Cause  


男なんて皆そうなんだから気をつけないと。
ほのかってば子供ねー!危ないあぶない!
知ってるよ、そんなこと。だけどしょうがない。
違いだとか、そういうことも。どうでもいいよ。

皆みたいに一気に大人になりたいと思わない。
男が危ないのなら、女は?危険じゃないとでも?
知らないんだね、そんなこと当たり前じゃない。
おんなじだし、怖くないよ。好きになったらね。


「ハイほのかの勝ちぃ!連勝連勝vv」
「・・・・・・・くっ・・・負けた。」

口惜しそうななっちの顔に鼻を高く感じてみる。
危なかったんだけどね。なっち強くなったから。
けどオセロだけはほのかの武器だから譲れない。
大人だろうと達人にだってほのかが勝てる唯一のね。
お願いごとも掛かっているからヤル気だって充分だ。
さーて、今回は何をお願いするんだったかな?
ほのかのオネダリリストはどんどん長くなってて
それに花丸を付けていく楽しみ。やめられない。

「・・今回はなんだよ?今週は空いてる日が少ねぇ。」
「え〜!?なんだか最近そんなことばっかり。もしや」
「嘘じゃねぇ。ってお前俺のスケジュール勝手に見るなよ!」
「ちぇっ!面白くない。ほのかとの約束は絶対だからね!?」
「お前のおかげでプライベートなんざ壊滅だ、ボケ!」
「ぬふふぅ・・それはいいことだじょ。励みたまえ。」

偉そうに言えばなっちは苦々しい顔をする。眉間に皴寄せて。
ほのかの前では取り繕わないところが嬉しかったりするんだ。
言葉だって乱暴だし、お母さんにはばれているのだけれど
お父さんはまだ騙されている。なっちのいいカッコしいを。
ほのかはVIP待遇。なっちのオンリー1だと自負してる。
そこには昔からラブの要素はない。色気ゼロなのだな。
皆はそんなの嘘だとか信じないとか散々なことを言うけれど。

中二くらいの頃から周囲から色々言われるようになった。
なっちは男で一人暮らしなのに一人で遊びに行くことや
あらゆる我侭やボディタッチ平気の真偽もとやかく言う。
でもどれもほんとうだ。何故ならやっぱりそれは
なっちが重度のシスコンってことも関係あるかもだけど

ほのかのこと女だと思っていないからだ。と思う。

別に今のままでも居心地は悪くないし、特別扱いは嬉しい。
そろそろラブにならないのかと女の子達は期待するけど
残念ながらご期待にお応えできそうにない。仕方ないよ。
良かったな、と思うのはなっちが女好きじゃないことかな。
やっぱり相棒が他の女の子に夢中になったら面白くない。
これはなっちが男だろうが女だろうがどっちにしてもだ。
真面目だし、結構律儀だし、きっと女の子には優しい。
すごく大事にするんじゃないかな。お母さんも同意してた。

『ああ、ほのかはそういうのが嫌なのね。』

さすがはお母さんだ。誰も指摘しなかったことに気付いた。
一番ほのかの気持ちに近い答え。そう、ほのかは嫌なんだ。

『あの人!?カッコイイvv』
『お得じゃない、あの人逃しちゃダメだよ!』

そう言われる度にむっとする。お得だから、カッコイイから、
そんな理由で一緒に居るんじゃない。断じて違うのだ。
なっちとほのかは固い友情で結ばれてるんだよ!と反論しても
だーれも信じてはくれない。どうしてだろう?口惜しい。
なっちの良さは見てくれじゃない。お金持ちだからでもない。
優しくてなんでも言うこときいてくれるからでもないんだ。
特別、特別だと思っているのはほのかもそうだ。だけどそれは
皆の口にするようなのとはどうしても同じだと思えないのだ。
大人になるって面倒だ。ほのかも妙にもてるようになったけど
全部断ってる。そんな気になれない。どうしても無理だ。
もしかしたらなっちもおんなじなのかなって思うこともある。
理由はわからないけれど。それでもなんとなく、そう思う。

