「どっちが勝ち!?」 


まーた懲りずにきやがったなとオレは心の中で呟いた。
息を潜めているつもりだか知らないが、丸わかりだ。
まぁ素人なんだから気を消せないので仕方ないだろう。
最近思いついた遊びらしいが、オレにはかなり馬鹿らしい。
オレのスキをついて弱点を見つけるとかなんとか・・・
「なっつんにだってあるはずなのだ。ほのかガンバル!」
「・・やれるもんならやってみろよ。」
半ば諦めとともにその提案を受け入れた。
何故ならコイツが止めろと言って素直に止める訳がない。
諦めてもらうまで付き合うしかないと結論付けたのだ。
そんなこんなでオレの背後からほのかは何度も襲って来る。
ワンパターンな攻撃を懲りずに繰り返し、ご苦労なことだ。
かわすのに飽きてオレはほのかの細い腕を掴んで引っ張った。
大した力を入れてはいないのにほのかはバランスを崩す。
「わっ!っとと・・」
小さな悲鳴とともに凭れかかってきた身体を背中で支える。
柔らかさを感じはしても重みと言える程のものは感じない。
「・・いい加減飽きねぇか?」
「なっつんてばほのかと居るときくらいもっとリラックスしたら?」
「別に緊張してないぞ。」
「そぉかなぁ!?つまんないじょ・・!」
口を尖らせ不満顔を見せるほのかはまだ懲りてないようだ。
「大体オマエにスキをつかれるようじゃオレもお終いだっての・・」
「今だっ!コチョコチョ!!・・・あれぇ?くすぐったくない?」
「別に。」
「なんと!なっつんてば不感症だったのかい!?」
「阿呆、もう諦めろよ。馬鹿馬鹿しい・・」
「もしかして・・我慢してるの?ねぇ、ほのかのことちょっとくすぐってみて?」
「何でそうなる!?」
「我慢て出来るのかなぁって思って。力入れてみるよ、ホラ、どうぞっ!」
「あのな・・なんでそんなことしなきゃならないんだ。お断りだ。」
「そんなこと言わないでさ。モノは試しだもん。」
「嫌だって。そんなこと出来ねぇ。」
「ちなみにほのかの弱点は脇と腰と耳とねぇ・・」
「どんだけ弱点だらけなんだよ!?ってか、んなこと言うな。知りたくもない!」
「・・言われてみると弱点が多いじょ。」
「はぁ・・いいか、そんなことは誰にも言うな。わかったか?」
「堅苦しいなぁ。くすぐりっこなんてお遊びじゃないか。」
「女友達とでもやってろ。オレに振るな。・・・ったく・・」
「男の子としちゃダメなの?お兄ちゃんとならいい?」
「・・・するな。」
「えぇ〜!?根拠は???」
「・・・そ、そういうことは・・その・・オトナになってからだ。」
「んん?!どうしてさ?!」
「ウルサイッ!とにかくダメなものはダメなんだよ。」
「!?なっつんのケチー!わがままー!不感症ー!!」
「その最後の台詞も禁止だ。どこで覚えたんだ、意味も知らんくせして。」
「?・・字に書いたまんまじゃないの?・・違うのかい?」
「・・オマエはそんなこと知らなくていい。」
「時々なっつんがほのかをものすごーくお子ちゃま扱いするのが不満だー!」
「事実お子様だろ!?何今更なこと言ってんだ。」
「失礼なのだ。そんなに歳変わんないくせに。」
「年齢関係ない。」
「ナニそれ!わっかんないじょ!どういう意味さぁ!?」
「お子様だと言われた意味がわかるようになったら教えてやる。」
「むずかしい・・ズルイじょ・・??」
「難しくない。」
「むーん・・仕方ないなぁ・・でも面白くないのだ・・」

ほのかは納得してはいないようだが、大人しくなってオレに凭れかかった。
柔らかい腕と身体が熱を持ってオレを包み込む。
知らず顔が紅潮していく。コイツの一番の攻撃と言えるかもしれない。
耳元で溜息を吐くなと言うんだ。めちゃめちゃ・・くすぐってぇ。

「おや?なっつんてば、顔紅くない?!」
「・・ない。気のせいだろ。」

オレは思い切り顔を背けたのだが、ほのかの顔が追いかけて来る。
もたれかかっていた腕には力が篭ってオレを抱きしめる格好だ。
大した力でもないのに何故か息苦しい気がして更に顔を反らせた。

「なっつん、こっち向いてよ。顔見えないじゃんか。」
「別に見なくていい。オマエ顔近づけるなよ。」
「いいからこっち向くの。なっつん、言うこと聞けー!」
「わがままばっか言ってんじゃねぇっ!離せこの馬鹿!」
「やだもん。ほのかの方を向くまで離さないもんね。」
「〜〜〜〜;離せよ・・暑苦しい。」
「今暑くなんかないよ。なっつんが熱いんじゃないの?」
「なんでだよ!?」
「引っ付いてたら体温上がったみたいだもん。」
「!?・・なことねぇ。」
「へっへぇ〜わかったじょ・・なっつんはここらへんが弱点なのだなぁっ!?」
「ちっ違う。何言ってんだ。」
「むきゅーっ!」
「わあっ!?やっヤメロっ!!」

離すどころかほのかはオレのクビを更にきつく囲んで頭を擦り付けた。
髪が頬をかすめて余計にくすぐったい。なんとかしてくれ!

