「ドキドキがいっぱい」 


なっつんと一緒に居るのは出逢ってからずっと居心地良かったんだけど、
近頃どうも変なんだよね、どきどきしたりなんかしてさ。
それでなんだかそれが悔しい気がするからなっつんを虐めるのが日課なのだ。
どうやって虐めるかというとだね、『なっつんチューしてあげるv』とか言うと、
それはもう全力で嫌がるんだよね、『止めろーっ』って怒鳴ったりして。
リアクションが面白くてついやってしまうのだけどさ、考えてみると失礼だよね?
もしかして本気で嫌なのかな!?と思うと胸の”どきどき”が”ずきん”に変るの。
ホントに嫌なら・・・どうしよう・・って思って聞けなかったりするんだ。

「おい、ちょっと離れろ。」
「え?なんで!?」
「なんで、じゃねぇよ離せ。」
「いいじゃないかちょびっとよっかかるくらい。最近冷たいじょ・・」
「馬鹿言ってんじゃねぇ。オマエ最近引っ付き過ぎだろ?」
「そうかなぁ?」
「後ろからいきなり抱きつくとかも止めろよ、・・・当るし・・」
「何が?制服のスカーフ止め?!痛かった?ごめんね。」
「違・・;ついでに言っとくがいきなりオレの膝に乗ってくんな!」
「前からしてるのに・・はっ!もしかしてほのか重くなったかい?!」
「そういうことじゃなくて・・とにかく少しは遠慮しろよ!」
「なんで遠慮なんてすんの?なっつんとほのかの仲じゃないか。」
「どんな仲だよ・・」
「とっても仲良しv」

なっつんが鼻と眉に皺寄せて変な顔したのを見てほのかもちょっと考えてみた。
仲良しなのにくっついてはいけないなんてオカシイよね?もしかしてなっつんて・・
触られるのが苦手なのかな?・・むむ、それならほのか酷いことしてるのだろうか?

「何変な顔して考えてるんだよ?」
「じゃあさ、なっつん頭撫でて?」
「頭を?・・なんでそうなるんだ。」
「今気付いたんだけど、なっつんの方からは最近ほのかに触ってくれないよね!?」
「さ、さわっ・・!?前まで触りまくってたみたいに言うな、人聞きの悪ィ・・」
「触ってたじゃん。ほのかがくっついても文句言わなかったし、抱っこもしてくれたのに!」
「だっ・・いつオレがそんなことしたんだよ!?」
「ほのかが膝に座ってるときとか抱っこしてくれたことあるよ・・覚えてないの!?」
「あ・あぁ・・いやだからそれはおまえ・・大分昔の話だし・・」
「そうだよ。だから物足りないの。最近はしてくれなくなったもん。」
「・・それは・・おまえも多少・・育ったし・・」
「そんなに背も体重も変ってないよ?なっつんの方がどっちかっていうでっかくなったじゃん。」
「や、だから・・その・・」
「寂しいからもっと触ってよ!でないとチューしちゃうぞ!?」
「さっ触れっ!?・・おま・・うわ、コラ!やめろ!!」
なっつんの首に腕を巻きつけてほっぺめがけて顔を近づけるとなっつんはずいっと後ろへ身を引いた。
「いい加減にしろ!」
「チューしたいからするのっ!!なっつんじっとしてっ。」
「それは待て、ヤメロ。・・頭撫でてやるから。」
「ウンv待つ。だから撫でて!」
「オマエさぁ、触れとかそういうヤバイコト言うなよ・・」
「ヤバイって何が?ほったらかされてるほのかの方がよっぽど困るのだよ。」
「困るだとぅ〜!?おまえが何困るってんだよ?」
「そうだ、”よっきゅーふまん”なのかもしんない。」
「よっ!?・・なんつう・・・こと・・」

なっつんの顔がものすごい勢いで赤くなった。でも咽なくてもいいじゃん?

「触ってくれないならチューくらいさせてよね。」
「なんでそうなるんだ!?マジで言ってんのか?」
大慌てのなっつんなんてこの際無視してみた。本能のままに行動だよ。
ほのかが顔をぐっと寄せるとなっつんが息を呑むのがわかった。
それでなんだかちょっと傷ついた・・・だから止めにしてなっつんの顔を見た。
そしたらなっつんとかなりの至近距離で目が合った。おお・・綺麗な眼だなぁ・・
なっつんはとっても綺麗なお顔してるなぁと今更なことを確認して見惚れた。
ぽけっと見ていたら、さっきまでおろおろしていたなっつんの腕を腰に感じる。
やんわりと包むように身体が引き寄せられたのでちょっとびっくり。
なっつんもほのかの顔を覗き込んできたので胸がまたどきどき鳴り出した。