「・・今回は考えてなかったのか?」
「え?・・あーそうだった。何にしようかな。」
「そういえばさ、なっちが勝ったときっていっつも・・」
「ああ?」
「何々するな!とか禁止事項ばっかりだね、最近。」
「無自覚なヤツに苦労してんだよ。」
「過保護じゃのう。ほのかは変わらないというに。」
「だから尚更危険だろうが。そのうち胃に穴が開きそうだぜ。」
「・・・苦労性だねぇ・・ほのかだって気を付けてるんだよ。」
「俺の前では気を抜いてるだろう?・・・・俺も男なんだぞ。」
「なっちまでそんなこと言う・・」
「そんなに大人になりたくないのか?」
「!?・・・・・ばれたか。」
「どうしたってなるもんなら先延ばししたいってとこだろう。」
「なんで・・なっちもそうだったりするの?」
「いいや。俺は別に・・もう子供じゃないと知ってるだけだ。」
「子供でいたいって思うのは・・ダメなの?」
「しょうがねぇな・・まぁ俺の前だけなら・・勘弁してやる。」
「・・・さんきゅっ」
「そんなに怖がられるとなぁ・・俺だって結構傷つくんだぞ。」
「なっちは怖くないよ!そんなこと思ってない。」
「じゃあ・・思え。そうした方が楽になる。」
「・・・・ヤダ。やだやだやだっ!!」
「ほのか!」

体中が拒否した。涙が零れ落ちた。どうして知ってたの!?
絶対違うって思っていたいのに。ほのかはなっちのこと

「なっちは違うもん!男じゃない。ほのかだって・・女じゃないよう!」

知ってるよ、だけど知りたくないんだよ。ずっと友達でいようよ。
溢れる涙ごとなっちが抱き締めたりするからついうっかり抱き返した。
ほらね、ちっとも怖くない。なっちなら怖くないって思ってたんだ。
苦しい口惜しいやるせない。世界中の誰よりほのかが大事って・・・
想っててほしいんだなんて言いたくない。そんなのダメなんだよ。
駄々をこねるほのかを抱いたままなっちが溜息を落とす。失礼だ。
優しく髪を撫でないでほしい。子供扱いされたら嬉しくて悲しい。

「はぁ・・泣かせたか・・こうなったら好きなだけ泣いとけ。」
「・・・なっちのあんぽんたん・・・」
「へぇへぇ・・そうかよ。」
「なっちなんて・・女なしでずっとほのかだけで満足してればいいんだよ。」
「そりゃお前がいいんなら、そうするが・・?」
「う・・ずっと甘えてたい。子供のままでいい。それじゃダメなんでしょ?」
「そうだなぁ・・辛いんだが・・まだ待てるから心配すんな。それになぁ?」
「・・?」
「今みたいに甘えてくれんなら・・わりと大丈夫かもしれねぇ。うん・・!」
「なにそれ・・危ない人みたいだよ、なっちぃ・・」
「だな・・お前に逃げられないならなんでもいい。」
「そんなに・・ほのかのこと・すき?」
「多分お前が想ってるよりずっとな。」
「・・・・・どうしよう、結構嬉しい。」
「けどやっぱもうちょい・・成長してくれ、精神的に。」
「いいって言ったじゃん!!」
「いいとは言ったが辛いんだよ!」
「そんなの知らない。」
「くっそ!手強いな。」

なっちはまた眉間に思い切り皴寄せて怖い顔。困ってるんだね。
だってしょうがないじゃないか。頭でわかってても出来ないこともある。
なんて言われても譲れないことも。好きだなんて言葉じゃ足りないこと、
ホントは誰だってわかってるんでしょう? 止められない。
ごめん、なっちぃ。ほのかね・・・







「Effect」に続く予定です;