CHOCOLATERIE 


イメージってのはどんなものにもあると思う、人それぞれに。
なっつんは”甘い”というのかな、チョコレートみたいな気がする。
そう言うと眉間に思い切り皺が寄ったのでちょっと驚いた。
嫌なイメージじゃないと思うけどな?どうも気に入らないみたい。

「そんな”甘ったるい”のはどっちかってーとオマエだろ。」
「ほのか?!・・いやいや、ほのかはこう・・小粒で辛いとか・・」
「山椒か?それよかやっぱチョコとかそーゆうモンだろ?」
「そおかなぁ・・?なっつんだよ、甘くて見た目黒いけどやーらかくてさ。」
「もうちょっとマシなもの思い浮かべろ。そんなこと初めて言われたぞ。」
「他にはどんな?王子様はなしだよ。」
「・・・どんなって・・・とにかくもう少し・・他にないのか?」
「セルフイメージだもん。なんでもいいじゃんか。」
「・・まぁ・・そう言うんなら勝手に思っとけ。」
「ウン、こういうのって人それぞれなんだよ、きっと。」
「食いモンに例えられるとはな・・」
「悪い意味じゃないし、もっとカッコイイのが良かったってことかい?」
「フン!別に。」
「んー・・食べ物以外だと〜、なんだろな?お花かな?胡蝶蘭とかどう?!」
「どこが”カッコイイ”んだよ!?」
「君子蘭のほうがいいかな?きりっとしててキレイだよ。」
「オマエのイメージって・・・オレはそんな女みたいなのかよ・・?」
「男も女も関係ないよ。そだ、ほのかはお花だったらどんな感じ?」
「知るか・・せいぜいアザミくらいだろ?」
「おお!いいね、アザミ好きだよ、ありがとうv」
「・・・意外に地味な趣味だな?」
「ひまわりとかも言われたことあるけど、アザミもいいよね。」
「向日葵・・ふーん・・言ったの誰だよ?」
「忘れた。楓ちゃんはコスモス?とっても可愛い花だよね?」
「・・コスモスは好きじゃねぇ。」
「へ!?なんで・・?」
「なんでもいいだろ。ウッセぇんだよ!」

なっつんはむっすりと黙ってしまった。昔のことを思い出したのかな?
ホントに楓ちゃんのことになると・・・お兄ちゃんだよねぇなっつん・・・
最初に思ったチョコレートは”お兄ちゃん”というイメージも強いかもしれない。
心も身体も元気にしてくれて、頼もしい味方って感じがおにいちゃんみたい。

「なっつん、なんだか今日はチョコレートが食べたい。」
「・・だろうと思ったぜ。アイスならまだあったがチョコは・・」
「ハーシーのちょこそーすをアイスにかけようよ!パフェみたいにさ!?」
「へぇへぇ・・」
「そだっ!ほのかはウエハースとかビスケットだったらなっつんの隣に居る感じ。」
「またそれか・・・よくそんなこと次々と思いつくよな、オマエって。」
「楽しいじゃないか。」
「くだらねぇ。」
「くだらなくないもん。」
「ガキっぽい。」
「ガキっぽくない。」
「フン!」
「ベー!」

オヤツのチョコパフェはすごーく美味しかった。幸せだ〜!
そう言って満足してるとちょっと呆れたようになっつんは鼻で笑った。

「なぁに?なっつんまた失礼なこと考えたんでしょお!」
「別に。どんなこと思おうと自由だろ。」
「そうだけど、悪いこと思ったら身体に良くないんだよ。」
「悪いことでもねぇから安心しろ。」
「じゃあ何考えたか教えてよ?」
「チョコアイスならやっぱオマエのイメージだと思ったんだよ。」
「・・・ちっとも悪くないじゃないか・・!」
「だから違うと言ってるだろ!?」
「ごめんよ?鼻でふんってするから誤解しちゃった。」
「フン・・」
「あーそれクセだよね、なっつんの。つまりチョコがなっつんでアイスがほのか?」
「はぁっ!?またそれか・・」
「なっつんとほのか”はつまりベストまっちんぐのていすとでぇ・・」
「・・んなこと心底どうでもいいぜ。」
「相性ばつぐん!とでも言えばわかってくれる?」
「それにしても食いモンから離れないな。」
「食い意地なんてはってないよ!」
「・・言ってねぇって・・」