「なっつん?なんかものすごく嫌そうだと思って止めたんだけど?」
「ああ、止めとけ。どうしてもしたいんなら・・」
なっつんは嫌だったんじゃないの?おかしいな、すごくさっきは嫌がってたのに・・
ほっぺじゃなくて口が・・なっつんとほのかのがくっついちゃいそうだよ?ねぇ・・?
つい顔を引いてしまった。いつもと逆になっちゃった。
「嫌がったじゃねーか、オマエ。」
「え・・今・・ホントにくっつけるつもりだったの!?」
「どっちなんだよ?オレの方からされるのは嫌なのか?!」
「・・・もしかして・・なっつんの方からしたかった、とか?」
「そうだと言ったら?」
「・・あの、でも今の・・目的地がほっぺじゃなかったんじゃぁ・・?」
「そこもしたけりゃ追加してやる。」
「・・あ・あれ〜?・・なっつんは嫌なんじゃなかったの?」
「オマエは欲求不満だとか言ってたが違うのか?」
「うん・・言ったけどさぁ。」
「けど、なんだよ?」
「なっつんからだと・・どきどきしちゃうんです・・ケド。」
「ふーん、オマエからなら平気なわけだな?」
「う、うん。なんでだろ!?不思議だ、イリュージョンかい!?」
「何言ってんだよ・・オレに触れとか言っておいて・・」
「あ・・そだけど、触るってソコなの?!」
「何処を触れとは聞いてねぇ。で、どうすんだ!?」
「うあわわ・・どうしよう!?」
「この大ボケ!!なんっも考えねぇからこうなるんだぞ!」
「だってだってなっつんが触んなくなったのは事実でしょー!?だからその〜;」
「オマエみたいに触りたいとかキスしたいとかって何処でも触ってたらセクハラじゃねーかよ。」
「ちょっ、待ってよ、ほのかもしかして犯罪者!?ち、痴女ってことなのー!?」
「痴女って・・・それは違うと思うが・・」
「そ、そっか・・よかったのだ。ふぅ・・」
「だからオレにされて嫌なことはオマエも遠慮しておけ。」
「あ、やっぱり嫌だったんだ・・」
「?・・嫌がったのはそっちだろ?」
「ほのかはちっとも嫌じゃないよ。さっきから言ってるじゃんか〜!」
「だってオマエさっきは・・」
「口にくると思わなかったからちょびっと・・慌てたのだ・・嫌じゃないよ。」
「・・・ホントかよ?」
「なっつんこそほのかがくっつくと嫌がるのってホントはどうなの?傷つくんだよ、アレ。」
「・・・それはその・・慌てるんだよ、オレも。その・・嫌じゃねぇ・・けども・・」

なっつんとほのかはお互いにもう一度顔を見合わせたあと、ばっと顔を反らせた。
なんだか顔が熱くて、妙に照れくさい。何やってんだろ、ほのかとなっつんてば。

「う〜ん・・じゃあどうしよう?なっつん。」
「な、何をだ?」
「触って欲しいのは嘘じゃないけどさ、いざとなるとどきどきしてさぁ・」
「・・・どうしろってんだよ・・?」
「かといってひっつくのを我慢するのもツライしなぁ!」
「そぅ・・かよ・・;」
「ああもうどうしよう!?なんでこんなにどきどきすんの?むかついちゃう!」
「オレだってなぁ、むかつくんだよ、ひっつかれるのは。」
「ええっ!?さっきは嫌じゃないって言ったのに!」
「オレだって触りた・・・いのを遠慮してんのに、って思うとむかつくんだよ!」
「触ればいいじゃんか、前みたいにさぁ!?」
「そんな簡単に言うなよ!」
「恥ずかしがるから恥ずかしいんだよ、前は自然に触ってたでしょ?」
「うっせーな、オマエだってドキドキするっつってんだろ?!」
「あっそーか・・・そうなんだよね・・ねぇなんでこんなにどきどきするようになったかな?」
「・・・わかんねぇのか?」
「ウン・・なっつん知ってるんなら教えてよ。」
「・・・やだね。誰が教えるかよ。」
「むっ感じわる・・なんでなんでなんでなんでーっ!?」
「絶対教えてなんかやらねぇっ!!」
「なんだとー!?っ・・・・・・」




「心臓止まったよ、絶対。ヒドイよなっつん・・」
「お互いさまだろ。うるせーともういっかいふさぐぞ。」
「・・ぷぷ・・でもさ、二人いっぺんに止まったら大変だね?」
「・・冗談じゃねぇな。これくらいで止まってたら・・」
「なんで?もうこれ以上どきどきしない?」
「・・・しなくなったら・・つまんねぇし。」
「それもそうだね!?なっつん、もっとどきどきしちゃおうか!?」
「・・・オマエ、何にも考えてないな、やっぱ。」
「考えないとダメなの?ほのかは考えるのは苦手。だけどさ、わかるよ?」
「・・何がわかるって?」
「このどきどきはなっつんと居るときだけだってことだよ。えっへん!」
「・・・こんの・・・天然!」


なっつんともういっかい触れている間ずっとどきどきしてた。
そしてこれからもずっとどきどきしていたいなって思った。
指先まで痺れるくらいどきどきして・・スゴク嬉しかった。
「わかったっ!ほのかなっつんのこと好きなんだ!ものすごーく。」
「・・・あっそ・・」
「えぇっ!?何その感動の無さ!」
「今更なこと言ってるからだ・・」
「ふっふっふ・・いいのかい、もう一つわかったんだじょ〜!?」
「ハイハイ、ナンデスか?」
「む、やな感じ。そんでもってなっつんもほのかが好き、なんでしょおおっ!」
誇らしげに宣言してやったのになっつんはちっとも感動してくれなかった。
「あり・・?なんで?!・・これってビッグな発見じゃあなかったのかい?」
「ちっとも。」
「そうなの?」
「オマエが鈍すぎんだよ。」
「え〜?!」
「まだまだ足りないみたいだな?」
「え、何が?・・どきどき?」
「ああ。」
「そっか、そんなら・・これからもっとスゴイ発見があるかもしんないね?」
「そうだな。」


こんなどきどきがこれからもいっぱい続くんだね?って聞いたら
久しぶりにいっぱい抱っこしてもらえたのだ、ほのかもう感動だ〜!
え、何に感動したかって?それはねぇ・・・
抱きしめてくれたなっつんの胸もどきどきしてたんだよ、おんなじように。