「ふへへ・・なっつん、降参?」
「・・降・・参・・するから・・離してくれ。」
「やったー!なっつんの弱点げっとだーっ!!」

ほのかの身体が一気に離れて、オレは胸を撫で下ろした。
わけのわからない汗をかいちまったぜ。胸まで・・おかしい。
ほのかが勝利宣言して万歳なぞをしているのが腹立たしい。
確かにくすぐったかったが、そのことに耐えられなかったのじゃない。
では何に耐え切れなかったかということをどう説明すればいいのか・・
ほのかの勝利を否定したかったが、答えに窮してそう出来ない。
複雑な気分を噛締めながら嬉しそうにはしゃぐほのかを見つめた。

「これでいつでもなっつんを攻撃出来るじょ。」
「するな!阿呆。」
「ふっふっふっ・・もう遅いのだ。なっつんて首がダメなのだね?」
「・・・・そういうわけじゃ・・」
「よっし。今度はいきなりで驚かせちゃおうっと。」
「オマエ・・オレをどうしたいんだよ・・?」
「遊びたいのだよ?」
「・・そうかよ!(オレはオマエのおもちゃか!?)」
「なっつんもほのかのスキを突いて来ておっけーだからね。」
「あぁっ!?」
「あ、でもちゃんとお返しは倍とかにするから覚悟しとくように。」
「・・・オレからは遠慮したい・・んだが?」
「なんで?フェアに行こうよ。なっつん」
「フェアって・・結局勝負なのか?遊びとか言ったが・・」
「真剣勝負の遊びなのだよ、モチロン。」
「・・・あ・・そ・・・」

よくわからない理屈を主張するほのかに呆れて言葉が出ない。
オマエのスキを突いてって・・さっきみたいに抱きしめろって?
耳元に頬を寄せて、息を吹きかけろって言うのか?
それともいきなりくすぐったりしろっていうのかよ?オマエの弱いところを!?
オレは少し想像しかかって眩暈を感じた。・・・出来るかよ!?

「ありゃりゃ?なっつんどうしてそんなに眉間に皺寄せて悩んでんの?」
「どうもこうもねぇよ。」
「遊びなんだからそんなに考えなくていいじゃん?」
「真剣勝負と言ったぞ?」
「もう〜、真面目だねぇこのコは。いいからいいから。」
「何がいいんだよ!?」
「ほのかとなっつんの仲なんだから遠慮はいらないってことだよ。」
「どういう仲だってんだよ!?」
「うーんと仲良し。最上級。でもって・・最強コンビなのだ。」
「いつからそんなことになったんだよっ!?」
「いつかはわかんないけどそれで決定なのだー!」
「勝手なことばっかほざくなーっ!!」
「人にわがまま言うなって言うくせにわがままだねぇ!」
「あのなー・・」
「スキありっ!」
「うあっ!!」

ほのかは今度は正面から突進して来た。猪のごとくだ。
思わず受け止めたがほのかの頬がオレの頬にくっついて・・

「すりすり攻撃なのだー!」
「!?〜〜〜」
「およっ!?」

柔らかな頬と髪があまりにもその・・くすぐったかったのと、
この憎たらしい生き物をどうしてやればいいのかと悩んだ末、
オレは思い切りほのかの小さな身体を抱きしめてしまった。
その心地良さをなんとか誤魔化そうと必死で神経を研ぎ澄ます。

「・・こんの・・ボケ。どうだ、動けないだろうがっ!」
「むむぅ・・やるな、なっつん。動けないじょー・・!」
「ちっとも懲りてねぇな?」
「勝負はこれからなのだ。」
「何!?」
「えいっ!」
「!!」
至近距離でぶつかるのを避けたがほのかは頭突きで対抗しようとしたらしい。
しかし失敗してどこかを擦ったらしく「イタッ」と小さく悲鳴を上げた。

「大丈夫か?」

油断した。まさかまだ攻撃が続いているとは思わなかったのだ。オレは・・甘い!

「うへへvvなっつんの顎にチュウしてやったじょ。」
「ぉまえ〜!」
「なっつんは詰めが甘いじょ。最後まで気を抜いたらいけないんだよ?」
「くっそー・・・!」
「まだまだだねぇ・・ほのかの勝ちィv」
「・・・覚えてろ。」
「ん?いいねぇ、そう来なくっちゃ。」
「オマエいつか負けたと言わしてやるからな。」
「出来るのかなぁ?!なっつんのくせに。ふふーんだ。」
「むかつく!マジでむかつく!!」

ほのかの頭を思い切りかき回してやった。猫っ毛が手に絡むのもお構いなしに。
あははと声を立てて笑うほのかは全然困った風ではなかったが、
嬉しそうな顔を見ていると胸の奥が何かに突かれたように痛い。
いつか・・・ホントに・・・泣かせそうで少し・・怖い・・けど・・

いや、やっぱり負けてばっかいられるかよっ!いつか勝つ!!







サア皆さん、ご一緒に。「こんの○○っぷるー!」←恒例になってまいりましたねv
まだ無自覚な夏くんといちゃつくほのかでございます。いい加減にしなさいです。
もし傍で見てたら居た堪れないと思いますが、それでもカーテンから覗きたいですか?
いやそんなことおっしゃった方がおられましたのでね。私は遠慮しときます。(笑)