっそりしてんだ?退屈だったら送らせるって言ったろ。」
「・・やだ、待ってる。まだまだ掛かるの?」
「う・・いや、もうちょっと待ってろ、切り上げてくるから。」
「いいよ、無理しなくても。ずっと待ってるから。」
「やっぱなんか変だな・・熱もないみたいだが・・」
「ないよ。もう・・いっつも子供扱いなんだからさ、なっつんて。」
「ちょっと元気戻ったか?じゃあな、もう少し待ってろよ。」
「らじゃっ!あ、そうだ、女子社員に誘惑されないでね?」
「はぁ!?・・アホか。なんでそんな・・」
「この会社女の子が多すぎだよ。なんとかならない?」
「男の社員数の方が多かったはずだが・・?」
「ホントにィ〜!?」
「何訳わかんないこと言ってんだ。じゃあな!」
「お疲れさーん・・・」

ちっともわかってない風なのが嬉しいやらなにやら・・・
何して待ってようかなと思ったら、さっきの秘書さんが戻ってきた。
ゲームやら雑誌やら持ってきてくれた。このお姉さんも親切な人だ。
お礼を言うと、なにやらほのかの顔を見てにこにこしてるから気になった。
もしかしてほのかのこと、妹かなんかとなっつん言ったんじゃ・・?
それでほっとしてるのだろうか、なんて思ってちょっとじとっと見ていたら、

「社長さんの違う面が見れたわ、貴女のおかげで。」なんて言われて驚いた。
「・・どういうこと?」
「若いのにとってもクールなイメージだったんだけど・貴女のこと・・」
「イタズラ好きの妹とか言ったんでしょ!?」
「いえそうじゃなくって、迷子になるかもとか、すごく心配してて。」
「ナニー!?失礼だなぁ、いっつもそうだけど。」
「そわそわしてるところなんて初めて見たからおかしくって!」
「そうなんだ・・イイカッコしいだからねぇ。」
「それに『可愛らしいお嬢さんですね?!』って言ったら、『見た目に騙されるな!』って。」

秘書のお姉さんは堪え切れないといった感じで噴出した。とても可笑しそうに。

「あんな歳相応なお顔もされるんだって思って・・」
「ふーん、でもそんなに可笑しいこと?」
「ごめんなさい、なんだかとても微笑ましかったものだから。」
「ほのかの前ではいつもあんな感じだよ?」
「・・きっとウチの女子社員は皆がっかりね、社長ファンが多いから。」
「あ、やっぱ会社内でももててるの!?」
「心配しなくて大丈夫よ、社長はそんなこと気付いてもいないから。」
「そうなの?」
「私は逆に好感を持ってしまったけど。安心してね、彼がいますから。」
「・・・なんだ、心配してたのばれてたんだ・・・」
「ふふ・・なんにも心配いらないわよ、きっと。」
「ありがとう、貴女もとってもいい感じ。これからもヨロシクね!?」
「ええ、宜しくお願いします。」

そんな話をして、すっかりその人と仲良くなった。一緒にオヤツも食べて。
戻ってきたなっつんがびっくりしてた。ほのかの機嫌が直っていたからだ。

「お帰り。お仕事お疲れ様v」
「・・・あぁ、帰るぞ?」
「ウン!帰ろ、なっつん。」

帰るとき、エントランスホールのあちこちから、女子社員の監視の目が見えた。
さっきの秘書さんが教えてくれたのだ。なるほど、ほのかのことが気になるらしい。
だから、ちょっと計画したことを実行に移してみた。皆見てない振りしてる今だ!

「なっつん、ここでキスして!」
「はぁっ!?冗談じゃ・・・」
「してくんないなら、ほのかから強引にしちゃうぞ、それでもいい!?」
「んな・・どうしたんだよ、一体!?」
「なっつんとほのかの関係が皆気になるらしいから、教えてあげるんだよ。」
「・・・皆って・・?」

わかってないなっつんを引っ張って、無理やり顔を下に向けさせた。
ほっぺにしようかと思ったけど、この際だと思い切って唇目掛けて飛びついて。
なっつんが目を白黒させてたけど、無視。ぶつかったみたいでちょっと痛い。

「コラ、ナニすんだ!?」って言うなっつんはみごとに紅い顔をしていた。
それを見てにっこりと微笑んだ。強引なキスもたまにするのはいいかもしれない。
たくさんの溜息をバックになっつんに引っ付いて会社を後にした。気分イイv
ちょっと振り向くと、さっきの秘書さんがぐっと親指を立ててウインクしてた。
だからほのかもそれに倣って、ウインク。そして大きく手を振った。

「なっつん、ほのかこの会社気に入ったよ、やっぱ就職しようかな!」
「オマエに会社勤めなんてできんのかよ・・・けど他のとこ行くよりはマシか・・」
「そうだよ、心配症ななっつんのためにもここがいいな。」
「・・・・仕方ない、採用してやる・・・」

なっつんは長くて深い溜息を吐きながら、そう言った。やったね☆就職先ゲットだよ!
よーし、ガンバってほのかもイイ社員になろうっと。ヨロシクね、社長さんv











夏ほのでギャグっぽく。強引なキスを夏くんがするとなると裏になるかと・・(笑)
もしかしたら裏でも書くかもしれません♪(どうしようかな〜vv)