ほのかが睨むとなっつんはふふっと笑った、とっても可愛らしくふんわりショコラ風に。
その顔を見たら気持ちがゆるんで、なっつんはやっぱりチョコレートだと思った。
ほんのちょっと苦いけどとっても甘くて幸せになれて蕩けちゃうところとかぴったし。

「なにバカみたいに笑ってんだよ。」
「なんでもないよ!」
「っとにオマエのがよっぽどチョコレートだろうが・・」
「痛っ!?ちょっと!なんで抓るのだね!?」
「・・ちょっとむかついたんだよ。」
「ひとがご機嫌な気分だっていうのにどういうわけさ!?」
「甘ったるい顔してってからだよ、うつったらどうすんだ。」
「うつる?!そういえばさっきなっつんもにっこり笑ってたよね?!」
「へっまさか。」
「ホントだよ。その顔をみてほのかも嬉しくなって笑ったの。うつったのかな?」
「・・・なに言ってやがる、このガキは・・」

ちょっと困ったような顔だけど、恥ずかしかったのかな?ほんのり赤い。
やだねぇ・・自覚の無い人は。カワイイったらありゃしないよ。
こういうときはほのかの方がお姉さんにでもなった気分だ、ウン。
お姉さんだからここは寛大に弟のようにカワイイなっつんをなでなでしよう。
そう思って近付いたら「なんだよ!?」って睨まれた。全然怖くないけど。

「なっつんはイイ子だね〜!」
「あぁ!?なに言って・・」
「ヨシヨシ。おいしぃなっつんありがとう!」」
「どういう意味だよ・・?」
「チョコレートみたいだからお礼なの。」
「わけがわからん!」
「頭で考えるからだよ。感じたまえ。」
「オマエの方が甘いって言ってるだろ!」
「自分のことを棚にあげてどうだい、この子は・・」
「オレのどこが甘いっていうんだよ!?」
「なっつんほど甘いひとは知らないよ?」
「アホか!オマエはオレのこと知らないから・・」
「だから”ほのかの知ってる”なっつんは甘くて優しいなっつんだもん。」
「!?」

なっつんは口を開けて何か言いかけたまま固まってしまって、言うのをやめた。
首を振って『やれやれ』?みたいな仕草をしたけどそれほど呆れてるんでもない。
そんななっつんの腕にしがみついて、猫みたいに甘えてみた。

「・・・何やってんだ・・」
「なっつんカワイイから大好き!ってことさ。」
「!?・・カワイイとか言うな!腹立つ!」

なっつんが赤い顔して睨んだ。ちっとも怖くないんですけど。
一応身構えたら、案の定大きな手で頭をぐりぐりされてしまった。
痛くないけど髪がぐしゃってなるんだよなぁ・・・まぁいいけど。

「ひとをバカにしやがってこのガキ!!」
「へッヘッヘッ・・・」
「顔緩めすぎだ。なんだよ、その甘ったるい顔は!?」
「ほのかとなっつんが混ざったらチョコアイスだもん。甘くて当然さぁ!」
「バカなことばっか言ってんじゃねぇっ!」
「なっつん、ずっとチョコアイスなコンビでいこうね?!」
「冗談じゃねぇ。」
「ナイスコンビじゃないか。」
「嫌だね!勝手に決めんな。」
「待てよ、塩キャラメルというのも捨てがたいかも・・!?」

呆れてしまったなっつんの上に乗っかってお昼寝としよう!
毛布を掛けてくれてそのまま二人で寝ちゃうのもいいよね?
カワイイ寝顔を眺めてうつらうつらするのも素適だし。
こっそりなっつんにちゅうすることもなかなかスリルだし。
それにね、知ってるんだよ、なっつんもこっそりしてること。
くすぐったくてね、一度起きちゃったことあるから!おでこだけど。
寝たふりしたからきっと気付いてないんだよ、なっつんてば。
秘密にしておいてあげるの、ほのかは寛大だからね。
そんなこんなでその日もとってもナイスな一日だったのだ。お腹いっぱいさ!







タイトルは”しょこらとりー”と読んでください。
文字通り”チョコレートみたいな”二人をイメージしました。